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2008年07月24日更新

<森永卓郎の経済探偵録>マンション販売価格はどこまで下がる

「凍り付いて物件が動かない」
マンション販売価格はどこまで下がる!?


森永卓郎氏顔写真●獨協大学経済学部教授 森永卓郎







新築マンションも中古マンションも価格が下落している。小さなバブルが起きた後、価格が下落に転じているのだ。今後の価格変動はどのように推移するのだろうか。森永氏はふたつのシナリオを提起する。

新築も中古も小さなバブルの後、価格が下落

投げ売りがはじまったマンションの販売価格はどこまで下がるのか?
最近、不動産業の人と話をすると、「凍り付いて物件が動かない」とか「まさに氷河期ですね」という表現をよく聞くようになった。週刊誌などでも、売れ残りのマンションが在庫処分で数百万円単位の値引きをして販売され、販売業者が、マンションを定価で買った住人からひんしゅくを買っているという事例が報じられている。

景気が後退過程に入ったとみられるなかで、マンションがたたき売り状態になっているのか。そう思ってみると、統計は少し違った姿を映し出している。まず、不動産経済研究所の「首都圏のマンション市場動向」(2008年5月度)をみると、5月の首都圏新築マンションの平均価格は4821万円、1平米あたりの単価は63.9万円で、前年同月比で平均価格が0.4%上昇、平米単価は2.2%の上昇となっている。前年比でみるとマンションは値崩れしていないのだ。

ところが、これを前月比でみると様相は一変する。平均価格は9.8%のダウン、平米単価も9.7%ダウンしている。大幅ダウンなのだ。そこで、価格の推移をみると、首都圏新築マンションの平均価格は、この3年ほど、4000万円強で推移してきたが、今年1月の4210万円を底に急上昇を始め、2月は4786万円、3月は4998万円、4月は5344万円と、3カ月で27%という急騰を演じていた。5月の前月比の値下がりは、この急騰を受けての反落ということになるのだ。

ただ、マンションは、同じ質のものがふたつとなく、たまたま質のよい物件が集中して供給されたときには価格が跳ね上がる特徴をもっている。そこで、相場の変化を確認するために、不動産情報のデータバンク会社である東京カンテイが発表している首都圏の中古マンション価格(70平米換算価格)をみると2008年5月の首都圏中古マンション価格は、前月の3236万円から1.1%ダウンの3202万円と、2カ月連続で下落した。

ただし、前年同月比でみると、13.5%の上昇となっている。つまり、小さなバブルが起きた後、価格が下落に転じているという事情は、中古マンションも新築マンションも同じなのだ。一方、中古マンション価格のほうが、値上がりも、値下がりも早く始まっている。中古マンション価格は、2007年4月にはそれまで数年間の相場とほぼ同じ2512万円だった。それが10月には3218万円と3000万円台に突入し、12月には3404万円のピークをつけた。それが、いま3202万円まで下がってきたのだ。

大幅な供給減のなかで発生したマンション価格の下落

なぜこうした事態が起こったのか。一番大きな原因はメガバンクの貸し渋りだとみられる。最近のマンション価格の高騰をバブルだと認識したメガバンクが、不動産融資を急速に絞り込みはじめ、資金が行き詰まったマンション業者が手持ちの在庫を投げ売りしているのだ。その構造は、1990年に大蔵省が行なった総量規制のときと同じだ。

不動産価格の高騰に危機感を募らせた大蔵省は、1990年3月から金融機関に対して、不動産業向け融資の伸び率を総貸出の伸び率以下に抑えるよう行政指導を行なった。これは単なる行政指導だったが、その効果は激烈で、当時の不動産業者に聞くと「経営に何も問題がなかったのに、突然資金を絶たれ、天国から地獄に突き落とされた」というほどの効果をもった。

じつは、今回のメガバンクの行動も、その背後には金融庁による指導があるのではないかという観測が流れている。その証拠はないが、もしそうだとしたら、まさに総量規制の再来なのだ。

どのような力が働いたのかはわからないとしても、メガバンクが不動産業向け融資を絞り込み始めていることは紛れもない事実だ。三菱UFJフィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友銀行の3大金融グループの不動産業向け融資は、2008年3月末で21兆7875億円と、1年前に比べて2.3%、5172億円も減少しているのだ。

しかも、タイミングが悪いのは、いまのマンション価格の下落が、大幅な供給減のなかで起きているということだ。不動産経済研究所の調査によれば、5月の首都圏新築マンションの発売戸数は4398戸で、前年同月比で17.7%減少している。契約率も71.0%と前年同月比で4.7%ポイント下がっている。

今後の価格動向は総選挙後の景気対策にかかっている

企業のリストラにともなう遊休地の売却で、数年前までは、立地のよいマンション用地が豊富に供給されていたのだが、そうした不動産が底をついて、最近では供給が減っていた。供給が減るなかでも、価格の下落が生じているから深刻なのだ。それでは、今後のマンション価格は、どう動いていくのだろうか。考えられるシナリオはふたつだ。

ひとつは、今回の値下がりが短期的なショックで、最近急騰した「バブル」部分ははげ落ちるものの、その後は、これまでの常識的な価格に戻っていくというものだ。今回のマンション価格の下落の原因は、銀行の不動産融資絞り込みだけでなく、外資を中心とした投機資金がつり上げてきた都心の不動産を、サブプライムローン問題を起因とする信用収縮で、たたき売らざるを得なくなったという事情が重なったものとみられる。現に外資系の投資銀行や投資ファンドでは、不動産関連部門でのリストラが始まっている。

ただ、サブプライムローン関連の損失は、アメリカの大手金融機関10社で、昨年10~12月期には7兆円を超えていたものが、今年1~3月期には5兆円を切る水準にまで減少してきている。サブプライムローン問題が峠を越えたとすれば、マンション価格の下落は、本来の水準で止まるはずだ。新築マンションで4200万円、中古マンションで2500万円程度だろう。

心配なのはもうひとつのシナリオだ。1990年の大蔵省の総量規制の後、日本経済は深刻なデフレに突入していった。そのマイナスの影響は、失われた10年どころか、15年も続いたのだ。もし同じ事が起こるとすると、マンションの価格は本来の水準を大きく下回って、マンション不況が長期間続くということになる。

私は、そうならないと考えているが、そこには「期待」が含まれているのも事実だ。どちらのシナリオが実現するのかは、総選挙の後の新政権がどのような景気対策を講じてくるのかにかかっているといえるだろう。


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