2008年05月15日更新
<新商売>台北市・しゃぶしゃぶ・すき焼き店
現地取材!
台湾駐在員から
「しゃぶしゃぶ・すき焼き店」経営者へ
●台北市「平成屋」董事長 長谷川 勉さん
台湾駐在員から
「しゃぶしゃぶ・すき焼き店」経営者へ
●台北市「平成屋」董事長 長谷川 勉さん
アジアでももっとも親日的といわれる台湾。南国特有のおだやかな雰囲気が流れる台北市の街角には、日本からの若い女性旅行者の姿もチラホラ。マンゴーフルーツを使った人気スイーツ店が周辺に並ぶ永康公園の前にある台湾テイストを加えた独特の日本風しゃぶしゃぶ店「平成屋」は、現地の人にも旅行者にも好評を博している。日本人経営者、長谷川勉さんに開業から今日までの歩みを聞いた。

「人生は一度かぎり、自分の力で何かやりたい」
「私は、28年間のサラリーマン生活の最後の4年を台湾駐在員として過ごしました。そのなかで、台湾のもつゆったりした雰囲気、人情、そして食べ物が大好きになりました。台湾での暮らしを楽しむなかで、こちらで働く日本人料理長と友人になり、いろいろ語り合い『台湾で独立するなら、外食産業がいい』とアドバイスされたのです」(長谷川さん)
日本風しゃぶしゃぶ・すき焼き店、平成屋の経営者、長谷川勉さんは、サラリーマンとして11年前から4年間駐在した台湾で独立を決意。いったん帰国して資金準備をしてから、開業準備に入った。「人生は一度かぎり、自分の力で何かやりたい」との思いから、未体験の外食店経営へ時間をかけ、思案を重ねていった。
「料理を専門の仕事としてやったことがなかったので、お客さんが自分で材料を使って作るすき焼きかしゃぶしゃぶがいいと思い浮かんだのです。……4年間の駐在生活のなかで得た経験と感覚から、“日本式”でも“台湾風”でもない、現地の人にも喜ばれる味を提供したいと考えました」(同)
あえて知らない土地で開業
――顧客に支持されてから中心市街地へ
長谷川さんは、数年間の研究の末、まず国際空港が所在する桃園県で開店し、営業を開始した。あえて駐在時代には馴染んでいなかった知らない土地で挑戦してみたのだという。「2年間、知らない土地で営業しました。自分で考えたことが現地の人に受け入れられるか検証するとともに、事業の本当のむずかしさを知っておきたいと考えたからです。お客様や友人である日本人料理長などアドバイスを受けてがんばるなかで、“平成屋のメニューは、ひと味違う”との評価をいただくようになったので、その段階で台北市の飲食中心街、永康公園の隣に進出しました」(同)
現在まで営業が続く永康公園に隣接する平成屋の近くには、日本からの観光客に人気のあるマンゴーアイスや小龍包の名店が並ぶ。
「いまでこそ落ち着きましたが、開業当初からしばらくは店の前に行列ができる状態でしたね」(同)。いま、平成屋は現地人の顧客や台北市に滞在する日本人留学生、駐在員の支持を得ており、毎日のように訪れる人もいる。
そんなお客のひとり、語学留学生のTさんに話をきいた。
「このあたりは日本からの観光客に人気のある店も多いのですが、じつは日本人が直接経営している飲食店はここだけなんです。老バン(店主に対する現地語の愛称)は、人柄が穏やかで親切。ニコニコしながら、困った問題の相談にものってくれる。台湾人の奥さんも素敵です。二人を慕って、若い人を含む日本人居住者が集まってきます」
お客さんには、子どもを連れた台湾人ファミリーの姿もよく見られる。おいしい出し汁を通す高級豚肉や牛肉のしゃぶしゃぶはもとより、台湾独特の海鮮しゃぶしゃぶ(美味な蟹や海老などがたっぷり)の美味しさは、日本では味わえないものだ。
独立心が強い現地従業員の管理で苦労
「開業当初から今日まで続く最大の苦労は、独立心の強い現地人や東南アジア出身の従業員の管理ですね。よく働いてくれるのですが、自分の受け持ちには責任をもつものの、ほかはやらないといった姿勢がかなり染みついています。最初の教育が大事ですね。みんなの力で“お客様第一”“平成屋の味を守る”“あいさつ・清潔・笑顔”を徹底していくようにしています」(長谷川さん)
平成屋で働く人は、台湾人のほかに大陸側の中国人やベトナム、インドネシアからの出稼ぎ者がいたというが、独立心の強い彼らは少しでも時給の高いところがあると、何の躊躇もなく辞めて移ってしまうことが多いという。従業員の出入りが激しいのは、平成屋にかぎらず台湾の飲食産業一般の特徴であるそうだ。
「あまり我慢しないんですね。そういう意味で個人主義。でも、それが悪いとは思いませんよ。そうしたなかで、なんとかお客様に支持される味とサービスを提供していきたい。だから、フランチャイズ展開はせず、私の目の届く範囲での直営にこだわっているのです」(同)
難しい現地従業員の管理。この面では、長谷川さん自身の努力とあわせて公私ともにパートナーであるしっかり者の台湾人の奥さんの果たす役割が大きいようだ。海外で事業展開する場合、どんなことがあっても裏切らない信頼できる現地パートナーが必要であることは、夫婦関係という形をとらずとも明らかなようである。

「日本から観光に来るみなさんにも立ち寄ってほしいですね」
長谷川さんの人柄と美味な平成屋のメニューが知られるにつれ、訪れる顧客には日本人などの外国人が増えてきている。しかし、現地人と外国人の全顧客に占める割合は、9対1くらいだという。
「日本人観光客向けガイドブックは、この辺りのスイーツや小龍包の名店の位置をマップ上に掲載していますが、うちのような地味な店はなかなか載せてくれません。でも、ふらっと入った旅行者の方が料理を喜んでくれ、再度台湾に来たときに“また食べたくなって来ましたよ”といわれたときは、本当にうれしかったですね。料理を食べなくとも、何か困ったら平成屋にぜひ立ち寄ってほしいですね。私は、現地に根をはやした日本人ですから、たいていのことには力になれると思いますよ」(同)
神奈川県横須賀市出身の長谷川さんは、店の周囲でよくみかける日本人旅行客が気になるようだ。「事故のないように台湾を楽しんでほしい」と願う平成屋の長谷川さんの心根に、その美味しい料理とともに触れてほしいと思う。
「平成屋」(平成屋有限公司)
台北市永康街23巷6號
TEL:886-22322-2000(国際電話)
URL: http://www.heiseiya.com/
取材・文 古是三春



