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2007年10月25日更新

<8月号特集>協和精工 秋田県羽後町

精密工具製造で培った技術で自社ブランドの高級腕時計を生産

大手時計メーカーの下請けとして腕時計の外装部品を製造していた協和精工は、1967年の創業か培ってきた精密工具製造技術を生かして05年から自社ブランドの高級腕時計の製造販売を始めた。駆動部以外はすべて自社一貫生産だ。
孫の代まで新品同様に使い続けることが可能

国産腕時計としては40万円と高額ながら、販売実績を着実に伸ばしている商品がある。協和精工(秋田県羽後町)が製造する自社ブランド製品「GREADY」グレーディだ。製造品目の大半を相手先ブランドで作るOEMで占める同社が、技術の粋を結集して開発した。製造工程のほとんどが職人の手作業で工程数は通常製品の数倍に上り、ひと月に生産できるのはわずか5本。注文から引き渡しまでに5カ月前後を要する。それでもGREADYは、男性用腕時計を05年11月に発売して以来、順調に売れ続け、07年6月までに75本を販売した。

写真:鈴木社長「大手時計メーカーの生産拠点が海外にシフトし、受注が激減。生き残りをかけて自社製品の開発に着手しました」と鈴木社長。






この時計の開発コンセプトは、「100年後でも修理、再生が可能」。一般的な腕時計は、補修部品のメーカー保有期間が過ぎる10年ほどで修理不能になってしまう。それに対してGREADYは立体パズルのように組み合わされた154点におよぶ外装部品のすべてが分解可能で、極小部品の1つひとつまで研磨して組み立て直すことができる。他に類を見ない精巧な作りと、いつまでも安心して使い続けられる点が人気の秘密だ。実際、購入者のなかには、定年退職の記念に注文し、この時計を代々受け継いでいく夢を語った人もいるという。顧客が製造にかかる手間の価値を分かっているからこそ、納品が数カ月先でもじっくり待ってもらえる。

無名に近いブランドで1本40万円という価格は破格だが、“100年もの”として有名ブランド品とはひと味違う喜びを味わえる。



商品開発を主導した鈴木耕一社長は、同商品の狙いをこう語る。
「大手メーカーに対抗するには、当社の技術力を生かして付加価値の高い商品で勝負しなければなりません。この発想から生まれたのがGREADYです」駆動部が壊れた際は、異なる部品に交換できる構造になっているのも特徴のひとつ。通常の時計は駆動部を収める内部ユニットのサイズが一定で、寸法が異なる駆動部は使用することができない。しかしGREADYは内部ユニットの直径や高さを調節できる構造になっており、将来、駆動部の寸法規格が変わったとしても、現在の内部ユニットで対応できる。

このアイデアを含め、特許10件、実用新案3件、意匠出願1件を申請中。まさに独自技術の塊である。同社のグループ会社で時計販売を手がけるミナセには修理部門があり、スイス時計製造者連盟認定の1級時計修理技師やロレックス社の元技術指導員など、スタッフはいずれも確かな腕をもつ。彼らをはじめ、製造現場のベテラン職人たちの知恵と経験を結集し、約2年におよぶ試行錯誤を繰り返して商品開発が行なわれた。

写真:微細径エンドミル直径1mm以下の微細径エンドミル(回転切削工具)製造が主力事業。写真はダイヤモンドにつぐ硬さを誇るcBNエンドミル。



誤差10ミクロンの加工を手作業でこなす熟練の技

GREADYは細かい部品を数多く組み合わせるだけに、加工の許容誤差も極めて小さい。わずかな狂いが積み重なり、全体に大きな影響を及ぼすことがあるからだ。許容誤差を30ミクロン(100分の3mm)とする従来の時計に対し、GREADYは10ミクロン以下の精度が必要だった。実現できたのは、これを手作業でこなす優れた熟練技術者を擁していたからだ。自社内で専用の加工工具や補助工具を作って品質の安定化を図っているが、最終的には個々の職人の腕前がものをいう。例えば研磨の工程では、単純な研磨機を使って誤差10ミクロン以下の精度を出せる職人がいる。

写真:切削加工のようす切削加工のようす。精度の高い加工技術で、大手宝飾メーカーブランドの高級感あふれる製品が作り出されていく。





「当社の研磨技術は日本でもトップクラスでしょう。同じことができる職人がいたとしても、生産効率を考えたら経営者はここまで手間をかけたがらないものです。現在、世界中を探してもGREADYのような複雑な構造の時計はありません。しかし、逆にその精巧さが商品としての強みとなっているのです」(鈴木社長)

品質を匠の技によって維持している傾向が強い同社では、ひとりの職人がプレスや切削、研磨といくつもの工程をこなせる多能工化を推し進め、少数精鋭による生産効率化を図ってきた。ベテランから若手への技術継承にも積極的に取り組んでいる。また、現場での技術継承に加え、設計図や製造方法の標準書などの保存にも心を砕く。100年経っても修理再生を可能とするためには、通常のモノ作りとは異なるアプローチが必要なのだ。

精密工具の製造技術が時計作りを支える

複雑にして精巧な腕時計を生み出す協和精工の技術は、精密切削工具メーカーとして創業した同社の歴史のなかで育まれた。精密加工技術に加え、自社製の精密金型および切削工具をフルに活用できる素地がある。現在も主力事業は精密切削工具の製造販売で、製造業界から厚い信頼を得て、海外からの引き合いも多い。GREADYの06年9月期の売り上げは1800万円。会社全体の売り上げの2.3%に過ぎないが、粗利益も高く、収益に貢献している。協和精工の研磨・精密加工技術の高さの証しとして、ブランドイメージの向上に大きく寄与していることはいうまでもない

写真:組み立て工程組み立て工程。多品種少量生産のため、スタッフにはどんな工程にも柔軟かつ確実に対応できる高度な能力が求められる。




協和精工
【所在地】〒012-1103 秋田県雄勝郡羽 後町林崎字三ツ盛34-1
【TEL】0183-62-4566
【創業】1967年
【資本金】1000万円
【売上高】7億3200万円(06年9月期)
【従業員数】70人
【事業内容】精密刃工具製造販売、腕時 計製造販売
【URL】http://www.kyowaseiko.co.jp/

文・加藤隆悦


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