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2008年05月08日更新

<さかもと未明>橋下知事と東国原知事は似て非なるもの

橋下知事と東国原知事は似て非なるもの

写真:さかもと未明氏1988年玉川大学文学部英文科卒。商社OLを経て24歳で漫画家デビュー。レディスコミック誌を中心に活躍するかたわらルポやエッセイも執筆し、売れっ子となる。00年、「文学界」にて『花悩』で作家デビュー。現在、日本テレビ『スッキリ!!』(月~金、午前8時~)のレギュラーコメンテーター。著書に『マンガ ローマ帝国の歴史1~3』(講談社)、『右よりですが、何か?』(ワック)など。
さかもと未明オフィシャルブログ「さかもと未明の和みカフェ?」http://blog.goo.ne.jp/sakamoto-mimei/

橋下(はしもと)弁護士が大阪府知事当選である。東国原(ひがしこくばる)宮崎県知事と同様に、マスコミはこぞって彼を取り上げ、あたかも新時代の到来かのように報道した。しかしちょっと待ってほしい。

新人や、既存勢力以外の人間が選挙に勝つと、「これからはよくなるのでは」という期待を抱きがちだ。でも、本当にそうならば横山ノック氏や青島幸男氏の当選で、大阪も東京ももっとよくなったはずである。

とはいえ、実は私は東国原知事に対して、今のところ好意的だ。数年の結果を見てみなければまだ何とも言えぬが、宮崎知事はタレントの出自であることに溺(おぼ)れず、きちんと現場の信頼を勝ち取って地道な行政をしようと努力しているように見える。テレビに出すぎといえばそうだろうが、あれはあれで彼のスタイルだと思えば問題ないだろう。

しかし、橋下知事はどうなのか。大阪の知事は一見、宮崎の知事に似ているが、2人は実は似て非なるものだと私は思っている。

「橋下知事をどう思う?」と何人かに聞いたところ、「嫌いじゃないよ? むしろ好きかな」という答えが返ってきた。これは彼のイメージ戦略、露出の成功だと言えるだろう。
ほとんどの人が彼を知っており、「弁護士なんだし、知事でもいいんじゃない?」と、答えるのである。さらに「危うい感じはしない?」と聞いてみると、「嫌いになるほど知らないもの」という答えが返ってきた。私は、これこそ彼の現実を表わす的確なコメントだと感じた。

マスコミへの大量かつ巧みな露出で、多くの府民の票を獲得した橋下氏だが、実はその基盤は脆弱に見える。かなりの数の浮動票が「対立候補よりはいいかな」と橋下氏に流れたに違いない。こういうスタートは、最初「お笑い芸人が知事ですか?」という逆風からスタートし、全力で信頼を勝ち取るしかなかった宮崎知事とは実は対極である。

さらに常に一貫した政治理念を持ち続け、宮崎のマイナス面についても具体的にはっきり言及して、それを改革しようと訴える東国原知事に対し、橋下知事の発言はあまりにも無節操に変わってきている。

一見、何でもありの毒のある発言をする橋下知事だが、実はかつて核武装論者だったのに、知事選出馬に際し、「あれはテレビ出演のための演出だった」と発言を撤回した。こんな重大事への信念を、テレビ出演や選挙への出馬のために曲げるのは政治家としてどうなのか。さらに2500万円の脱税をスクープした産経新聞を「オナニー新聞が!!」と口汚く罵(ののし)るなど、人間としての品位を疑う発言、行動には事欠かない。府民の支持を得て当選したのだから過去については不問にするとしても、この人が本当の革命児なのか、ただの“いかれた人”なのかは、これからゆっくり判断していかねばなるまい。

それはさておき、私がいまだに驚いているのは、彼が掲げた公約である。「子育てアドバイザー制度を創設します」「不妊治療費補助を拡充します」「公立小学校などの運動場を芝生化します」などと、どこから財源を引っ張るんだという約束のオンパレードだ。いったい彼は芝生業者のハローワークでもなさるおつもりなのであろうか。投票した人々も、きれいごとだけ並べた公約を危ういとは思わなかったのか。

いや、本当に彼がビジョンと裏づけを持って大阪府の改革をしてくれるならいい。すべてはこれからである。しかし、最初は口当たりがよく刺激的なものというのは、しばしば危険だ。“悪い異性”や麻薬がそうであるように、その心地よさに溺れたが最後、取り返しのつかないダメージを受けてしまう。

我々はただ単にエンターテインメント化された政治に踊らされたり、口当たりのいい公約に半端な希望を持ったりせず、常に厳しい目で「それが麻薬なのか良薬なのか」を見分け続けなくてはならない。偽者を選んだ民は、結局、そのつけを自分の血で贖あがなうことになるのだから。



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