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2008年05月15日更新

<莫邦富的視点>中国に進出したカルフールと不買運動の裏に

写真:莫邦富氏●莫 邦富(Mo Bang-Fu): 1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。
『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』などがある。
現在、朝日新聞be(土曜版)にて「mo@china」を連載中。博報堂スーパバイザ。東京経営者協会評議委員。東京メトロポリタンテレビジョン放送番組審議委員。中国山東省青島市開発区顧問。三菱UFJ信託銀行業務顧問。
http://www.mo-office.jp/
カルフールをかばう地元企業がなかった

最近、聖火リレーが世界中で話題となっている。特に聖火リレーがパリでひどい妨害行動に遭い、身障者のランナーが襲われて怪我をした。このニュースを知った中国の若者が憤慨し、抗議行動に立ち上がった。中国に進出した仏系スーパー、カルフールが不幸にもそのターゲットとなった。

抗議活動が発生した翌日、その抗議活動の最初の発生地である青島に、ちょうど仕事の関係で入った。カルフールについて長年の友人である地元関係者やメディア関係者といろいろと情報を交流する機会があった。てっきりナショナリズム的な発言が出てくるかと構えていたら、意外な話が出てきた。

スーパーやデパートに商品やサービスなどを提供する会社のことを、中国では「供給商」と呼ぶ。つまりサプライヤーだ。言うまでもなく、カルフールで働く従業員または商品などを提供するサプライヤーのほとんどは中国人と中国企業である。カルフールに対する不買の抗議は結局、これらの中国人と中国企業にも大きな痛みを与えることになるだろう。

その意味では、これらの中国人と中国企業から、カルフールに対する抗議の気持ちはわかるがターゲットを間違えてはいないか、という声が出てもおかしくない。だが、そのような声は私が知るかぎり出ていない。

友人たちによれば、じつはカルフールに対するサプライヤーの不満がずっと前からくすぶっていたという。今回の大衆の抗議活動を見て、むしろざまみろという気持ちがあり、事の推移をただ冷ややかに見守るだけで、カルフールの肩をもつ企業はなかった。

サプライヤーいじめというイメージが定着

友人たちは、まずカルフールの支払いが非常に悪いと指摘している。仕入れ価格を強い立場を利用してさんざんと値切ったうえ、商品の代金に対する支払いが大幅に遅れる。さらにいろいろな名目を設けてはサプライヤーから費用を徴収していた、という。

こうした話を聞いた私は、最初とても信じられなかった。しかし、調べてみると、確かに今回の不買運動が発生する前に、すでにカルフールに対する批判の声がかなり出ていた。

たとえば、08年2月1日、「第一財経」という経済メディアグループとリサーチ会社などが主催する推薦活動で、カルフールが「2007年中国で最も影響力ある多国籍企業」として推薦リストに名を連ねた。しかし、その他の多くのメディアは「カルフールはマイナスの影響力で選ばれたのだろう」と揶揄した。

なぜかというと、数カ月前の07年9月3日に、「第一財経」傘下の「第一財経日報」がカルフールを「最も困った企業」として、サプライヤーから金品の提供を求めるマネジャークラスの幹部の汚職問題などを取り上げたばかりだったからだ。

追い討ちをかけるかのように、08年2月22日、中国共産党機関紙である人民日報も、カルフールがいろいろな名目を設けてサプライヤーから費用を徴収しているとして、カルフールのサプライヤーいじめに容赦なくメスを入れた。その日の昼、CCTV(中央テレビ)のニュースでもこの問題を取り上げた。
こうしたなかで、パリで聖火リレー妨害事件が発生した。カルフールに対してもともと抱いていた不満ははけ口を見つけたかのように爆発した。

その不買運動発生後、サプライヤーがさらに堅い口を開き、これまで水面上に浮かんでこなかった内部の事情がより明らかになってきた。
たとえば、北京のあるサプライヤーの例を見てみよう。ある商品の販売量が中国全土で3位を誇るこのサプライヤーが2001年5月から2002年6月まで、カルフールに約375万円の商品を納品した。

しかし、実際に支払われたのはわずか135万円しかなかった。残りのお金はすべてさまざまな費用の天引き額として処理されていた。北京カルフール方荘店では、あるサプライヤーが300万円にのぼる商品を供給したが、4カ月経っても商品の代金が支払われず、ようやく02年6月になって、天引き額がすべて引かれたとして商品の代金が支払われた。だが額は5000円足らずだった。

カルフールに対する不買事件の裏にあったこれらの事実は、次のことを教えてくれたと思う。企業は日頃よき市民であるよう努力しないと、何らかの波風が起きた場合に四面楚歌となる恐れがある、ということだ。


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