ウェブ ベンチャー・リンク
WEB VENTURE LINK

経営情報誌「月刊ベンチャー・リンク」の週刊ウェブマガジンです
自ら人生を、ビジネスを、明日を切り拓こうという人を応援します

2008年05月15日更新

<小さな巨人>鶏卵選別包装システムのトップメーカー

洗浄からパック詰めまで1時間に6万個の卵を処理

京都府長岡京市発 ナベル

南部邦男社長【プロフィール】
南部邦男社長
1948年京都府生まれ。72年立命館大学文学部卒。64年に父とともに家電製品の生産ライン制御機器製作メーカーとして南部電機製作所を創業。84年社長に就任。89年ナベルに社名変更。07年度『知財功労賞経済産業大臣表彰』受賞。


全自動鶏卵選別包装システム「オートローダー」は、養鶏場からトレーで搬入された原料卵を横スライド方式で洗卵機のコンベアに供給する。

市場に出回る卵の75%が同社のシステムから出荷

ナベルの全自動鶏卵選別包装システムはまさに“卵のパック詰めロボット”だ。養鶏場から搬入された卵はベルトコンベアに載せられ、列を整えながら洗浄機へと流れていく。洗浄、乾燥、殺菌を済ませ、検卵過程へと送り込まれる。綿棒のような形のハンマーで素早く卵をたたき、音感センサーでヒビがないかを検知した後、高速画像処理で汚れを検査し、特殊光を照射してヘモグロビン反応で血卵を検出する。

検査を終えると、選別・包装に入る。卵が計量器に載るや否や、高速移動フィンガーが受け取り、大きさと重さで区別してカゴ状のストック部にやさしく投入する。そのたまり具合を高速知能ロボットが検知し、所定量に達すると即座にストック部を移動して6パック分の卵を一挙に充填する。

このシステムの最大処理速度は1時間に6万個。重量にして3.6トンの卵をパック詰めする。その様子はナベルのホームページの動画で閲覧できるが、スピードと卵を扱う触手のやさしさ、正確さに舌を巻く。

市場に出回る卵の約75%はナベルのシステムでパック詰めして出荷されている。卵の取り扱いがやさしくて損傷が少ないと定評があり、ヒビ卵、汚卵、血卵を排除するために独自開発した非破壊検査装置は世界でトップクラスの性能を誇る。アジア、オセアニア、ヨーロッパ、北米などの25カ国で納入実績があり、世界での市場占有率は20%に達し、オランダ、アメリカのメーカーに次ぎ第3位と健闘している。

ナベルの創業は1964年。大手家電メーカーの下請けとして家電製品の制御機器の生産からスタートした。転機は75年。卵パックの溶着装置を開発し、新規参入した。79年には全自動選別包装システムが完成。どちらも国内初の快挙だ。以来、鶏卵関連の機械装置メーカーの草分けとして、卵の流通現場を支えてきた。
南部邦男社長は、「鶏卵業界の工務部門に徹する」ことが、ともに歩んできた養鶏業界に対する使命だと考えている。


右/ヒビ卵自動検出装置は、機械上を回転しながら進む卵の表面を、ハンマーがやさしく16回打診し、ヒビ卵特有の鈍い音をセンサーが検知する。
中央/自動血卵検出装置は、卵に特殊光を照射し、ヘモグロビンに反応する光の波長を解析して血卵を検出。肉眼では見えない微細な血も見逃さない。
左/卵を扱う触手は人間工学に基づいて設計された。人の指のようにやさしい卵は「フィンガー」と「バケット」に包まれ、流れるように移動する。



“世界一厳しい”日本の鶏卵業界の要求に応える

「卵の選別なんて簡単だと思っていました」開発当初の見込みを、南部社長は正直に明かす。家電製品の制御機械で実績を上げてきた自負があったからだ。ところが、いざ開発に取り掛かると、ほかの工業製品とは大違い。デリケートで個体差がある卵を扱う機械は、人の手の微妙な感覚に極限まで近付けることが求められる。そのうえで、人の手を超えるスピードと精度を極めねばならない。南部社長は、試行錯誤を繰り返した。苦労の末、79年に完成させた自動選別包装システム1号機も、100点満点とは言い難いものだった。時間当たり処理量の少なさなど、多くの課題が残されていたからだ。

鶏卵は「物価の優等生」と呼ばれる。日本の鶏卵業界は常に消費者の厳しい目にさらされており、機械メーカーに対する評価も厳しかった。「それでも鶏卵業界は温かく迎え入れてくれ、国内メーカーをがまん強く育ててくれました」と南部社長は語る。

軌道に乗ってくると、今度は「こんな機能を加えてほしい」「検卵を自動化できないか」など、様々な要望が寄せられた。例えば、卵1個ずつの重さではなく、1パック全体の卵の重量でパック詰めする「定重量パック」の仕組みは、「特定サイズの卵ばかりが余って困る」という生産者の声から生まれた。1パックの合計重量と個数を指定すると、詰める卵の組み合わせを高速計算して、どのパックも同じ重量にそろえる。この定重量パックには、「従来は微妙な重さの違いではじかれていた卵も市場に出せるようになった」と鶏卵業者から喜びの声が寄せられた。

主力商品のヒビ卵自動検査装置は、重さ0.8gの多角的連続ハンマーが、卵を瞬時に16回たたき、音響解析でヒビの有無を見分ける。目視では発見できないヒビも判明でき、検出率95%を誇る。開発のきっかけは、「ヒビ卵の検査を自動化できないか」という養鶏業者の声だった。それまでの光を透過させて目視で行なう検査は、手間がかかるうえ、判断に個人差が出てしまう。当初は画像処理検査を検討したが、目に見えないヒビには対応できなかった。解決のヒントは生産現場にあった。卵をたたく音でヒビの有無を見分ける熟練者に出会い、その技術を機械化したのだ。

ヒビ卵自動検査装置は数え切れないほどの失敗を経て、完成まで7年の歳月を費やした。それでも社員が誰ひとりとして音を上げなかったのは、「鶏卵業界が当社の技術に期待をして、完成を待ち望んでいる」という実感があったからだ。
「世界一厳しい日本の鶏卵業界の声に背中を押され、技術を磨いてきました。実際、生産現場には宝の山がありますからね」と南部社長は言う。

中国と南米での事業を強化し世界市場占有率50%を目指す

国内外の特許は出願377件、登録71件と、ナベルでは知的財産の管理に力を入れている。それは製品が軌道に乗り始めた86年、アメリカ企業から特許権侵害で提訴されたことがきっかけだ。和解に多大な時間と費用を要したことで、知財管理の重要性を痛感した。売り上げは約32億円(07年3月期)。03年にはマレーシアに現地法人を設立した。世界市場占有率50%を目指し、今年から中国と中南米で事業展開を強化する予定だ。機械を販売するだけでなく、現地の優秀な企業とパートナーを組み、メンテナンス(保守・管理)体制の充実を図っている。

目指すは世界最速の処理能力。現システムの3倍の速度となる1時間18万個の処理を目標に研究開発を進めている。「今後も鶏卵業界の声に応え、世界の最先端技術を取り込んで、『世にないモノづくり』に挑戦します」南部社長は“新たな価値創造”へ向けて今後も突き進む。

【会社クレジット】
ナベル

【所在地】〒617-0836 京都府長岡京市勝竜寺八ノ坪1-6
【TEL】075-958-1880(代表)
【設立】1977年3月
【資本金】8200万円
【売上高】32億6000万円(07年3月期)
【従業員数】112人
【事業内容】鶏卵の自動洗浄選別包装装置、非破壊検査装置の開発、製造、販売、メンテナンス
【URL】http://nabel.co.jp

文・西元弘美


関連記事

このページのTopへ

月刊ベンチャー・リンクとは?

定期購読のご案内