ウェブ ベンチャー・リンク
WEB VENTURE LINK

経営情報誌「月刊ベンチャー・リンク」の週刊ウェブマガジンです
自ら人生を、ビジネスを、明日を切り拓こうという人を応援します

2008年05月15日更新

<4月号特集>成功へと導く4つの方程式/2

規模は小さくても、特定の分野で抜群の知名度を得て収益を伸ばす企業がある。ブランドの確立は、激しい市場競争を勝ち抜く重要な戦略だ。また、小回りが利く分、大企業より有利な点もある。中小企業がブランド戦略で成功する4つの方程式を解説する。

海上泰生 中小企業金融公庫総合研究所
Profile
うなかみ・やすお

1986年早稲田大学法学部卒、同年中小企業信用保険公庫入庫。92年中小企業庁長官官房、98年通商産業省(現経済産業省)貿易局、99年OECD輸出信用専門家会合委員、04年中小公庫証券化支援部上席調査役を経て、06年から中小公庫総合研究所産業・地域・政策研究グループのグループ長に。埼玉大学大学院非常勤講師。

方程式2
ポジショニングとコンセプトを明確に

ブランドづくりには大きく6つのプロセスがある。特に重要なのが次の1と2の過程だ。

1 戦略的ポジショニングと方向性の決定

「ポジショニングとは、自社がどの市場でどこの位置取りをすべきか、どの方向に舵を切ればよいかを判断すること」と海上氏は説明する。客観的に見て自社は今、どのような位
置づけにあるのかを正確に把握することから始まる。

でんかのヤマグチ(東京都町田市)は、配達や修理などの付加サービスを徹底した経営手法で知られる。この「ヤマグチブランド」ができあがったのも、最初のポジショニングが決め手になっている。「同社は、90年代に大手家電量販店が商圏内に進出したことを機に、生き残りをかけた戦略を練り上げました。その結果、顧客が『ヤマグチで買ったので安心だ』とブランド価値を見出してもらえるような経営を実践することにしたのです」(海上氏)
経営者が市場環境と自社の現状を認識し、自社の強みは何か見極められるか否かが、企業の明暗を分けるわけだ。




2 コンセプトとターゲットの明確化

コンセプトとは、「誰に何を提供していくか」を指す。それを決めるにはまず顧客ターゲットを絞らなければならない。ヤマグチは、「自動車で買い物に出かける若いファミリー」は顧客層から外した。そのうえで、商圏内で頻繁に買い物をする1万5000人にターゲットを絞った。それらの重要顧客には電池1本でも配達するほか、配達員が訪問した際に顧客の依頼があれば郵便物の投函や宅配便の手配を代行するといった“御用聞きサービス”にも努めることをコンセプトとした。この事例から海上氏は、「誰を相手にどう商売をするのか、しっかり決めることが大事です。万人を相手にしていては、ブランドのコンセプトが明確になりません」とアドバイスする。




3 イメージの確立とメッセージの発信

次は自社のメッセージを顧客に伝えるプロセスだ。石川県珠洲市にある温泉旅館ランプの宿は、メッセージの発信にインターネットや旅の情報誌などを利用した。同館はもともと、「葭ケ浦(よしがうら)鉱泉旅館」という名の湯治場で、地元の利用者に支えられていた。だが、近年は来客数が減少し、何もせずにいればさびれるだけと危機感を抱く。そこで、全国にアピールして客を呼び込むことにした。雑誌に広告などを掲載する際には、朝日や夕日が映える写真を使うなど目にとまりやすいものを選び、別棟を建てる時も色や景色に配慮した。名称も「ランプの宿」と、分かりやすく変えた。それらのイメージチェンジと情報発信が功を奏し、今では予約の取りづらい人気の宿として知られるまでになった。

クチコミも効果が高い。海上氏は「クチコミではよい物は費用なしで評判が広がっていきます。広告などに比べても、利用者の声が強い説得力を持つ点も魅力です」と高く評価する。クチコミで評判が広がるには分かりやすく説明しやすいことが重要だ。ランプの宿は、色、雰囲気、ネーミングを統一することで、ブランド戦略に成功した。

4 従業員の姿勢が価値を左右する

ブランド戦略を従業員に徹底することも重要だ。「顧客に接する従業員の姿勢が伴わないと、どんなブランドのイメージも台無しになります。まず、全従業員にブランドコンセプ
トを浸透させていくことが必要です」(海上氏)

利用者にある種の“感動"を提供することも重要なポイントだ。「ヤマグチの場合は、エアコンのフィルターが汚れていれば掃除し、郵便物まで出してくれる徹底ぶりが顧客の感動を呼び、『ヤマグチ』のブランド価値が顧客に広く認知されていくのです」(同)

5 慢心せず価値向上を常に追求

石屋製菓(札幌市西区)によるチョコレート菓子「白い恋人」の賞味期限改ざん、赤福(三重県伊勢市)や船場吉兆(大阪市中央区)の食品偽装問題。これらはブランド力が抜群であるがために慢心し管理がおろそかになった側面が否めないだろう。海上氏は「ブランドを築いたあとにこそ信頼を維持する努力が求められるでしょう。例えば、顧客や社員にアンケート調査を実施して、ブランドの価値に変動が生じてないか、時代に遅れていないかなど、常に注意しておくべきです」と力説する。

6 時代の先を見通す力を磨く

世の中はどんどん変化している。顧客のニーズを探り、商品・サービスに反映することで強固なブランドを作り上げていかなければならない。しかし、「顕在化しているものでは遅い」と海上氏は言う。

洋菓子のブールミッシュ(東京都中央区)は「1地区に1店舗」の限定出店でブランドを維持している。もともと百貨店に出店することでブランド価値を高めてきたが、従来の「ブールミッシュ」ブランドに加え、上位ブランドの「ガトー・ド・ボワイヤージュ」も発表。従来ブランドの価値を維持しつつ、新ブランドで次なるニーズを喚起している。海上氏は「まだ目に見えない芽を探し出すのが経営者の眼力」と言う。ブランドを高め維持していくには経営者のセンスも問われる。


左/でんかのヤマグチは利用者を感動させるサービス営業に徹し、大手家電量販店との差別化に成功した。中央/「行ってみたい」と思わせるイメージをメディアに発信して人気を集めたランプの宿。右/ブールミッシュは、従来ブランドの「ブールミッシュ」(右)に加え、新ブランド「ガトー・ド・ボワイヤージュ」(左)を立ち上げ、新市場の開拓を図る。

次へ>>成功へと導く4つの方程式/3



関連記事

このページのTopへ

月刊ベンチャー・リンクとは?

定期購読のご案内

メールマガジン

毎週、記事が更新されると、目次とアウトラインをメールでお知らせします。

Mail Magazine

好評!連載記事