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2008年06月12日更新

<さかもと未明>男の最も価値ある仕事は・・・

男の最も価値ある仕事は身近な人を安心させること

写真:さかもと未明氏1988年玉川大学文学部英文科卒。商社OLを経て24歳で漫画家デビュー。レディスコミック誌を中心に活躍するかたわらルポやエッセイも執筆し、売れっ子となる。00年、「文学界」にて『花悩』で作家デビュー。現在、日本テレビ『スッキリ!!』(月~金、午前8時~)のレギュラーコメンテーター。著書に『マンガ ローマ帝国の歴史1~3』(講談社)、『右よりですが、何か?』(ワック)など。
さかもと未明オフィシャルブログ「さかもと未明の和みカフェ?」http://blog.goo.ne.jp/sakamoto-mimei/

イージス艦と清徳丸の衝突事故があった時、世論は一斉に自衛隊の発表の遅れを非難した。確かに対応の遅れ、発表内容の変化など、有事に対応する機関にあるまじき不備は非難されてしかるべきだ。清徳丸の関係者の悲痛を思えばこそ、不備のない対応をして、余計な心労や悲しみが増えないようにしてほしかった。

事故から数日後、石破(いしば)茂防衛大臣の進退を含めての議論が白熱している時に私は経済学者の小山(おやま)和伸氏の出版記念パーティーに出席していた。事故についてどう筆を進めようか考えながら発起人のスピーチを聞いていると、やがて衆議員議員の西村眞悟氏が壇上に立ち、イージス艦の中に司法が介入したり、すべての情報を丸裸にして公開するなどということはありえないと、強く主張されたことに衝撃を覚えた。

西村氏が主張されたことは、間違いなく正論である。イージス艦は防衛機密の塊であって、正義の名のもとにすべての情報を垂れ流すようでは、防衛は成り立たない。誤解を恐れずに言えば、極限状態において、個人の命を凌駕(りょうが)する公というものは存在する。とはいえ今回は必要性のない犠牲であり、だからこそ深い思慮に基づいた態度を自衛隊が示すべきであった、石破防衛大臣の態度は立派だったが、組織がそれについていなかったことが実に悔やまれる。そこができていなかったから、関係者の苦悩は深まった。

私が西村氏の態度に感銘を受けたのは、そんな自衛隊の態度とは対極だったからである。深い悲しみや絶望のなかにある時に人が求めるのは、薄っぺらな正義などではなく、共感と、深い思考によって導かれる現実との折り合いだ。それを納得させる確信、威厳、懐の深さというものだけが人を救うのではないか。それはまさに政治家や経営者、そして男がとるべき態度というもの。父親や、長となる立場の人間に必要なことであると私は思った。

私も経営の一端を担っているが、確かにすべてを情報公開していては組織が成り立たない。例えば、簡単に利益が上がっているように思われたら、働かなくなるのが従業員の常であるし、逆に儲かっていないと分かれば不安で生産性が落ちたり、他社に転職されたりしてしまう。

私が中学3年生の時の個人的な体験だが、進学を目前に「うちにはお金がないので」と、母親から残高のない通帳を見せられ、不安と進学することへの後ろめたさで、勉強意欲を失った。家族を1つの経営母体と考えれば、私は別の組織に属したくて仕方なかったのだろう。高校時代は年上の異性との恋愛に安心を求めた。

今となっては自分の弱さだったと思うし、親も大変だったのだろうと理解できるが、当時は【何でそんなことを子供に言うのか。今どき高校にも進学させてあげられないなら、子供を何人も作らないでくれ、無責任だ】などと思わずにいられなかった。稼げるだけの年齢と環境に達していれば頑張ることもできるが、まだ15歳だった私には、稼ぐことも勉強に集中することもできずに混乱し、人生で最も無邪気に楽しめたはずの10代から20代の前半は鬱(うつ)病との闘い、家出の企図と失敗の繰り返しで過ごしてしまった。もちろん私はその苦悩と、鬱病からの回復と自立の経過によって心の強さと思考の力を獲得できたのだろう。

しかし若い時に強い確信のもとに庇護を受ける体験をすることができたなら、もっと早く人を信じて人生を広げていくことも学べたと思う。だから、女、子供、国民、社員に真の安心を与えることは、男の最も価値ある仕事だと思わずにいられないのだ。そんな男や父親を得た女や子供は強く生きる力を持てる。そして、そんな風に頑張る男が本当に力尽きて倒れた時に抱きしめて癒やすのが女の真の仕事ではあるまいか。女が大切に扱われてるのは、その「有事」の時のためだと私は理解している。男も女も、そんな哲学を持って生きていくことが、どんな資産や保険より大切なのではあるまいか。



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