2008年04月17日更新
<3月号特集>従業員に感動を与える
東京ベル製作所 東京都荒川区
従業員持ち株制度によりやる気と感動を引き出す
従業員持ち株制度によりやる気と感動を引き出す
従業員はパートを含めても40人の小さな町工場から、80種類、月産10万~15万個もの自転車ベルが生まれている。国内市場占有率は50%。この確かなものづくりの原動力となっているのが市村社長の「社員を大切にする経営」という理念、そして利益の社員還元を進める従業員持ち株制度だ。
資本金の10%の配当を10年以上も続ける
2007年11月26日、東京ベル製作所(東京都荒川区)本社社屋3階の社員食堂に拍手が響き渡った。市村旭二社長から直近の07年9月期決算が好調だったことを告げられたからだ。高い配当を得られる従業員株主は納得し、感動する。たたく手には一層力がこもる。この日は同社の第59期の株主総会。出席者は約20人。うち役員も含めて10人が従業員株主である。
中小企業庁の「中小企業の財務指標」によると、05年の金属製品製造業の売上高経常利益率は2.5%。対して同社は、過去15年にわたりコンスタントに10%前後の利益率を保っている。率にして平均の4倍に当たるこの利益を原資として、同社は資本金(4650万円)の10%という高配当を過去10年以上も続け、利益の従業員還元を進めてきた。
好業績を支えているのは、社員の頑張りだ。市村社長の「社員を大切にする経営」という方針が功を奏している。同社の株価は1株50円で、93万株を発行している。配当額は資本金の10%なので、1万株持つ従業員の配当は5万円となる。決して多い額ではないが、市村社長の思いが込められた配当金である。銀行に預けても大した利息もつかない昨今、10%の利息が付くと思えば、その価値は大きい。この従業員持ち株制度が、従業員の感動を呼び起こしている。

東京ベル製作所の工場内部。自転車のベルの最終的な仕上げは、まだ人の手に頼る部分も多い。
管理職をはじめ、主任や一般社員も従業員株主に
東京ベル製作所の創業は1949年。市村社長の祖父が資本金300万円で事業を始めた。当初は自転車のベルの製造からスタートし、自転車生産が海外へと移っていく90年前後からは、事業の多角化に着手。ゴルフ用品などに使用するダイカスト鋳造部品や店舗什器製造などに取り組み始めた。店舗什器は小売店で値札を付けるために使われるものだ。
また自転車ベルも、量産品を自転車メーカーに納品するだけでなく、自転車愛好家に受け入れられる独創的なベルを自転車専門店に納めるなど、販路も開拓していった。一方、資本金はというと69年に600万円、73年に1200万円、74年に1380万円、78年に2070万円、89年に3150万円、92年に4650万円と増資しており、その度に従業員から出資を募り、従業員持ち株比率を拡大している。
現在の株式所有者の比率は、市村社長自身を含めた親族が7割、従業員株主が3割である。従業員株主は管理職にとどまらず、主任や自転車ベルのデザイナーもいる。持ち株数は1人当たり1000株から1万株ほど。では、株式を公開していない会社において、従業員持ち株制度はどのようなメリットがあるのだろうか。
経営者から見たメリットについて市村社長はこう語る。「まず従業員の経営への参加意識を高めることができます。株式は親族から従業員へというのが私の方針。創業時に株を引き受けてもらった親族もいますが、相続の時などに買い取って、希望する従業員に割り当てていきたいと思っています」
第2に株式の外部流出を防ぐことができる。創業時に出資をあおいだ親族が持つ株式は、子や孫へと相続されていく。子や孫の代には自社との関係が薄れ、事業に無関心な株主になってしまう。従業員持ち株制度は、これを防止できるわけだ。第3に、株主から買い取りの要請があったとしても、気心が知れた社員株主であれば不当な要求をしてくることもないという安心感がある。

従業員の感動エネルギーがディズニーランド商品を生む
一方、従業員から見たメリットは、資産形成になることが挙げられる。先ほど述べた通り、現在の定期預金の利率が1%前後ということを考えれば、出資額の10%という配当は格段に有利といえる。また、退職時には会社が買い取ってくれるので、退職金以外にも現金を得られる。
「その時の経営状態などでも異なりますが、当社では額面価額の2~3割増しで買い取っています」(市村社長)
このように利益の従業員還元という市村社長の姿勢に感動した社員の会社への貢献意欲は、当然ながら高くなる。その結果、東京ベル製作所は、自転車ベルの傑作を次々と生み出してきた。レバーの代わりに土星の輪状の外周を設け、これを回すと音が出る「ロータリー・ベル」、レバーを引いても押しても音が鳴る「エル・アールベル」、方位磁石付きの「コンパス・ベル」、欧米で大ヒットした小型の「チビ丸」などだ。
ロータリー・ベルが受賞したグッドデザイン中小企業商品賞をはじめ、受賞歴も多い。07年5月には、納入業者や納品物に厳しい基準を設けるオリエンタルランド(千葉県浦安市)から、商社を通して東京ディズニーランド・オリジナルの自転車ベルの製造を依頼され、レバーをネズミの耳に見立てたベルを開発。東京ディズニーランド内のみやげ物店に並んだ1万5000個はほどなく完売、昨年秋には5000個の追加生産をした。
こうしたヒット商品も、社員を感動させる市村社長の経営姿勢から、そして市村社長の意気に応えようとする従業員の姿勢から生まれているといえよう。
会社概要Company Data
東京ベル製作所
【所在地】〒116-0011 東京都荒川区西尾久4-8-4
【創業】1949年9月1日
【TEL】03-3893-5741
【資本金】4650万円
【従業員】40人(うちパート10人)
【事業内容】自転車用ベル、ダイカスト鋳造部品、金属性スタンドの製造
【URL】http://www.tokyobell.co.jp/frame1.html
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2007年11月26日、東京ベル製作所(東京都荒川区)本社社屋3階の社員食堂に拍手が響き渡った。市村旭二社長から直近の07年9月期決算が好調だったことを告げられたからだ。高い配当を得られる従業員株主は納得し、感動する。たたく手には一層力がこもる。この日は同社の第59期の株主総会。出席者は約20人。うち役員も含めて10人が従業員株主である。中小企業庁の「中小企業の財務指標」によると、05年の金属製品製造業の売上高経常利益率は2.5%。対して同社は、過去15年にわたりコンスタントに10%前後の利益率を保っている。率にして平均の4倍に当たるこの利益を原資として、同社は資本金(4650万円)の10%という高配当を過去10年以上も続け、利益の従業員還元を進めてきた。
好業績を支えているのは、社員の頑張りだ。市村社長の「社員を大切にする経営」という方針が功を奏している。同社の株価は1株50円で、93万株を発行している。配当額は資本金の10%なので、1万株持つ従業員の配当は5万円となる。決して多い額ではないが、市村社長の思いが込められた配当金である。銀行に預けても大した利息もつかない昨今、10%の利息が付くと思えば、その価値は大きい。この従業員持ち株制度が、従業員の感動を呼び起こしている。

管理職をはじめ、主任や一般社員も従業員株主に
東京ベル製作所の創業は1949年。市村社長の祖父が資本金300万円で事業を始めた。当初は自転車のベルの製造からスタートし、自転車生産が海外へと移っていく90年前後からは、事業の多角化に着手。ゴルフ用品などに使用するダイカスト鋳造部品や店舗什器製造などに取り組み始めた。店舗什器は小売店で値札を付けるために使われるものだ。
また自転車ベルも、量産品を自転車メーカーに納品するだけでなく、自転車愛好家に受け入れられる独創的なベルを自転車専門店に納めるなど、販路も開拓していった。一方、資本金はというと69年に600万円、73年に1200万円、74年に1380万円、78年に2070万円、89年に3150万円、92年に4650万円と増資しており、その度に従業員から出資を募り、従業員持ち株比率を拡大している。
現在の株式所有者の比率は、市村社長自身を含めた親族が7割、従業員株主が3割である。従業員株主は管理職にとどまらず、主任や自転車ベルのデザイナーもいる。持ち株数は1人当たり1000株から1万株ほど。では、株式を公開していない会社において、従業員持ち株制度はどのようなメリットがあるのだろうか。
経営者から見たメリットについて市村社長はこう語る。「まず従業員の経営への参加意識を高めることができます。株式は親族から従業員へというのが私の方針。創業時に株を引き受けてもらった親族もいますが、相続の時などに買い取って、希望する従業員に割り当てていきたいと思っています」
第2に株式の外部流出を防ぐことができる。創業時に出資をあおいだ親族が持つ株式は、子や孫へと相続されていく。子や孫の代には自社との関係が薄れ、事業に無関心な株主になってしまう。従業員持ち株制度は、これを防止できるわけだ。第3に、株主から買い取りの要請があったとしても、気心が知れた社員株主であれば不当な要求をしてくることもないという安心感がある。

従業員の感動エネルギーがディズニーランド商品を生む
一方、従業員から見たメリットは、資産形成になることが挙げられる。先ほど述べた通り、現在の定期預金の利率が1%前後ということを考えれば、出資額の10%という配当は格段に有利といえる。また、退職時には会社が買い取ってくれるので、退職金以外にも現金を得られる。
「その時の経営状態などでも異なりますが、当社では額面価額の2~3割増しで買い取っています」(市村社長)
このように利益の従業員還元という市村社長の姿勢に感動した社員の会社への貢献意欲は、当然ながら高くなる。その結果、東京ベル製作所は、自転車ベルの傑作を次々と生み出してきた。レバーの代わりに土星の輪状の外周を設け、これを回すと音が出る「ロータリー・ベル」、レバーを引いても押しても音が鳴る「エル・アールベル」、方位磁石付きの「コンパス・ベル」、欧米で大ヒットした小型の「チビ丸」などだ。
ロータリー・ベルが受賞したグッドデザイン中小企業商品賞をはじめ、受賞歴も多い。07年5月には、納入業者や納品物に厳しい基準を設けるオリエンタルランド(千葉県浦安市)から、商社を通して東京ディズニーランド・オリジナルの自転車ベルの製造を依頼され、レバーをネズミの耳に見立てたベルを開発。東京ディズニーランド内のみやげ物店に並んだ1万5000個はほどなく完売、昨年秋には5000個の追加生産をした。
こうしたヒット商品も、社員を感動させる市村社長の経営姿勢から、そして市村社長の意気に応えようとする従業員の姿勢から生まれているといえよう。
会社概要Company Data
東京ベル製作所
【所在地】〒116-0011 東京都荒川区西尾久4-8-4
【創業】1949年9月1日
【TEL】03-3893-5741
【資本金】4650万円
【従業員】40人(うちパート10人)
【事業内容】自転車用ベル、ダイカスト鋳造部品、金属性スタンドの製造
【URL】http://www.tokyobell.co.jp/frame1.html
Column
半年に1度、面談して自分の目標を設定させる
東京ベル製作所は、約10年前から目標管理制度を導入。年に2回、市村社長が従業員一人ひとりと面談を行ない、従業員に自分の半期の目標を設定させている。社員からは生産性の10%アップだとか、金型の改善だとかいった目標が上がってくる。「パートからも不良品率の3%削減といった目標が出てきます」と市村社長は胸を張る。
また、市村社長は、よりよい刺激を受けられるように社員を講習会などに出席させている。
「自分の経験則から、社員にはできるだけ多くの人に会うように言っています。工業製品のデザイン講習会、デザイン賞の授賞式など、どんどん送り出しています」(市村社長)
費用はすべて会社持ちである。社外の人に教わるからこそ意義があると市村社長は考える。「ふだん私が言っていることと、社外の人が言っていることが同じだと、本当にその通りだ納得度が高まる。複数の意見を聞くことは、医療におけるセカンドオピニオン(別の専門家の意見)のようなもの」(同)
自転車展、機械展などの展示会や見本市では、社長が自らチケットを買ってきて、「ほら行って来い」と社員に渡す。「従業員が動き出すのを待っていてはダメ。従業員が動き出すように経営者が働きかける必要があります」(同)
半年に1度、面談して自分の目標を設定させる
東京ベル製作所は、約10年前から目標管理制度を導入。年に2回、市村社長が従業員一人ひとりと面談を行ない、従業員に自分の半期の目標を設定させている。社員からは生産性の10%アップだとか、金型の改善だとかいった目標が上がってくる。「パートからも不良品率の3%削減といった目標が出てきます」と市村社長は胸を張る。
また、市村社長は、よりよい刺激を受けられるように社員を講習会などに出席させている。
「自分の経験則から、社員にはできるだけ多くの人に会うように言っています。工業製品のデザイン講習会、デザイン賞の授賞式など、どんどん送り出しています」(市村社長)
費用はすべて会社持ちである。社外の人に教わるからこそ意義があると市村社長は考える。「ふだん私が言っていることと、社外の人が言っていることが同じだと、本当にその通りだ納得度が高まる。複数の意見を聞くことは、医療におけるセカンドオピニオン(別の専門家の意見)のようなもの」(同)
自転車展、機械展などの展示会や見本市では、社長が自らチケットを買ってきて、「ほら行って来い」と社員に渡す。「従業員が動き出すのを待っていてはダメ。従業員が動き出すように経営者が働きかける必要があります」(同)
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