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2008年05月22日更新

<4月号特集>2 中田製作所 大阪府八尾市

世界最小の穴あけ加工で
顧客からの信頼感が増大


アルミ専門の精密部品機械加工メーカー・中田製作所は、従来の主力事業とは別に、5マイクロメートル(1000分の5㎜)という微細な穴あけ加工に挑戦し、創意工夫と情熱で世界初の偉業を達成。それ以来、「微細加工なら中田製作所」という評判が顧客の間に広がっている。

あけた穴のサイズは髪の太さの20分の1

2005年11月3日、文化の日。休日で静まりかえった工場地帯の一角に歓喜の声が響いた。中田(なかた)製作所内にわずか3人で結成された技術開発チームが試行錯誤の末、ドリル加工による直径5マイクロメートルの30カ所連続穴あけという微細加工に成功したのだ。

髪の毛の太さが約100マイクロメートル。穴がいかに小さいかが分かる。大手メーカーを含む機械加工業界では、これまで30マイクロメートルが最小径の限界だった。中田製作所が達成した5マイクロメートルの穴あけは世界初の偉業であり、同業他社やマスコミから一躍注目を集めることとなった。


左/100マイクロメートルの刃物は蚊の針と同じくらいの太さ。中田製作所の微細加工で使用する最小径の刃物はこれの20分の1だ。右/中田製作所では、A5052というアルミ材に対して直径5マイクロメートルという極小の穴を30カ所連続であけることに世界で初めて成功した。

現在、中田製作所の微細加工技術は自動車や医療、バイオ、宇宙産業など、様々な分野で利用されている。同社の売り上げ比率のうち99%は半導体製造装置や医療医薬機器、産業用ロボットなどに用いるアルミニウム製の精密部品加工が占め、微細加工は約1%と少ない。しかし、特異な技術を確立したことは数字以上の効果があったと中田寛社長は語る。

「微細加工は当社の広告塔。この技術を持つという信頼感が主力事業のアルミ加工の依頼を呼び寄せてきています。以前は関西圏からの発注がほとんどでしたが、関東など遠方からの問い合わせも増えました。なかには、『中田製作所はもう難しい案件しか受けてくれないんですよね』と従来の顧客から尋ねられるほど、当社の微細加工技術は衝撃的だったようです」
社外への宣伝効果だけでなく、自社開発に成功した技術を持つという自負が社員の士気を高めた。また、少しのミスも許されない微細加工に成功したことで、主力事業のアルミ加工でも精度をより高めて納品する習慣が会社全体に広がった。その結果、05年に比べて売上高が20%アップと会社の業績も上がった。


左/世界初の技術に対して、数々の賞が贈られた。トロフィーの陰には、技術者たちの休日返上もいとわない情熱がある。右/通常のアルミ加工で使用する汎用機。これで微細加工を行なえることが中田製作所の強みの1つだ。


難問への挑戦が本業にも役立つ

77年創業の中田製作所は、切削のみによる鏡面仕上げや複合旋盤加工など、精度の高い技術を売りに営業してきた。転機が訪れたのは04年。取引先企業から微細加工の依頼があった。直径20マイクロメートルの穴をアルミ盤にあけるという内容だ。まだ入社4年目で、当時は常務だった中田寛氏は、この難問に挑戦する意志を固めた。当時の社長だった父親の中田良文氏(現会長)から後継者として期待されていることもあり、「自分の力で何か新しいことを始めたい」と日頃から思っていた。

微細加工への挑戦を中田会長に話すと、「通常の業務には絶対に迷惑がかからないようにすること」を条件に許可が下りた。そこでたった3人の微細加工チームを結成。終業後の夜と休日を利用して試行錯誤を始める。今までに世界で誰も成功したことがないだけに、困難を極めた。中田社長が当時を振り返る。

「そんなに小さなドリルがあるかどうかも分からないくらい、すべてが手さぐりの状態でした。刃物メーカーに片っ端から問い合わせて、約1カ月をかけて必要なドリルを見つけました」作業に取りかかってみると、直径20マイクロメートルのドリルは先端が肉眼では見えない。初めて手にしたドリルは箱から取り出した瞬間に折れてしまい、2本目は加工装置に装着した時に折れた。作業を始めてもドリルが素材に対してわずかでも傾けばすぐに折れる。

本業のアルミ加工とは完全に意識を変える必要があった。しかしそんな繊細な作業を続けていくうちに分かってくることもあった。このレベルの加工では人間には感じることができない些細なことが影響を及ぼすのだ。「少しでも振動があってはだめでしたし、気温や湿度も成否に大きくかかわってくると知りました」(中田社長)。これは、本業のアルミ加工の精度を上げるためにも参考になる大きな発見だった。

実績の積み重ねによる無言のアピールが信頼を生む

中田製作所では、穴あけ以外にもマイクロメートル単位の切削加工に挑戦し、工具メーカーなどから不可能といわれていた加工を実現してきた。工作機械製造大手の森精機製作所(名古屋市中村区)が主催する「切削加工ドリームコンテスト」の微細加工部門で、04年、05年、06年に技能賞を3年連続受賞した実績があることからも、その実力は明らかだ。

同社の微細加工技術の特徴は、世界最小径だけではない。自社で開発した治具(じぐ)や装置を使って、汎用のアルミ加工用機械で行なうことも大きなセールスポイントだ。微細加工専用の機械は非常に高額のため、開発費に糸目をつけない大手メーカーしか利用できないうえ、製造コストにも跳ね返る。しかし汎用機を用いる中田製作所では、加工代が専用機を使った場合に比べて安く、顧客企業が利用しやすい。長年アルミ加工を続けてきた技術者の腕と、開発チームの情熱があればこその業である。微細加工の依頼件数は多くはない。

しかし、これから先も微細加工の依頼があれば応じる準備があり、中田社長自身も今まで以上に難解な加工に挑戦していきたいという向上心を持つ。そういった挑戦と実績の積み重ねが、これまで以上に業界内で「微細加工なら中田製作所」という定評を作り上げていくことだろう。

会社概要Company Data
中田製作所
【所在地】〒581-0851
大阪府八尾市上尾町5-1-15
【創業】1977年1月
【TEL】072-996-8621
【資本金】1000万円
【売上高】4億5000万円(07年3月期)
【従業員】25人
【事業内容】アルミ精密部品の切削
加工、検査データ作成業務、開発品
の設計、超微細加工の技術開発
【URL】http://www.nakata-ss.co.jp/

文・上地智

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