2008年06月19日更新
<5月号特集>中小企業だからこそ武器になる/後編
インターネット販売は多額の費用をかけずに全国に向けて商品・サービスを売り込むことができる。しかも、大手企業には手の出せない、すき間産業的な商品でも売れる市場になっている。中小企業だからこそ、ネット販売を活用して事業の裾野を広げるべきだ。
自前ショップか?電子商店街か?
では、これから中小企業がネット販売を始めるにあたり、何から手を着ければいいのだろうか。まず決めるべきことは、(1)自社でネットショップを立ち上げて、自前で好きなように運営をする、(2)楽天やヤフー、アマゾンなどが運営するショッピングサイトやECモール(電子商店街)に出店するから選択することだ。
実店舗での販売に慣れている経営者にとって、ネット販売といえども自社(店)でネットショップを運営していきたいのはやまやまだろう。しかし、情報量が無限に増大し続けるインターネットの世界で、どうすれば実績が出せるのかはそう簡単に分かるものではない。それを考えれば、自社運営と有名モールへの出店のどちらにすべきか悩むだろう。
自社でネットショップを立ち上げる場合のメリットとデメリットについて、ネット販売に詳しい経営コンサルタントのMBAソリューション代表、安部徹也氏が語る。「インターネットに詳しい人材が社内にいる場合には、まずは自社でショップ運営をスタートしてもいいと思います」。この場合、コスト面のリスクは低くなる。一方、自社運営のデメリットは何か。「ネット上には、億単位の店舗数があります。そこから自社のサイトを探してもらうのは、砂漠に落としたコメ粒を見つけてもらうようなもの。そのために検索エンジンと連動した広告展開などが有効となりますが、コストがかかるうえ、集客も非常に難しいでしょう」(同)
もう1つ大切なことはブランド力だ。商品にブランド力があれば、自社運営でも販売しやすい。しかし、ネットショップの運営自体にあまりコストがかからないため、どの企業でも参入しやすい。そこで詐欺など、悪質な商売をしているサイトがないわけではない。自社商品にブランド力がない場合、信用度を高めるための工夫が必要だ。「ブランド力があまりなく、社内に
インターネットに詳しい人材がいない場合は、ヤフーや楽天などのモールに出店することから始めるのがいいでしょう。全国規模で有名なモールが持つ信用度を有効活用できるからです」(安部氏)


ショッピングモールに出店するメリットは、大きく分けて次の3つだ。(1)モール自体に集客力があるので自社のショップに顧客を誘導しやすい。(2)出店から運営まで低コストでできる。(3)モールによってはネット販売の専門家からのアドバイスを受けることができる。
富士通総研の湯川氏が説明する。「ネットショップの構築サービスを提供するEストアなども販売力アップに力を入れ始めています。ショップの出店と運営の手助けだけではなく、集客や売り上げアップのノウハウも教える動きが目立ちます」
人気のネットオークション(競売)市場「ヤフー・オークション」を抱え、また「ヤフー・ショッピング」という大型モールを展開するヤフー(東京都港区)の碓井啓司・ビジネスサービス本部長が現状を語る。「ネット販売の市場は、中小企業の数が圧倒的に多いですね。
ヤフーショッピングストアの新規契約も、ここ2、3年で大きな伸びを見せています。中小企業がモールに出店するメリットは、非常に大きな集客効果があることです。これはネット販売に限らず、実店舗でも同じだと思いますが、
強力ブランドは路面店で勝負できます。でも通常ブランドの場合は、独力よりも、すでに消費者がたくさん集まっているモールへの出店が成功の近道でしょう」自社でネットショップを運営する場合、実際のシステム構築やメンテナンス、在庫管理などにも手がかかる。それらのわずらわしさを回避するには、出店から運営まで一括サービスを提供するモールの活用を視野に入れるべきだ。
ヤフーの須永浩一・ECコンサルティング部長がモールの利点をこう説く。「一般に、商品販売の成否は商売感覚と数値データを上手に組み合わせることができるかどうかにかかっています。その点、モールでのネット販売は、顧客の住所や年齢など実店舗では得られないデータを取得できます。どの商品がどんな人々に売れているのか、実店舗ではつい感覚に頼りがちな販売傾向を数値で分析できるのでビジネスの精度が上がります」
どれだけの人数が、どのページを訪れて、どんな商品に興味を示しているか。すべてデータとして蓄積されていくので、売り逃し対策を迅速に講じるなど、効率的な事業展開が可能となる。ヤフー・ショッピングは1日に約14億ビュー(閲覧)があるトップページからの誘導、またヤフーオークションのサイトと相互リンクを張ることで得られる。相乗効果のある集客などが特徴だ。
全国から1万8000店舗以上が出店する日本最大のショッピングモール「楽天市場」を展開する楽天(東京都品川区)の顧客支援も緻密だ。大きな特徴は、過去10年のノウハウを体系化し、出店企業に伝授する講座「楽天大学」(コラム参照)だ。講義内容は、売り上げ目標を達成するための販売指導のほか、人事など経営全般の多岐にわたる。
楽天大学の仲山進也学長がネット販売の傾向を語る。「今後、ネット販売を手がける企業はさらに増えるでしょう。でも、売れ筋の商品を仕入れて販売すれば潤うという時期はすでに過ぎています。ネット販売では自分が本当に売りたい商材や自信がある商品など、『なぜ、これを売りたいのか』という動機がはっきりしているショップが成功する傾向がうかがえます」
新事業を始める意気込みが必要
ショッピングモールへの出店までの流れはこうだ。例えば楽天の場合は、まず申込書の送付と出店審査を経てから契約する。次に、店舗運営システムの入門マニュアルセットが送られてきたら、出店料を入金して決済や配送のプログラムの申し込みを済ませる。そして、マニュアルセットを参考にページを完成させて、担当スタッフによるオープン審査が通れば開店となる。
アマゾンジャパン(東京都渋谷区)が運営する通販サイト「アマゾン」もネット販売の場として活用ができる。元はインターネット上の「本屋」として00年にスタートしたが、今では音楽CDやDVD、また電化製品など取り扱い製品は多岐にわたり、ネットショッピングを楽しむ消費者が数多く集まる。この「アマゾンマーケットプレイス」への出品には、(1)珍しいモノや不要なモノなどを手軽に売買する「個人出品者」、(2)ショップオーナーなどが商品をまとめて出品する「大口出品者」、(3)サイト内に出店する「出店型出品者」――の3形態があり、やはり本やDVDなどソフト関連商品の売買が特に活発だ。
一方、モールに出店した企業が、すべて成功するわけではないのも事実だ。MBAソリューションの安部代表が語る。「店舗運営コストが大きな課題の1つです。どこのモールも、売り上げに対するコミッション(手数料)が発生します。また、モール内での企業競争も、かなり激しいと覚悟しなければなりません」
ネット販売では業種や業態、販売する商品の性質によって、B to C(消費者向けビジネス)だけではなく、B to B(企業向けビジネス)の積極的な展開も可能だ。
MBAソリューションの安部代表が補足する。「例えば個人向けには、試供品の提供などをきっかけにメールマガジンの登録に誘導し、実際の購入に結びつけるなどの方法が取れます。そして企業向けでは、ネット経由で問い合わせや資料請求が可能な仕組みを作り、最終的に営業担当者が緻密なフォローをして、取り引きの成立につなげることが考えられます」
業種や業態を問わず、急速に拡大するネット販売。中小企業にとって、活用の仕方によっては貴重な販路となるに違いない。
文・橋口義彦(ハリーフッド)
次へ>>客を呼び込むポイント
では、これから中小企業がネット販売を始めるにあたり、何から手を着ければいいのだろうか。まず決めるべきことは、(1)自社でネットショップを立ち上げて、自前で好きなように運営をする、(2)楽天やヤフー、アマゾンなどが運営するショッピングサイトやECモール(電子商店街)に出店するから選択することだ。
実店舗での販売に慣れている経営者にとって、ネット販売といえども自社(店)でネットショップを運営していきたいのはやまやまだろう。しかし、情報量が無限に増大し続けるインターネットの世界で、どうすれば実績が出せるのかはそう簡単に分かるものではない。それを考えれば、自社運営と有名モールへの出店のどちらにすべきか悩むだろう。
自社でネットショップを立ち上げる場合のメリットとデメリットについて、ネット販売に詳しい経営コンサルタントのMBAソリューション代表、安部徹也氏が語る。「インターネットに詳しい人材が社内にいる場合には、まずは自社でショップ運営をスタートしてもいいと思います」。この場合、コスト面のリスクは低くなる。一方、自社運営のデメリットは何か。「ネット上には、億単位の店舗数があります。そこから自社のサイトを探してもらうのは、砂漠に落としたコメ粒を見つけてもらうようなもの。そのために検索エンジンと連動した広告展開などが有効となりますが、コストがかかるうえ、集客も非常に難しいでしょう」(同)
もう1つ大切なことはブランド力だ。商品にブランド力があれば、自社運営でも販売しやすい。しかし、ネットショップの運営自体にあまりコストがかからないため、どの企業でも参入しやすい。そこで詐欺など、悪質な商売をしているサイトがないわけではない。自社商品にブランド力がない場合、信用度を高めるための工夫が必要だ。「ブランド力があまりなく、社内に
インターネットに詳しい人材がいない場合は、ヤフーや楽天などのモールに出店することから始めるのがいいでしょう。全国規模で有名なモールが持つ信用度を有効活用できるからです」(安部氏)


ショッピングモールに出店するメリットは、大きく分けて次の3つだ。(1)モール自体に集客力があるので自社のショップに顧客を誘導しやすい。(2)出店から運営まで低コストでできる。(3)モールによってはネット販売の専門家からのアドバイスを受けることができる。
富士通総研の湯川氏が説明する。「ネットショップの構築サービスを提供するEストアなども販売力アップに力を入れ始めています。ショップの出店と運営の手助けだけではなく、集客や売り上げアップのノウハウも教える動きが目立ちます」
人気のネットオークション(競売)市場「ヤフー・オークション」を抱え、また「ヤフー・ショッピング」という大型モールを展開するヤフー(東京都港区)の碓井啓司・ビジネスサービス本部長が現状を語る。「ネット販売の市場は、中小企業の数が圧倒的に多いですね。
ヤフーショッピングストアの新規契約も、ここ2、3年で大きな伸びを見せています。中小企業がモールに出店するメリットは、非常に大きな集客効果があることです。これはネット販売に限らず、実店舗でも同じだと思いますが、
強力ブランドは路面店で勝負できます。でも通常ブランドの場合は、独力よりも、すでに消費者がたくさん集まっているモールへの出店が成功の近道でしょう」自社でネットショップを運営する場合、実際のシステム構築やメンテナンス、在庫管理などにも手がかかる。それらのわずらわしさを回避するには、出店から運営まで一括サービスを提供するモールの活用を視野に入れるべきだ。
ヤフーの須永浩一・ECコンサルティング部長がモールの利点をこう説く。「一般に、商品販売の成否は商売感覚と数値データを上手に組み合わせることができるかどうかにかかっています。その点、モールでのネット販売は、顧客の住所や年齢など実店舗では得られないデータを取得できます。どの商品がどんな人々に売れているのか、実店舗ではつい感覚に頼りがちな販売傾向を数値で分析できるのでビジネスの精度が上がります」
どれだけの人数が、どのページを訪れて、どんな商品に興味を示しているか。すべてデータとして蓄積されていくので、売り逃し対策を迅速に講じるなど、効率的な事業展開が可能となる。ヤフー・ショッピングは1日に約14億ビュー(閲覧)があるトップページからの誘導、またヤフーオークションのサイトと相互リンクを張ることで得られる。相乗効果のある集客などが特徴だ。
全国から1万8000店舗以上が出店する日本最大のショッピングモール「楽天市場」を展開する楽天(東京都品川区)の顧客支援も緻密だ。大きな特徴は、過去10年のノウハウを体系化し、出店企業に伝授する講座「楽天大学」(コラム参照)だ。講義内容は、売り上げ目標を達成するための販売指導のほか、人事など経営全般の多岐にわたる。
楽天大学の仲山進也学長がネット販売の傾向を語る。「今後、ネット販売を手がける企業はさらに増えるでしょう。でも、売れ筋の商品を仕入れて販売すれば潤うという時期はすでに過ぎています。ネット販売では自分が本当に売りたい商材や自信がある商品など、『なぜ、これを売りたいのか』という動機がはっきりしているショップが成功する傾向がうかがえます」
新事業を始める意気込みが必要
ショッピングモールへの出店までの流れはこうだ。例えば楽天の場合は、まず申込書の送付と出店審査を経てから契約する。次に、店舗運営システムの入門マニュアルセットが送られてきたら、出店料を入金して決済や配送のプログラムの申し込みを済ませる。そして、マニュアルセットを参考にページを完成させて、担当スタッフによるオープン審査が通れば開店となる。
アマゾンジャパン(東京都渋谷区)が運営する通販サイト「アマゾン」もネット販売の場として活用ができる。元はインターネット上の「本屋」として00年にスタートしたが、今では音楽CDやDVD、また電化製品など取り扱い製品は多岐にわたり、ネットショッピングを楽しむ消費者が数多く集まる。この「アマゾンマーケットプレイス」への出品には、(1)珍しいモノや不要なモノなどを手軽に売買する「個人出品者」、(2)ショップオーナーなどが商品をまとめて出品する「大口出品者」、(3)サイト内に出店する「出店型出品者」――の3形態があり、やはり本やDVDなどソフト関連商品の売買が特に活発だ。
一方、モールに出店した企業が、すべて成功するわけではないのも事実だ。MBAソリューションの安部代表が語る。「店舗運営コストが大きな課題の1つです。どこのモールも、売り上げに対するコミッション(手数料)が発生します。また、モール内での企業競争も、かなり激しいと覚悟しなければなりません」
ネット販売では業種や業態、販売する商品の性質によって、B to C(消費者向けビジネス)だけではなく、B to B(企業向けビジネス)の積極的な展開も可能だ。
MBAソリューションの安部代表が補足する。「例えば個人向けには、試供品の提供などをきっかけにメールマガジンの登録に誘導し、実際の購入に結びつけるなどの方法が取れます。そして企業向けでは、ネット経由で問い合わせや資料請求が可能な仕組みを作り、最終的に営業担当者が緻密なフォローをして、取り引きの成立につなげることが考えられます」
業種や業態を問わず、急速に拡大するネット販売。中小企業にとって、活用の仕方によっては貴重な販路となるに違いない。
約2万店舗のデータを分析し売れる秘訣を教える楽天大学
慣れないネットビジネスを上手に軌道に乗せることができるか。初めてウェブに出店する経営者の不安のタネは数多いだろう。そんな悩みに答えようと、最近はネットのショッピングモールを運営する企業が、積極的に売り上げを上げるための方策を教える講座を開講している。成功例や失敗例を体系化して、ネット販売ノウハウを授ける講座だ。
なかでも著名なのは、楽天が主催する「楽天大学」だろう。楽天大学の学長を務める仲山進也氏は、「楽天市場の約2万店舗は、楽天の共通システムを使っています。そのなかで、例えば月商3000万円とか、さらには同1億円まで成長する店舗には、共通の法則のようなものを見いだすことができます。それらを体系化して、お伝えしていこうという趣旨で始まったのが『楽天大学』です」と語る。
初級の講座は、ページの作り方などシステムの勉強や店舗運営が中心だ。さらに、店舗価値の高め方、増客手段など実践的な内容へと続く。「ネット販売で従業員が増えた企業に向けて、アドバンス(上級)コースとして人材マネジメントや経営戦略のプログラムも始めました」(仲山学長)同講座は、すでに延べ5万人以上が受講した。月商1000万円を上げている店舗の80%は受講経験があるほか、講座の受講によって平均3倍以上の売り上げの差が出ているという。
慣れないネットビジネスを上手に軌道に乗せることができるか。初めてウェブに出店する経営者の不安のタネは数多いだろう。そんな悩みに答えようと、最近はネットのショッピングモールを運営する企業が、積極的に売り上げを上げるための方策を教える講座を開講している。成功例や失敗例を体系化して、ネット販売ノウハウを授ける講座だ。なかでも著名なのは、楽天が主催する「楽天大学」だろう。楽天大学の学長を務める仲山進也氏は、「楽天市場の約2万店舗は、楽天の共通システムを使っています。そのなかで、例えば月商3000万円とか、さらには同1億円まで成長する店舗には、共通の法則のようなものを見いだすことができます。それらを体系化して、お伝えしていこうという趣旨で始まったのが『楽天大学』です」と語る。
初級の講座は、ページの作り方などシステムの勉強や店舗運営が中心だ。さらに、店舗価値の高め方、増客手段など実践的な内容へと続く。「ネット販売で従業員が増えた企業に向けて、アドバンス(上級)コースとして人材マネジメントや経営戦略のプログラムも始めました」(仲山学長)同講座は、すでに延べ5万人以上が受講した。月商1000万円を上げている店舗の80%は受講経験があるほか、講座の受講によって平均3倍以上の売り上げの差が出ているという。文・橋口義彦(ハリーフッド)
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