2008年05月15日更新
<シニアベンチャー>化学物質と環境のコンサルタントとして独立
EUの化学物質規制対応の
コンサルタント事業創業
●テクノヒル株式会社 代表取締役
知恵ネット有限責任事業組合 代表組合員業務執行者
(社)産業環境管理協会 REACH登録支援センター スーパーバイザー
環境カウンセラー・EA21審査人
鈴木一行
<すずき・かずゆき>昭和30年生まれ。昭和55年、大学の化学科卒業後、化学品専門商社入社。以来約6年の欧州駐在を含め、26年間化学品の輸出入や国内販売などに携わる傍ら、社外で多数の学会や環境関連の研究会で研鑽を積む。ナノテクなど新素材開発、化学品の国内外の流通や法規・規制分野に明るい。平成17年末退職、翌年2月、資本金400万円のテクノヒル(株)と出資金330万円の知恵ネットLLPを立ち上げ、化学品と環境のコンサルティング事業に着手。
http://www.chienet.jp
※LLP…有限責任事業組合(日本版LLP)。民法上の任意組合と株式会社のそれぞれの長所を取り入れた事業体で、有限責任制、内部自治原則、構成員課税制度の特徴をもつ。
文・写真:川井眞理(ピーエーピー・ジャパン)
コンサルタント事業創業
●テクノヒル株式会社 代表取締役知恵ネット有限責任事業組合 代表組合員業務執行者
(社)産業環境管理協会 REACH登録支援センター スーパーバイザー
環境カウンセラー・EA21審査人
鈴木一行
<すずき・かずゆき>昭和30年生まれ。昭和55年、大学の化学科卒業後、化学品専門商社入社。以来約6年の欧州駐在を含め、26年間化学品の輸出入や国内販売などに携わる傍ら、社外で多数の学会や環境関連の研究会で研鑽を積む。ナノテクなど新素材開発、化学品の国内外の流通や法規・規制分野に明るい。平成17年末退職、翌年2月、資本金400万円のテクノヒル(株)と出資金330万円の知恵ネットLLPを立ち上げ、化学品と環境のコンサルティング事業に着手。
http://www.chienet.jp
※LLP…有限責任事業組合(日本版LLP)。民法上の任意組合と株式会社のそれぞれの長所を取り入れた事業体で、有限責任制、内部自治原則、構成員課税制度の特徴をもつ。
文・写真:川井眞理(ピーエーピー・ジャパン)
自分らしい仕事をしたいと考え、起業したシニアにエールを送るコーナーです。
社外で新しい業界および技術情報に接する機会の多かった鈴木さんは、欧州化学品に関する規制強化に対応すべく化学物質管理と技術開発のコンサルタントとして独立しました。
社外で新しい業界および技術情報に接する機会の多かった鈴木さんは、欧州化学品に関する規制強化に対応すべく化学物質管理と技術開発のコンサルタントとして独立しました。
同時に性格の違う2つの組織を立ち上げる
――株式会社と有限責任事業組合を同時に立ち上げられたそうですね。
テクノヒルは化学技術と環境のリスク管理に関するコンサルタント事業および新規開発の支援業務を、知恵ネットはインターネットを活用しての化学物質・環境に関するコンサルタント事業を行っています。具体的には、前者は放射線測定機器の輸入販売や化学ビジネス開発マーケティングの支援業務を行い、後者は経験者の知恵をネットワーク化してセミナーなどを行なっています。
現在、経済産業省管掌の公益法人である(社)産業環境管理協会※REACH登録支援センターで国内外の化学品規制のセミナーおよびREACH規則の予備登録および登録支援業務を行なっています。
※REACH(リーチ/化学品の登録、評価、認可、制限に関する規則)…2007年に発効されたEU(欧州連合)における新しい化学物質規制。既存の約3万種の化学品および製品の最終納入先がEU域内にある企業は化学物質登録が求められる。
――なぜ同時に性格の違う2つの組織を立ち上げられたのですか。
本当は経験者の知恵を集めて中小企業の環境・技術支援を行うNPOを作りたかったんですが、いろいろ検討して自分の想いを実現するにはLLPが一番相応しいと判断しました。しかし、LLPには資金的に規模を大きくできない弱点があり、また物を介在しないと売り上げを上げるのが難しいことから、これらの弱点を補うために営利企業と両輪でやることにしたんです。
――社内で新規事業の提案をしたのに通らなかったのが起業のきっかけと伺いましたが。
環境規制は欧州を発信基地として世界的にどんどん強化されており、2006年7月の※RoHS(ローズ)指令に続き、2007年6月には化学物質管理規則であるREACHが施行されました。
また新素材開発もナノテクをはじめとして変化しています。日本の産業を支えている約3000社の化学メーカーのうち、特徴のある企業1000社以上が関西に集中しています。規制が厳しくなると新たな対応を迫られて一番しんどくなるのは中小企業なので、会社に新規部門を作って対応することを提案したのですが受け入れられなかったので、「それなら自分でやろう」と思いまして。
※RoHS指令…欧州有害物質規制
――2つの組織を立ち上げたら、思惑通り事業はスムーズに動き始めたのですか?
いいえ(笑)。日本ではコンサルタントとか情報サービス業に対して対価を払う慣習がなく、物を介在させないと売り上げをあげるのは難しいのです。当初テクノヒルでは新規部門・新規事業を考えている企業の調査や相談を受けていたのが、これにはすごく時間がかかります。費用対効果の面で課題があったところへ、たまたま在職中に付き合いのあった世界トップのテロ対策などに特徴のある放射線測定機器メーカーから日本での窓口になってくれと頼まれまして……。
――タイミングよく“物を扱う仕事”が向こうから現われたのですね。
すでに国内に販売代理店制度ができていたので、最初はそのメーカーの日本法人のような形で動き出しました。今は総代理店です。僕は業界に8年ぐらいいたので技術はもちろん、商習慣やお客さんのこともよく知っています。ですから、そのメーカーは技術的に僕らのサポートがどうしても必要だっただろうと思います。カタログなどもうちで制作しています。

商社時代、化学産業でお世話になった。「恩返しするためにはどうすればいいか」と考えたのが起業の原点になった鈴木さん。趣味はヨット
日本企業には死活問題
――「知恵ネット」のほうはどんな手応えでスタートしたのですか。
最初は独自にネットワークを作り、技術情報提供からスタートしたのですが、仕事そのものが国策に近くなり、大変な仕事であることが予想されました。特にREACHの施行により年間1トン以上のEU域内製造者・輸入者、域外製造者は、欧州化学品庁に「登録」しなければ事業継続が不可能となりました。特に日本の企業は欧州内に拠点がなければ唯一の代理人を決め、予備登録から各種書類の準備が必要となり、登録を行わないと多数の日本企業には死活問題となる可能性があります。
――そこで公益団体と提携、スタッフとして登録支援事業をやっておられるのですね。
産業環境管理協会ではセミナーなども実施していて、僕はそこで講師もしています。同協会との関わりはやはり前職時代、委員として出席していたことから知り合った人に「(独立したなら)セミナー運営をやってくれるか?」と打診されたのがきっかけです。独自にやるよりは、やはり大きな組織と組んで仕事をするほうが大きな仕事ができるので、そこから自然に登録支援など連携、協業したになったというわけです。
――最後に今後の目標などを教えてください。
化学産業業界では前職だけでなく学会、工業会などで多くの人に育ててもらい、大好きです。ただ今後大きなパラダイムシフトが起こる予感がありました。起業した目的はIPOやM&Aではなく、好きな仕事でずーっと技術の深堀をしたいと思ったからですが、技術的に多少野心をもっている人間にとっては、ある程度企業サイズが大きくないとお金を回収できません。だから国がベンチャー企業を煽るなら、しっかりした企業にはもう少し育てる資金的な支援をして欲しいですね。
ちなみに今期の売り上げはテクノヒルが8000万円、知恵ネットが3000万円ぐらい。利益計画は1期目赤字、2期目ゼロで、3期目で累積赤字を消せるのが一番いいですが、今は事業規模の拡大に注力しているので1期ぐらい遅れるかもしれません。利益の仕組みそのものは相当強く作ってきたので、今後の大きな拡大に期待できると確信しています(笑)。
――株式会社と有限責任事業組合を同時に立ち上げられたそうですね。
テクノヒルは化学技術と環境のリスク管理に関するコンサルタント事業および新規開発の支援業務を、知恵ネットはインターネットを活用しての化学物質・環境に関するコンサルタント事業を行っています。具体的には、前者は放射線測定機器の輸入販売や化学ビジネス開発マーケティングの支援業務を行い、後者は経験者の知恵をネットワーク化してセミナーなどを行なっています。
現在、経済産業省管掌の公益法人である(社)産業環境管理協会※REACH登録支援センターで国内外の化学品規制のセミナーおよびREACH規則の予備登録および登録支援業務を行なっています。
※REACH(リーチ/化学品の登録、評価、認可、制限に関する規則)…2007年に発効されたEU(欧州連合)における新しい化学物質規制。既存の約3万種の化学品および製品の最終納入先がEU域内にある企業は化学物質登録が求められる。
――なぜ同時に性格の違う2つの組織を立ち上げられたのですか。
本当は経験者の知恵を集めて中小企業の環境・技術支援を行うNPOを作りたかったんですが、いろいろ検討して自分の想いを実現するにはLLPが一番相応しいと判断しました。しかし、LLPには資金的に規模を大きくできない弱点があり、また物を介在しないと売り上げを上げるのが難しいことから、これらの弱点を補うために営利企業と両輪でやることにしたんです。
――社内で新規事業の提案をしたのに通らなかったのが起業のきっかけと伺いましたが。
環境規制は欧州を発信基地として世界的にどんどん強化されており、2006年7月の※RoHS(ローズ)指令に続き、2007年6月には化学物質管理規則であるREACHが施行されました。
また新素材開発もナノテクをはじめとして変化しています。日本の産業を支えている約3000社の化学メーカーのうち、特徴のある企業1000社以上が関西に集中しています。規制が厳しくなると新たな対応を迫られて一番しんどくなるのは中小企業なので、会社に新規部門を作って対応することを提案したのですが受け入れられなかったので、「それなら自分でやろう」と思いまして。
※RoHS指令…欧州有害物質規制
――2つの組織を立ち上げたら、思惑通り事業はスムーズに動き始めたのですか?
いいえ(笑)。日本ではコンサルタントとか情報サービス業に対して対価を払う慣習がなく、物を介在させないと売り上げをあげるのは難しいのです。当初テクノヒルでは新規部門・新規事業を考えている企業の調査や相談を受けていたのが、これにはすごく時間がかかります。費用対効果の面で課題があったところへ、たまたま在職中に付き合いのあった世界トップのテロ対策などに特徴のある放射線測定機器メーカーから日本での窓口になってくれと頼まれまして……。
――タイミングよく“物を扱う仕事”が向こうから現われたのですね。
すでに国内に販売代理店制度ができていたので、最初はそのメーカーの日本法人のような形で動き出しました。今は総代理店です。僕は業界に8年ぐらいいたので技術はもちろん、商習慣やお客さんのこともよく知っています。ですから、そのメーカーは技術的に僕らのサポートがどうしても必要だっただろうと思います。カタログなどもうちで制作しています。

日本企業には死活問題
――「知恵ネット」のほうはどんな手応えでスタートしたのですか。
最初は独自にネットワークを作り、技術情報提供からスタートしたのですが、仕事そのものが国策に近くなり、大変な仕事であることが予想されました。特にREACHの施行により年間1トン以上のEU域内製造者・輸入者、域外製造者は、欧州化学品庁に「登録」しなければ事業継続が不可能となりました。特に日本の企業は欧州内に拠点がなければ唯一の代理人を決め、予備登録から各種書類の準備が必要となり、登録を行わないと多数の日本企業には死活問題となる可能性があります。
――そこで公益団体と提携、スタッフとして登録支援事業をやっておられるのですね。
産業環境管理協会ではセミナーなども実施していて、僕はそこで講師もしています。同協会との関わりはやはり前職時代、委員として出席していたことから知り合った人に「(独立したなら)セミナー運営をやってくれるか?」と打診されたのがきっかけです。独自にやるよりは、やはり大きな組織と組んで仕事をするほうが大きな仕事ができるので、そこから自然に登録支援など連携、協業したになったというわけです。
――最後に今後の目標などを教えてください。
化学産業業界では前職だけでなく学会、工業会などで多くの人に育ててもらい、大好きです。ただ今後大きなパラダイムシフトが起こる予感がありました。起業した目的はIPOやM&Aではなく、好きな仕事でずーっと技術の深堀をしたいと思ったからですが、技術的に多少野心をもっている人間にとっては、ある程度企業サイズが大きくないとお金を回収できません。だから国がベンチャー企業を煽るなら、しっかりした企業にはもう少し育てる資金的な支援をして欲しいですね。
ちなみに今期の売り上げはテクノヒルが8000万円、知恵ネットが3000万円ぐらい。利益計画は1期目赤字、2期目ゼロで、3期目で累積赤字を消せるのが一番いいですが、今は事業規模の拡大に注力しているので1期ぐらい遅れるかもしれません。利益の仕組みそのものは相当強く作ってきたので、今後の大きな拡大に期待できると確信しています(笑)。



