2008年06月26日更新
<ヒットのツボ>「どこいっ太郎」/クマザキエイム
「あれはどこ行った?」に応える探し物探知機
熊崎道夫社長
1951年岐阜県生まれ。天理大学外国語学部卒。大手総合商社勤務を経て、92年クマザキエイム設立。スチームクリーナーなどの家電実用品、猫型縁起置物などの趣味娯楽品と、数々のヒットを飛ばす。
熊崎道夫社長1951年岐阜県生まれ。天理大学外国語学部卒。大手総合商社勤務を経て、92年クマザキエイム設立。スチームクリーナーなどの家電実用品、猫型縁起置物などの趣味娯楽品と、数々のヒットを飛ばす。
クマザキエイムは、暮らしを楽しくする便利なアイデア商品を数多く開発してきた。2007年3月に発売し、ヒット商品となっているのが、探し物のありかを電子音で知らせる探知機「どこいっ太郎」だ。携帯電話機や鍵、リモコンなどの保管場所を忘れたり部屋のどこかに落としたりして、見当たらなくなった場合に重宝し、幅広い顧客層から好評を博している。
親機のボタンを押せば探し物が「ピー」と返事
出勤前に家を出ようとして「あれ、携帯はどこだ? 鍵は?」と、あわてた経験のある人は多いだろう。また、家の中には家電製品のリモコンなどの小物類があふれ返り、置き場所をうっかり忘れて探し出すのに苦労するのもよくあることだ。さらに、使用頻度の低い保険証やパスポートも保管場所が分からなくなりやすい。もしも、探し物が自分で「ここです!」と主張してくれたら、これほど便利なことはない……。
そんな望みをかなえ、話題を呼んでいるのが、クマザキエイムの「どこいっ太郎」だ。マッチ箱ほどの大きさの子機をキーホルダーのようになくしやすい物に取りつけて、親機のボタンを押せば即座に子機が「ピーピー」と電子音を鳴らす。引き出しやかばんの中にあっても反応する。
開発のきっかけは、熊崎道夫社長(56)がある光景を目にしたことだ。それはどの家庭でもある出来事。外出しようとした義兄が車の鍵を探し始め、妻と「どこだ?」「知らない」と言い争いを始めた。それを見て、ピンと来たという。「誰でも加齢とともに物忘れが増えてきます。特に高齢者ともなると、ひどくなる。こればかりは仕方ありません。だったら、探し物を簡単に見つけることができるモノを作れば便利だろうと思い立ち、1年をかけて開発しました」(熊崎社長)
製品化までに苦労した点は主に2つ。第1に、日本の厳しい電波法に抵触しない範囲で、必要最大限の受信・発信力を持たせること。第2は、子機の小型化だった。サイズは小さいほど邪魔にならず使いやすいが、小型化するほど電波の受信能力も落ちる。どこで折り合いをつけるかに腐心し、試行錯誤を繰り返した。最終的に、受信範囲7m、子機はマッチ箱くらいのサイズと決め、商品化に取りかかった。
10秒のテレビ放映で200台が即売した
どこいっ太郎の販売を始めた当初は、期待したほど売り上げが伸びなかった。主要な顧客層である高齢者と、どこいっ太郎の販売戦略との間に、ずれがあったことに主な要因がある。「インターネット販売を中心としたのですが、本当に便利だと感じてもらえるであろう高齢者の方々は、ネット通販をあまり利用されません」と熊崎社長は振り返る。
状況が一変したのはテレビの力。NHKの朝のニュース・情報番組『おはよう日本』の商品紹介コーナーで2007年5月30~31日に取り上げられたのだ。約10秒の放映にもかかわらず、どこいっ太郎の知名度が一気に高まった。放映直後から問い合わせの電話や手紙が殺到し、またたく間に二百数十台が売れた。ユーザーから感謝の声が続々と届く。カラフルで遊び心のあるデザインも好評だった。
「テレビの影響力の強さを実感しました。そして、いい商品を作るだけではダメで、商品の存在を広く知ってもらうことが大切であることを痛感するなど、いい勉強になりました」(熊崎社長)知名度が上がり、売り上げが増えるにつれて、予想外の使われ方も出てきた。「視覚にハンディキャップのある方々から、とても重宝な道具だと喜んでいただけました。実にうれしいですね」。そう言って熊崎社長は満面に笑みを浮かべる。
便利でワクワクする遊び心のある商品を
どこいっ太郎には、使い勝手を考慮した工夫が盛り込まれている。まず、親機1台とセットになった子機は5台あり、例えば親機の3のボタンを押すと3番の子機が「ピーピーピー」と3回鳴る。番号と同じ回数が鳴るという、分かりやすい仕組みなので、誰でもすぐに使いこなせる。親機は磁石を内蔵し、冷蔵庫などに貼りつけておける。肝心の親機をなくさないようにとの配慮だ。親機の裏に貼るラベルには、どんなものに何番の子機をつけたかを忘れないようにメモすることもできる。さらに、暗がりでも使いやすいよう、親機上面には省エネ照明のLEDライトをつけた。税込み価格はセットで9800円。追加部品として、子機1台を1500円、親機は1台2500円で買い足せる。
現在では「ニッセン」や「ベルーナ」といった通販会社も取り扱うようになり、贈り物としての購入も増えた。今年5月頃には、テレビショッピングにも登場する予定だ。「実は、当初から贈答品としての購入を想定し、見栄えのいいパッケージにしてあります」(熊崎社長)。発売から5000セット近くを売り上げたが、目標とする販売個数はもっと高く設定している。「今後の課題は、いかに販路を広げるかということと、使い勝手をよりよくするために子機をさらに小型化することです」(同)
熊崎社長は、かつて商社に勤務していた頃から「モノづくり」の会社を立ち上げようと決めていたという。起業はまさにゼロからのスタートだったが、アイデアたっぷりの家電製品や娯楽品、生活雑貨などでヒットを飛ばし、現在に至っている。「まるでジェットコースターのような人生」と言う熊崎社長は、大量の商品を持ち逃げされる詐欺により膨大な損失を被ったこともある。悲惨な目に遭いながらも事業を継続することができたのは、「開発した商品を通じて社会に貢献できる喜びがあるから」と熊崎社長は語る。
さらに、「便利さを求めた商品でも、楽しく、きれいで、使ってワクワクできるのが私の理想。商品開発時には常に遊び心を大切にしています」とも。今、熊崎社長の頭の中には、次の商品のアイデアが40近くも待機している。「暮らしを便利に、楽しくするモノをこれからもどんどん世に出していきたい」と意気込みを見せる。
会社概要
クマザキエイム
【本社】〒222-0013 神奈川県横浜市港北区錦が丘12-17クマザキビル
【設立】1992年9月
【資本金】1000万円
【売上高】7億5000万円(2007年8月期)
【従業員】10人
【事業内容】電気製品類、陶磁器類(縁起物)、一般雑貨類の開発・製造・販売
【URL】http://www.kumazaki-aim.co.jp/
文・近野ひろ美
出勤前に家を出ようとして「あれ、携帯はどこだ? 鍵は?」と、あわてた経験のある人は多いだろう。また、家の中には家電製品のリモコンなどの小物類があふれ返り、置き場所をうっかり忘れて探し出すのに苦労するのもよくあることだ。さらに、使用頻度の低い保険証やパスポートも保管場所が分からなくなりやすい。もしも、探し物が自分で「ここです!」と主張してくれたら、これほど便利なことはない……。そんな望みをかなえ、話題を呼んでいるのが、クマザキエイムの「どこいっ太郎」だ。マッチ箱ほどの大きさの子機をキーホルダーのようになくしやすい物に取りつけて、親機のボタンを押せば即座に子機が「ピーピー」と電子音を鳴らす。引き出しやかばんの中にあっても反応する。
開発のきっかけは、熊崎道夫社長(56)がある光景を目にしたことだ。それはどの家庭でもある出来事。外出しようとした義兄が車の鍵を探し始め、妻と「どこだ?」「知らない」と言い争いを始めた。それを見て、ピンと来たという。「誰でも加齢とともに物忘れが増えてきます。特に高齢者ともなると、ひどくなる。こればかりは仕方ありません。だったら、探し物を簡単に見つけることができるモノを作れば便利だろうと思い立ち、1年をかけて開発しました」(熊崎社長)
製品化までに苦労した点は主に2つ。第1に、日本の厳しい電波法に抵触しない範囲で、必要最大限の受信・発信力を持たせること。第2は、子機の小型化だった。サイズは小さいほど邪魔にならず使いやすいが、小型化するほど電波の受信能力も落ちる。どこで折り合いをつけるかに腐心し、試行錯誤を繰り返した。最終的に、受信範囲7m、子機はマッチ箱くらいのサイズと決め、商品化に取りかかった。
10秒のテレビ放映で200台が即売した
どこいっ太郎の販売を始めた当初は、期待したほど売り上げが伸びなかった。主要な顧客層である高齢者と、どこいっ太郎の販売戦略との間に、ずれがあったことに主な要因がある。「インターネット販売を中心としたのですが、本当に便利だと感じてもらえるであろう高齢者の方々は、ネット通販をあまり利用されません」と熊崎社長は振り返る。状況が一変したのはテレビの力。NHKの朝のニュース・情報番組『おはよう日本』の商品紹介コーナーで2007年5月30~31日に取り上げられたのだ。約10秒の放映にもかかわらず、どこいっ太郎の知名度が一気に高まった。放映直後から問い合わせの電話や手紙が殺到し、またたく間に二百数十台が売れた。ユーザーから感謝の声が続々と届く。カラフルで遊び心のあるデザインも好評だった。
「テレビの影響力の強さを実感しました。そして、いい商品を作るだけではダメで、商品の存在を広く知ってもらうことが大切であることを痛感するなど、いい勉強になりました」(熊崎社長)知名度が上がり、売り上げが増えるにつれて、予想外の使われ方も出てきた。「視覚にハンディキャップのある方々から、とても重宝な道具だと喜んでいただけました。実にうれしいですね」。そう言って熊崎社長は満面に笑みを浮かべる。
便利でワクワクする遊び心のある商品を
どこいっ太郎には、使い勝手を考慮した工夫が盛り込まれている。まず、親機1台とセットになった子機は5台あり、例えば親機の3のボタンを押すと3番の子機が「ピーピーピー」と3回鳴る。番号と同じ回数が鳴るという、分かりやすい仕組みなので、誰でもすぐに使いこなせる。親機は磁石を内蔵し、冷蔵庫などに貼りつけておける。肝心の親機をなくさないようにとの配慮だ。親機の裏に貼るラベルには、どんなものに何番の子機をつけたかを忘れないようにメモすることもできる。さらに、暗がりでも使いやすいよう、親機上面には省エネ照明のLEDライトをつけた。税込み価格はセットで9800円。追加部品として、子機1台を1500円、親機は1台2500円で買い足せる。現在では「ニッセン」や「ベルーナ」といった通販会社も取り扱うようになり、贈り物としての購入も増えた。今年5月頃には、テレビショッピングにも登場する予定だ。「実は、当初から贈答品としての購入を想定し、見栄えのいいパッケージにしてあります」(熊崎社長)。発売から5000セット近くを売り上げたが、目標とする販売個数はもっと高く設定している。「今後の課題は、いかに販路を広げるかということと、使い勝手をよりよくするために子機をさらに小型化することです」(同)
熊崎社長は、かつて商社に勤務していた頃から「モノづくり」の会社を立ち上げようと決めていたという。起業はまさにゼロからのスタートだったが、アイデアたっぷりの家電製品や娯楽品、生活雑貨などでヒットを飛ばし、現在に至っている。「まるでジェットコースターのような人生」と言う熊崎社長は、大量の商品を持ち逃げされる詐欺により膨大な損失を被ったこともある。悲惨な目に遭いながらも事業を継続することができたのは、「開発した商品を通じて社会に貢献できる喜びがあるから」と熊崎社長は語る。
さらに、「便利さを求めた商品でも、楽しく、きれいで、使ってワクワクできるのが私の理想。商品開発時には常に遊び心を大切にしています」とも。今、熊崎社長の頭の中には、次の商品のアイデアが40近くも待機している。「暮らしを便利に、楽しくするモノをこれからもどんどん世に出していきたい」と意気込みを見せる。
会社概要
クマザキエイム
【本社】〒222-0013 神奈川県横浜市港北区錦が丘12-17クマザキビル
【設立】1992年9月
【資本金】1000万円
【売上高】7億5000万円(2007年8月期)
【従業員】10人
【事業内容】電気製品類、陶磁器類(縁起物)、一般雑貨類の開発・製造・販売
【URL】http://www.kumazaki-aim.co.jp/
文・近野ひろ美
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