2007年10月18日更新
<8月号特集>ソメスサドル 北海道歌志内市
馬具作りの技術を生かし鞄メーカーとして飛躍
ソメスサドルは馬具作りの技術を鞄など皮革製品の製造に生かして成功した。馬具以外の売り上げが6割を占め、幅広い世代から支持を得た現在も、あくまで馬具メーカーとして信頼できる製品作りにこだわり続けている。
信頼できるモノ作りを第一に考える
ソメスサドルは、知る人ぞ知る人気の皮革製品メーカーだ。厳選した素材とていねいな手作業による品質の高さで定評があり、大手百貨店からの出店依頼も後を絶たない。現在は東京の伊勢丹新宿本店や日本橋三越本店などに出店しているほか、札幌や東京に直営店を持つ
乗り手の重量に柔軟に反応し、シート上の動きを吸収する女性用乗馬鞍「ソーニア」。長時間の乗馬でも疲れにくい。
ソメスサドルは1964年に馬具を作って海外輸出することを目的に創業し、オイルショックを境に国内販売に転じた。日本唯一の馬具メーカーだが、現在、売り上げの6割は馬具以外の皮革製品が占める。中でも主力製品は鞄。人気の鞍形ショルダーバッグから旅行鞄、ポシェットまで300種以上ある。ほかに、手帳やペン立てといった小物類も数多い。こういった製品を作り始めたのは75年のこと。新分野に挑戦した理由を、染谷純一社長はこう語る。
「レジャー用の馬具だけでは市場規模が知れています。鞄などの一般的な皮革製品の市場で、我々が馬具作りで培った技術がどれくらい通じるのかチャレンジしようと思いました」
バッグは馬具メーカーならではの「鞍型ショルダー」をはじめ、女性用から男性用まで多種多様なデザインの商品がある。バッグの主な価格帯は3万~5万円程度。
新規分野参入にあたって、最も重視したのは高品質にこだわることだ。競馬の騎手は、幅2㎝足らずの2本のあぶみ革に全体重をかける。馬具作りは人の命を預かることでもあり、絶対に手抜きは許されない。鞄などを作る際も、馬具と同じ姿勢で臨んでいる。伊勢丹から取り引きを持ちかけられた時も、品質を維持できるかどうか、数カ月も自問自答を重ねた。
「鞄の売上比率が増えたとはいえ、我々はあくまで馬具メーカー。素材や品質にこだわり、信頼していただけるモノ作りを第一に考えています」(染谷社長)
素材選びや縫製にこだわる
素材となる皮革は、染谷社長がイギリス、ドイツ、イタリア、フランスなどに直接足を運んで厳選。タンナーと呼ばれるなめし加工業者に特注し、草や木の汁を用いる「タンニンなめし」を施した特別仕様の革に仕上げる。革は部位によって微妙に性質が異なり、それを適材適所に使い分ける。例えば丈夫で伸びにくい肩の部分はベルトや鞄のストラップに、伸びのいい腹部は鞄のマチ部分にといった具合だ。また、裁断の際に最も気を使うのが繊維の流れを読むこと。これを間違うと、せっかくの革が本来の特性を発揮できない。「革読み10年」と言われるほど熟練を要する技術である。
2本の針と糸を使って行なう馬具縫いの様子。商品はすべて技術者たちが熟練の技を駆使し、1つずつ丹精を込めて手作りしている。
革の表面には、保護のためにろうを引くのが一般的だが、ソメスサドルはあえてそれをしない。革の皮膚呼吸を妨げないようにとの配慮からだ。これが独特の肌触りのよさやあたたかみを生んでいる。縫製にも独自の技が光る。2枚の革を接合する工程では、日本に数台しかないドイツ製馬具用ミシン「アドラーミシン」を使って堅牢に仕上げる。また、特に力のかかる部分には2本の針と糸を使い、「馬具縫い」と呼ばれる手法でひと針ずつ手作業で丹念に縫い上げている。
「ビジネスバッグは特に手縫い部分が多いですね。2本の糸を使っているので、仮に1本が切れてもほどけません」(染谷社長)
06年7月、東京・青山にオープンした「ソメスサドル青山店」。ソメスサドル初の直営路面店だ。2階はサロンにもなっている。
同社の皮革製品の愛用者は世代を問わず幅広い。品質、機能性、耐久性のすべてに妥協のない本物志向が人々の心をとらえるからだろう。長く愛用できるように、購入後の保証年数は限定していないアフターサービスを徹底し、顧客の声を吸い上げて製品を改善することもある。品質もさることながら、デザイン面でも商品価値を上げる努力を続けている。ここ数年で特にデザインが洗練されてきたと評するファンは多い。
常識をくつがえした世界初の女性用鞍
ソメスサドルがもともと本業とする乗馬用鞍は、日本を代表する騎手の武豊をはじめ、世界で活躍する騎手に愛用され、確固とした地位を確立している。
「命を預かる馬具の技術を鞄作りに生かしているだけで、特別なことはしていません」と語る染谷社長。
乗馬用鞍で特に目を引くのが、94年に発売された女性用鞍「ソーニア」だ。男女共用が当たり前だった鞍を見直し、開発に5年もの歳月をかけた。染谷社長が開発に挑んだ理由を語る。「日本の乗馬人口は7割までが女性です。乗馬は男女の区別がない競技ですが、だからといって体の作りが違うのに同じ鞍では快適とはいえないでしょう」
どのような構造にすれば女性が騎乗しやすくなるか。染谷社長が目をつけたのが、「鞍骨」と呼ばれる部分だ。鞍骨は鞍の形状を作り出す最も重要な部分であり、従来の常識では絶対に変形してはならないとされていた。その常識を打ち破り、鞍骨の尻が乗る部分を柔軟に可動するようにして、馬の反動をやわらげることに成功。女性騎手にきわめてやさしい乗り心地を実現した。
この機構は特許を取得している。世界初の女性用鞍は、瞬く間にユーザーの間で広まっていった。優れた技術が高い評価を受けて「第1回ものづくり日本大賞」経済産業大臣優秀賞を受賞したほか、グッドデザイン選定商品の認定も受けている。馬具作りに裏打ちされた確かな技術で成長をけるソメスサドル。目下の課題は「多品種少量生産をいかに効率的に行なうか」。これに磨きをかけ、さらなる業務拡大を目指す。
【会社概要】
ソメスサドル
【所在地】〒073-0405 北海道歌志内市神威264
【TEL】0125-42-5111
【創業】1969年
【資本金】5000万円
【売上高】12億5000万円
【従業員数】78人
【事業内容】乗馬用・競馬用・ウエスタン用各種鞍、馬装品、馬車など各種馬具製造・販売、紳士用鞄、婦人用鞄、ベルト、ステーショナリー各種製造・販売
【URL】http://www.somes.co.jp/
ソメスサドルは、知る人ぞ知る人気の皮革製品メーカーだ。厳選した素材とていねいな手作業による品質の高さで定評があり、大手百貨店からの出店依頼も後を絶たない。現在は東京の伊勢丹新宿本店や日本橋三越本店などに出店しているほか、札幌や東京に直営店を持つ
乗り手の重量に柔軟に反応し、シート上の動きを吸収する女性用乗馬鞍「ソーニア」。長時間の乗馬でも疲れにくい。ソメスサドルは1964年に馬具を作って海外輸出することを目的に創業し、オイルショックを境に国内販売に転じた。日本唯一の馬具メーカーだが、現在、売り上げの6割は馬具以外の皮革製品が占める。中でも主力製品は鞄。人気の鞍形ショルダーバッグから旅行鞄、ポシェットまで300種以上ある。ほかに、手帳やペン立てといった小物類も数多い。こういった製品を作り始めたのは75年のこと。新分野に挑戦した理由を、染谷純一社長はこう語る。
「レジャー用の馬具だけでは市場規模が知れています。鞄などの一般的な皮革製品の市場で、我々が馬具作りで培った技術がどれくらい通じるのかチャレンジしようと思いました」
バッグは馬具メーカーならではの「鞍型ショルダー」をはじめ、女性用から男性用まで多種多様なデザインの商品がある。バッグの主な価格帯は3万~5万円程度。新規分野参入にあたって、最も重視したのは高品質にこだわることだ。競馬の騎手は、幅2㎝足らずの2本のあぶみ革に全体重をかける。馬具作りは人の命を預かることでもあり、絶対に手抜きは許されない。鞄などを作る際も、馬具と同じ姿勢で臨んでいる。伊勢丹から取り引きを持ちかけられた時も、品質を維持できるかどうか、数カ月も自問自答を重ねた。
「鞄の売上比率が増えたとはいえ、我々はあくまで馬具メーカー。素材や品質にこだわり、信頼していただけるモノ作りを第一に考えています」(染谷社長)
素材選びや縫製にこだわる
素材となる皮革は、染谷社長がイギリス、ドイツ、イタリア、フランスなどに直接足を運んで厳選。タンナーと呼ばれるなめし加工業者に特注し、草や木の汁を用いる「タンニンなめし」を施した特別仕様の革に仕上げる。革は部位によって微妙に性質が異なり、それを適材適所に使い分ける。例えば丈夫で伸びにくい肩の部分はベルトや鞄のストラップに、伸びのいい腹部は鞄のマチ部分にといった具合だ。また、裁断の際に最も気を使うのが繊維の流れを読むこと。これを間違うと、せっかくの革が本来の特性を発揮できない。「革読み10年」と言われるほど熟練を要する技術である。
2本の針と糸を使って行なう馬具縫いの様子。商品はすべて技術者たちが熟練の技を駆使し、1つずつ丹精を込めて手作りしている。革の表面には、保護のためにろうを引くのが一般的だが、ソメスサドルはあえてそれをしない。革の皮膚呼吸を妨げないようにとの配慮からだ。これが独特の肌触りのよさやあたたかみを生んでいる。縫製にも独自の技が光る。2枚の革を接合する工程では、日本に数台しかないドイツ製馬具用ミシン「アドラーミシン」を使って堅牢に仕上げる。また、特に力のかかる部分には2本の針と糸を使い、「馬具縫い」と呼ばれる手法でひと針ずつ手作業で丹念に縫い上げている。
「ビジネスバッグは特に手縫い部分が多いですね。2本の糸を使っているので、仮に1本が切れてもほどけません」(染谷社長)
06年7月、東京・青山にオープンした「ソメスサドル青山店」。ソメスサドル初の直営路面店だ。2階はサロンにもなっている。同社の皮革製品の愛用者は世代を問わず幅広い。品質、機能性、耐久性のすべてに妥協のない本物志向が人々の心をとらえるからだろう。長く愛用できるように、購入後の保証年数は限定していないアフターサービスを徹底し、顧客の声を吸い上げて製品を改善することもある。品質もさることながら、デザイン面でも商品価値を上げる努力を続けている。ここ数年で特にデザインが洗練されてきたと評するファンは多い。
常識をくつがえした世界初の女性用鞍
ソメスサドルがもともと本業とする乗馬用鞍は、日本を代表する騎手の武豊をはじめ、世界で活躍する騎手に愛用され、確固とした地位を確立している。
「命を預かる馬具の技術を鞄作りに生かしているだけで、特別なことはしていません」と語る染谷社長。乗馬用鞍で特に目を引くのが、94年に発売された女性用鞍「ソーニア」だ。男女共用が当たり前だった鞍を見直し、開発に5年もの歳月をかけた。染谷社長が開発に挑んだ理由を語る。「日本の乗馬人口は7割までが女性です。乗馬は男女の区別がない競技ですが、だからといって体の作りが違うのに同じ鞍では快適とはいえないでしょう」
どのような構造にすれば女性が騎乗しやすくなるか。染谷社長が目をつけたのが、「鞍骨」と呼ばれる部分だ。鞍骨は鞍の形状を作り出す最も重要な部分であり、従来の常識では絶対に変形してはならないとされていた。その常識を打ち破り、鞍骨の尻が乗る部分を柔軟に可動するようにして、馬の反動をやわらげることに成功。女性騎手にきわめてやさしい乗り心地を実現した。
この機構は特許を取得している。世界初の女性用鞍は、瞬く間にユーザーの間で広まっていった。優れた技術が高い評価を受けて「第1回ものづくり日本大賞」経済産業大臣優秀賞を受賞したほか、グッドデザイン選定商品の認定も受けている。馬具作りに裏打ちされた確かな技術で成長をけるソメスサドル。目下の課題は「多品種少量生産をいかに効率的に行なうか」。これに磨きをかけ、さらなる業務拡大を目指す。
【会社概要】
ソメスサドル
【所在地】〒073-0405 北海道歌志内市神威264
【TEL】0125-42-5111
【創業】1969年
【資本金】5000万円
【売上高】12億5000万円
【従業員数】78人
【事業内容】乗馬用・競馬用・ウエスタン用各種鞍、馬装品、馬車など各種馬具製造・販売、紳士用鞄、婦人用鞄、ベルト、ステーショナリー各種製造・販売
【URL】http://www.somes.co.jp/



