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2008年07月10日更新

<ビジネスワイド>中小企業者が請願権を使う方法

中小企業者が請願権を使う方法

●平成南学舎代表・元参議院議員 平野貞夫

「国家社会の宝である中小企業者一人一人が、政治に行政に声をあげるべきだ」。
衆院事務局33年、参議院議員2期12年の平野貞夫氏が、声をあげる具体的な手段を解説し、国民主権の民主政治を展望する。

中小企業者、一人一人が立ち上がるべき

中小企業者の活動がなければ、国も地方も動かない。本来、中小企業者は国家社会の宝であったはずだ。高度な技術も生産も、始まりは中小企業者である。その苦汁の成功を大企業が利用して、巨万の富を得るものの還元は少なく、中小企業者の名声が消えるのが世の常である。

戦後の重化学工業社会で、大量生産・大量消費といわれた時代、中小企業者は、行政や大企業から保護・育成の対象とされていた。中小企業者の多くもそれに甘んじ、さまざまな団体を結成して振興運動を行なっても、政治や行政への関わりは、一歩身を退くという遠慮した姿勢であった。

しかし、時代は大きく変化した。「情報社会」へ文明が移行したのだ。日本では昭和50年代後半から始まるバブル経済を経て崩壊、そしてあてどのない構造不況となった。世界中が第三次産業革命の真っ只中に入っているのが現代である。その間、日本で著名な大企業が次々と倒産した。そして想像もつかない情報技術が、インターネットとして出現し、情報ビジネスとしてまた投機資本主義として巨万の富を得る異常な格差社会となった。

その大変革のなかで、もっとも大きな犠牲者となったのが、善良な中小企業者である。不況が続けば、まずは下請中小企業に犠牲を強いるのは、弱肉強食の資本主義の掟である。大変革のなかで中小企業者に強いられた運命は、筆舌に尽くしがたい。

第三次産業革命による「情報社会」への移行は、企業のあり方を激変させた。企業が団体を結成して、政治や行政に政策要求する時代ではなくなった。企業と企業も存立を賭けた闘いを続けている。さらに行政も企業に協力するだけでなく、闘争する時代となった。技術革新とグローバル化は、行政といえども適切に対応することができない時代なのだ。

中小企業者よ、一人一人が立ち上がるべきだ。一人で政治に、行政に意見をいい、問題を提起すべきだ。その方策、すなわち「中小企業者が政治を使う方法」について述べてみよう。

国会に声をあげる方法―請願と質問趣意書

(1)請願権は国民の基本権である
憲法第十六条は「何人も、損害の救済、公務員の罷免、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない」と規定している。

この「請願」という言葉は、よろしくない。「こいねがう」とは国民主権の憲法を無視したものだ。憲法改正のとき改訂すべきものだ。こんな用語を残していることが問題である。この規定にもとづいて、「請願法」がある。これは六つの条文からなり、昭和22年5月3日に施行されたものである。請願の処理について「この法律に適合する請願は、官公署において、これを受理し誠実に処理しなければならない」(第五条)と規定しているだけで、処理した内容について報告するわけでもなく、実効性のない法律である。

請願で実効性が期待できるのは、国会法にもとづく請願活動である。国会への請願は形骸化したといわれて久しいが、これはやりようによっては、個人として請願できるし、内容によっては政治問題化することもできる。

国会法は第九章を請願として、「請願書の提出」(第七九条)「請願の処理」(第八十条)「内閣への送付」(第八一条)「請願と各議院の独立」(第八二条)から構成されている。このほかに衆参両院規則にそれぞれ、請願の要式や処理方法などについて、詳しい規定がある。

請願を行なう場合の一般的な手続きを要約しておこう。まず請願は衆院と参院が独立して受けつけ、独立して対応するものであることを知っておくことが必要だ。請願を行ないたい者は、議員の紹介が必要である。議員に知人がいない場合、支持する政党事務所に相談すればよい。請願書という文書で行なうが、その書き方は紹介議員か、事務局の請願課に聞けばわかる。

提出された請願は、所管の委員会に付託される。そこで審査され、採択となれば内閣での措置が必要なものは、内閣に送られ、内閣はその請願の処理の経過を、議院に報告しなければならないことになっている。問題は、なかなかに採択されないことである。政府が都合の悪い問題について、与党が採択を反対するからである。しかも、会期末に何もかも一緒にしてわずかな時間の審査だ。

要するに国民主権の原点である請願権が、機能していないのである。請願制度の改革も含めて国民主権を機能させる運動が必要なのだ。三大国民主権といえば、「選挙権・被選挙権・請願権」である。これを国民の多くは忘れている。私は衆院事務局33年間、参院議員12年間、永田町で税金で生きてきた人間だ。中小企業者のみなさんが、立ち上がって本当の民主政治、国民主権の請願権の改革をやるなら、いくらでも協力するつもりだ。

(2)議員の質問趣意書は民意の武器になる
知られていない制度に「議員の質問趣意書」がある。国会議員が一人でも、内閣に議長を通じて質問趣意書を送り、内閣が答弁を7日以内にしなければならないという制度だ。国会法の第八章に規定されている。中小企業者一人でも、技術開発や政府の規制、かくあるべしとの政策提言など、内容が国民的に必要なら、国会議員を説得して政府を追求することができるのだ。

中小企業者によるネットワークが必要

これまでの日本の議会政治は、絶対的に強い官僚による官僚支配であった。お上(かみ)といえば、戦前は天皇だったが、戦後は中央官僚のことになった。昭和40年代までは、政治家も官僚も経済人も、そして中小企業者もよく頑張ったものだ。戦後の復興そして経済成長、世界の奇跡といわれた豊かな日本を創った。しかし、昭和50年代になって日本人の堕落は、金がすべての日本社会となった。

特に最近の官僚の姿勢には問題がある。私も昭和35年から33年間、衆院事務局に勤め、官僚の端にいた。自分の月給で4人家族が暮らせるようになったのは、昭和55年頃だった。それでも「市民奉仕」の精神で生きてきた。昭和50年代後半からの官僚の多くは、政治的・経済的利権により、自己中心の発想となった。私はあえて日本国会の改革を目指して、参院議員に挑戦した。

わが国の国会制度は問題が多く、改革しなければならないことがたくさんある。しかし、現行制度の国民主権制度が生かされているかというと、ほとんど生かされていない。「請願制度」も「質問趣意書制度」も、使いようによっては、一人の国民、一つの中小企業者が活用でき、それなりの結果を出せるのだ。

そのことを国民のほとんどが知らされていない。問題は国会議員自身が知らないことも多いことだ。また、国会議員を使う場合、献金とか党員になれといったことで、国民は避けている。そんなことでは、国民主権を生かす真の民主政治は確立しない。国会議員のなかには真剣に、国民からの「請願」や「質問」を待っている人材もいる。大事なことは真の民主政治確立のため、中小企業者によるネットワークをつくることだ。

【プロフィール】
平野貞夫
平成南学舎代表。1935年生まれ。衆議院事務局、衆議院議長秘書を経て参議院議員に当選。2期12年つとめて2005年に引退。引退後も、長年の「永田町生活」経験を生かした「政界ご意見番」として、テレビ出演、講演、執筆活動などで活躍中。



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