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2008年05月22日更新

<4月号特集>1 東日製作所 東京都大田区

品質と信頼性の強みを明確化して
社員の士気と社外の認知度が向上


東日製作所はねじの締め付け力などを管理する工具のトルク機器で圧倒的シェアを誇る。同社は海外展開や新規事業開拓を図るため、ブランドの確立に着手した。その結果、自社の特徴を的確にアピールできるようになり、社員の士気や社外からの評価も高まった。

社内でも不統一だった自社に対するイメージ

ねじのボルトやナットなどの締め付けに使われる工具のトルクレンチで東日製作所は抜群の知名度を持つ。自動車業界では「トルクレンチといえば東日」と言われるほどだ。トルク機器市場における同社の推定シェアは、国内70~80%、海外30~35%。特に日本の主要自動車メーカーに対しては、ほぼ独占的にトルクレンチ
を供給している。

これだけ顧客から圧倒的な支持を受けながらも、「何が顧客から評価されているのか」がこれまで同社ではきちんと検証されていなかった。社員の間でも自社の強みについて、「品ぞろえ」という声があれば、「納期」という声もあり、意見が分かれていた。

この状態では、東日という会社の特徴を社外にうまく説明できない。とりわけ海外でのビジネス展開や国内での新規開拓の際に、東日ブランドを鮮明に打ち出せなければ、圧倒的なシェアや自動車業界で抜群の知名度がありながらも、“ただの”中小企業.と受け取られかねない。

東日のブランド構築は、「東日製作所とは、いったいどんな会社なのか」という自己の存在基盤を検証することから始まった。


東日製作所はトルクレンチの国産化を初めて実現した企業。現在製造しているトルク機器は800種以上に及ぶ。


強みと弱みの分析によりブランドの方向性を決定

同社は2003年2月にブランド委員会を設立。ブランド・コンサルティングを手がける企業数社に協力を仰ぎ、ブランド構築についての提案を受けた。しかし、どの会社のアイデアも、社内向けの意識啓発活動が中心で、社外に東日をどうPRするかについてはまったく出てこなかった。同社の辻修社長が語る。「当社のような中小企業の場合、社内へのブランドの浸透はそれほど難しいことではありません。むしろ社外にどうブランドを発信していくかが重要課題です」

そこでコンサルティング会社ではなく、B to B(企業間取り引き)の広告を手がける広告代理店と手を組むことにした。そして社員やユーザー、販売店などへのアンケートを通じて、東日の強みと弱みをあぶり出していった。

こうして浮き彫りとなった強みは、「品質」「信頼性」「技術力」「品ぞろえ」などである。逆に弱みとして明らかとなったのが、「国際化」「価格」「納期」「非輸送業界での認知度の低さ」などだった。強みは強みとして明確に打ち出し、弱みは補強する必要がある。そこで同社ではブランド構築の方向性として、「最大の強みである製品品質、信頼性イメージの拡張」「東日=トルク機器専業メーカーの認知度の向上」「グローバル企業としての認知度の向上」などを定めた。

さらに東日のブランドをひと言で表すブランドメッセージとして、「Your Torque Partner」を採用。英文字にしたのは、海外展開をにらんでのことである。




右/1人ひとりがブランドブックに書き込んだ「私の約束」を連ねたポスターが社内に貼られている。左/社外向けの製品カタログ「トルクハンドブック」と、全社員に配られた「ブランドブック」。トルクハンドブックは技術資料が充実している。


「私の約束」によって社員の意識が変わった

同社は従来、戦略的な広告活動に取り組んでこなかった。しかしブランド展開後は、ユーザーの購読紙誌を調査し、媒体を絞り込んだうえで、企業広告の掲載を開始した。またカタログ類のデザインやロゴを統一することで、東日ブランドのイメージの浸透を図った。さらにはホームページを充実して、東日の経営姿勢をインターネットからも発信できるようにした。

一方、社内的な啓もう活動としては、03年11月に「東日ブランド宣言」を策定。社員には東日の企業価値や社会的使命を記した手帳サイズの「ブランドブック」を配布した。このブランドブックには、東日ブランドを高めるために自分は何をするべきか、「私の約束」を書き込む欄がある。「自分は何をするのか」を書き込むことで、社員1人ひとりに東日のブランド意識を根づかせていこうとしたわけだ。

辻社長は、この「私の約束」は狙い通りの効果があったと語る。「営業部門は電話対応やクレーム対応がていねいになり、工場では安全性に問題がないわずかな傷さえ見逃さなくなりました。それぞれの社員が、東日ブランドを高めるための自分の役割を理解し始めたからです」

社員の意識変化による影響は、社外からの東日製作所に対する評価にも表れた。岩崎昭彦WEB・マーケティング室室長が語る。「ブランド展開後、ユーザーや代理店などに、ブランディング活動の効果測定のためのンケートを実施しました。その結果、お客様は当社に対して、『営業マンの対応がいい』『販売力が強い』といったイメージが上がっていることが分かりました」また弱みとされた「非輸送業界での認知度の低さ」についても、非輸送部門での売り上げが伸びるなど、弱点を補強しつつある。

「東日ブランドは確実に社内外に浸透してきています。今後はせっかく構築したブランドが形骸化しないように維持し続けることと、社外へのPR活動を堅実に続けていくことが大切と考えています」(辻社長)

会社概要 Company Data
東日製作所
【所在地】〒143-0016
東京都大田区大森北2-2-12
【設立】1949年5月
【TEL】03-3762-2451
【資本金】3億円
【売上高】非公開
【従業員】152人(パート含む)
【事業内容】手動式・動力式トルク機器、機械式・電子式トルク計測機器の製造販売
【URL】http://tohnichi.jp/

文・長谷川敦

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