ウェブ ベンチャー・リンク
WEB VENTURE LINK

経営情報誌「月刊ベンチャー・リンク」の週刊ウェブマガジンです
自ら人生を、ビジネスを、明日を切り拓こうという人を応援します

2008年06月19日更新

<ビジネスワイド>地域密着「さっぽろ村ラジオ」

天の時は地の利にしかず
地域密着「さっぽろ村ラジオ」


1995年の阪神淡路大震災の経験から、地域のコミュニティ放送の役割が注目を集め、全国各地で設立が進められてきた。いざという時に情報ライフラインとしての活躍が高く評価されたためだが、普段は地域の商業活動やイベント情報を発信し、運営も聴取者参加型になっているところが多い。そうした地域FM放送局のひとつ、「さっぽろ村ラジオ」を訪ねた。




開局5年をむかえた札幌市北東部限定のローカルFM局

「開局のきっかけは、阪神淡路大震災です。この時の経験として、災害の際にはローカルなコミュニティ・ラジオ局が、水や食べ物の補給情報や役所からのお知らせなどの発信と普及にもっとも役立ったといいます。札幌市には現在、8つのコミュニティ局があり、北海道全体では23局になります。『さっぽろ村ラジオ』は、開局して5年になりますが、札幌市北東部地域限定で出力20kwの小さなFM放送局です」(メインパーソナリティの吉泉まさあきさん)

防災のための地域ライフラインのひとつにしようと、5年前から地元企業や商工関係者、住民有志の協力で設立された「さっぽろ村ラジオ」は、札幌市東区北12条東7丁目のショッピングセンター2階にある。株式会社の形態をとるが、3名の社員以外のスタッフは皆、地元ボランティアだ。

「ここは、町内全体にわたり高齢者世帯が多いのですよ。ですから、いざというときの防災情報をお伝えするには、ラジオの果たす役割が大きいのです。ふだんからひとり暮らしのお年寄りにも聴いてもらいたくて、懐かしい歌、演歌のナンバーをかける番組も多くしています」(吉泉さん)

北海道ではいま、世帯の高齢化やひとり暮らし世帯の増加を背景とした「孤独死」問題がクローズアップされている。「災害弱者」を孤立させたまま放置せず、地域社会の中での結びつきを構築していくうえで、ローカル・ラジオ放送の果たす役割には大きい。そして、ふだんから聴いてもらっていてこそ、緊急時に力を発揮するのが、ローカル・ラジオなのだ。

「さっぽろ村ラジオ」は、高齢の聴取者をひきつける企画ばかりでなく、地元ローカル局ならではの番組の編成に力を入れ地域住民の中に「地元の電波を大事にしたい」という共感を呼んでいる。代表取締役の駒嶺守さんは、語る。

「昔は、小中学校の運動会の開催の可否を早朝、打ち上げ花火で告知したりしていましたね。放送エリア内には、100くらいの小中学校があるのですが、この花火による告知の代わりに朝6時から8時にかけて放送でのお知らせにするようにしました。また、少年野球や社会人の“朝野球”(早朝5時~7時30分頃に行なわれる)試合結果を放送したり、近所のお店紹介など、大きいところにはできない話題をとりあげてきました。こうした取り組みの中で聴いていただく人の層も厚くなり、地元から応援しようという動きが広まってきたと実感しています」




地元の営業と生活に密着――ボランティアスタッフも広げて

「さっぽろ村ラジオ」は、その番組編成を見ると、地元のあらゆる営業や生活に光をあてる内容の豊富さに驚かされる。平日朝10時から12時にかけて放送される「地域みんなのラララララ…」では、地域の交通情報を警察官が直接伝える「さっぽろ村におまわりさんがきたっしょ!!」(札幌方面北警察署)「交通安全東区を守ろうセーフティーコーン」(札幌方面東警察署交通第一課)をはじめ、行政からのお知らせ放送「タッピー通信」(東区役所)、「渋谷俊和の『生活と仕事のよろづ相談』」(北海道新栄商工会)他、地元企業が提供する「お役立ち番組」が盛りだくさんだ。

木曜日の午前10時から「生活と仕事のよろづ相談」で聴取者からの電話相談を担当する渋谷俊和さん(北海道新栄商工会事務所長・札幌ライラックの会代表)は、次のように語る。

「私たち北海道新栄商工会は、中小零細業者が励まし合い知恵を出し合って営業と生活を守る運動に取り組んでいます。また、多重債務者の駆け込み寺として、札幌ライラックの会の活動も続けていますが、こうした活動の経験を活かして聴取者のみなさんからの生の相談に応じるというのは、地元のローカル局ならではのものだと思います。放送を通じた地域コミュニティづくりのお手伝いをできることに、とてもやりがいを感じています」

番組内容もさることながら、地域活動の成果がボランティアスタッフの結集という形になり、放送局の運営に活かされている。 子ども会協議会に参加しながらボランティアスタッフとしてパーソナリティを務めている前田郁子さんは、こう語る。
「この仕事を通じて、地域の子どもたちを育てていく情報を発信できることにやりがいを感じています。放送局の仕事には、札幌東区の子ども会ジュニアリーダーのなかからもボランティアを募って、ワーキング体験として参加してもらっています」

実際、われわれがインタビューをしている傍らで、中学生と高校生のボランティアスタッフが放送する音楽のCD選びの作業をしていた。地元の生徒たちで、「仕事は面白い」という。

代表取締役の駒嶺さんはいう。
「ようやく『さっぽろ村ラジオ』も、“地域の財産”としての認知が広がり、市民参加型が定着しつつあるように感じます。聴取者のみなさんからのメールやファックスも多くなりましたしね。地元のお店や企業のみなさんにとっても、情報の発信が新たな仕事を広げるきっかけを提供することにもつながっているようで、番組提供を含め応援を多くいただけるようになりました。放送している料理教室、歌謡レッスン、さらに番組から発展した利尻コンブ漁や加工などの仕事体験ツァーの実施など、参加される住民の層が大きく広がっています。一方で、財政的にはカツカツの状況で、本来、防災インフラのひとつでもあるはずですから、公的な助成がいくばくかでもあれば助かるのですけど」

「さっぽろ村ラジオ」は、地元の広い層の住民、地元業者や企業、さらには地方の行政機関まで含めた幅広い「参加型運営」で地域コミュニティ放送局の内実を作ることに成功している。地域経済の活性化にも貢献していることが明らかで、公的財政支援が皆無の中でこれだけの取り組みをしていることに対し、頭が下がる思いだ。全国各地に同様のローカルコミュニティ放送局が活動を展開しているが、抱える困難は同様のものだろう。企業がこうした放送局の運営にも、積極的なかかわりと支援をすることが求められると思われるが、それと同時に国を先頭とした防災インフラ整備の位置付けでの公的財政支援をはたらきかけていくことが必要であろう。

【会社データ】
株式会社さっぽろ村ラジオ

所在地 札幌市東区北12条東7丁目1-15ショッピングセンター光星2階
TEL 011-723-8130
FAX 011-723-7775 (メッセージ、リクエスト専用FAX 011-723-5551)
MAIL info@sapporomura.jp
URL http://www.sapporomura.jp
放送エリア 北海道札幌市の東区全域、北区、中央区、西区、豊平区、白石区、石狩市、当別町の一部(推定受信エリア人口 120万人以上)

取材・文 篠原常一郎


関連記事

この記事のトラックバックURL

http://ww1.web-vl.com/t453

このページのTopへ

月刊ベンチャー・リンクとは?

定期購読のご案内