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2008年05月15日更新

<4月号特集>企業経営者の重要ポイント

「やる気」と「強み」「市場対話」が企業経営者の重要ポイント

自社ブランドの確立に成功し、大手の下請けから脱した中小メーカーは、少なくない。その道は決して容易ではないが、まずはきっかけをつかむことが成功の第一歩となる。ブランドづくりのコツを代表的な4つのパターンに分け、実例とともに解説する。

田廻良弘 横浜商科大学商学部教授
【プロフィール】
profile
たまわり・よしひろ

1941年生まれ。64年早稲田大学商学部卒。同年横浜銀行に入行。3カ所の支店長を歴任後、浜銀総合研究所経営相談センター長に就任。04年より現職。主な著書に『職場維新』(東京経済)、『中小企業のことがよく解る本』(神奈川新聞社)など。ホームページ「TAMAさんの元気の出る中小企業館」
http://www.tama3.com/


自社の強みの再確認と情報感度の向上が重要

中小企業の経営者から、明るい話題がなかなか聞こえてこない。閉塞感漂う現状を打破するには何をすべきか。中小企業の経営戦略に詳しい田廻良弘・横浜商科大学教授は、ずばり指摘する。
「製造業者は下請けに甘んじている限り、明るい将来展望は描けません。中小企業といえども、自社のブランドを立ち上げ、経営の自立を目指すことが肝要です。ブランド戦略は、中小企業の生き残り戦略そのものなのです」

ブランドづくり成功のため、田廻教授は3つのポイントを挙げる。第1は「経営者のやる気」。何としてでも自社ブランドを生み出すとの強い意思を経営者が持たなければ、
目標到達は望めない。

第2は「自社の強みと経営資源の棚卸し」。原点に立ち返って自社が得意とするのは何かを再確認し、人材や製品、施設、店舗、機材といった経営資源を見直す。効率よくブランドを生み出すために必須の作業だ。
第3は「市場との対話」。ブランドづくりのアイデアを得るため、頭の中のアンテナの感度を良好にする必要がある。消費者の生の声を聞くことも大切だ。既存の製品やサービスに対する不満や要望は、絶好のヒントとなる。他業界の人の話を聞くのも市場分析に役立つ。
「ブランドづくりはたやすくありませんが、きっかけをつかめば成功への糸口となります」と、田廻教授は指摘する。次に代表的な4社の事例を紹介しよう。

パターン1
顧客側に立つ
山井商店(現スノーピーク)は1958年に新潟県三条市で創業した金物問屋。創業者の山井幸雄社長は登山家で、使い勝手の悪い登山用品に不満を抱いていた。59年、取引先の金物メーカーに自分が考えた登山用品の製造を依頼し、自社商品として全国に売り出す。63年にブランド名の「スノーピーク」を商標登録し、自社のブランド製品とする。

76年には自社工場を設立。卸業からオリジナルブランド展開を行なうメーカーへと転身した。「永久保証」を売り文句にした高品質製品は、多くのアウトドアファンに支持された。製造販売にとどまらず、定期的にキャンプイベントを開くなどして、ファンの囲い込みにも成功する。96年には社名をスノーピークに変更。質の高い製品と手厚いサービスで築いたブランド力は絶大で、欧米やアジア、オセアニアへの進出も果たしている。
【スノーピーク 新潟県三条市三貫地958 TEL 0256-38-1110】


スノーピークが開催するキャンプイベントを楽しみにしている人は多く、毎回大勢のユーザーが集まる。

パターン2
海外で名を売り逆輸入1932年創業の佐藤繊維は、ニット製品の製造を手がけてきた。だが近年、中国からの安価な製品が市場に出回るようになると、大手アパレル会社からの発注が急減した。価格競争になると未来はないと考えた佐藤正樹社長は、差別化商品として手づくり感覚の高級自社ブランド「M.&Kyoko」を立ち上げたものの、期待に反して引き合いがあまりなかった。

そこで、発想を転換し、01年から市場を海外に移す。商品販売だけでなく、米ニューヨークの繊維総合展示会に出品して知名度アップにも努め、海外で高い評価を得た。その評判が日本にも伝わり、M.&Kyokoブランドが浸透。06年には東京都渋谷区にショールームをオープンさせるまでに成長した。
【佐藤繊維 山形県寒河江市元町1-19-1 TEL 0237-86-7720】


米ニューヨークでの展示会の様子。「M.&Kyoko」ブランドは、海外から評判が高まっていった。

パターン3
目先を変えてみる
井浦設計製作所は2次下請けとして農機部品を製造していた。自社ブランド誕生のきっかけは、井浦忠社長(当時)が目の当たりにした介護の苦労。父の介護をする母の
負担を軽くしたいと、1978年に「ねがえりベッド」を作った。以来、福祉機器の開発も開始。農機部品製造は売り上げの大半を占めていたが、大きな発展は望めないと考え、83年に福祉・介護機器の専門メーカーに転進した。

農機具製造の技術を生かして新商品を開発したところ、使い勝手のよさから高い評価を受ける。特に、介護や医療の現場で使う「乗せ替え装置付き搬送機」では推定国内シェア7~8割だ。94年には社名を「いうら」に変更。いうらブランドの福祉・介護機器は、利用者にやさしい製品と広く認知されている。
【いうら愛媛県東温市南野田410-6 TEL 089-964-8880】


「横乗り車椅子」は横から移り乗ることができ、利用者と介護者の両方にとって便利。

パターン4
意匠を凝らして差別化
北海道旭川市にある家具メーカーのカンディハウス。1968年の設立で、当時の社名はインテリアセンターだった。当初から「デザイン性の高い家具づくり」を目指したのは、暮らしの道具としての家具に、上質なデザインという付加価値を付けてブランドを確立しようと考えたからだ。

材料や意匠にもこだわった。価格は他社製品よりも高くなり、業績が伸び悩んだ時期もあったが、次第に「よいデザインの家具メーカー」としての評判が高まり、売上高を伸ばしていった。
その後、2つあったブランドを「カンディハウス」に統一。世界的に著名な彫刻家の流ながれ政之氏など、国内外の優れた社外デザイナーを起用した製品を生み出し、さらに人気を高めていく。05年には社名をカンディハウスに変更。今や消費者だけでなく、建築家やデザイナーからも注目を浴びるブランドになっている。
【カンディハウス 北海道旭川市永山町6丁目 TEL 0166-47-1188】


旭川市のデザイナー、朝倉芳満氏と共同開発した人気のダイニングセット。

商品を生かすも殺すもネーミング次第
ブランドに限らず、商品やサービスの売れ行きに大きな影響力を持つのがネーミング。それを証明する例がある。寒天メーカーの北原産業(長野県茅野市)は、ネットショップを立ち上げるに当たり、「信州寒天本舗」という店舗名をつけた。ところが反応はいまひとつだった。どうしたものかと考えていたところ、「寒天を食べてダイエットしている」という顧客の声を北原重信社長が耳にする。そこで店舗名を「寒天ダイエット」に変えたところ注文が殺到した。このようにブランドや商品の名称は売れ行きを大きく左右する。消費者の関心を引かないネーミングのせいで眠っている商品はないか、確認してみてはいかがだろうか。
【北原産業 長野県茅野市宮川4000 TEL 0266-72-2397】

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