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2008年04月17日更新

<莫邦富的視点>中国富裕層市場への切り込み方を教える一冊

写真:莫邦富氏●莫 邦富(Mo Bang-Fu): 1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。
『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』などがある。
現在、朝日新聞be(土曜版)にて「mo@china」を連載中。博報堂スーパバイザ。東京経営者協会評議委員。東京メトロポリタンテレビジョン放送番組審議委員。中国山東省青島市開発区顧問。三菱UFJ信託銀行業務顧問。
http://www.mo-office.jp/
日本の主要デパートで感じた中国マネーのパワー

台湾の総統選挙で国民党の馬英九氏が圧倒的な勝利を手にしたことで、暗雲垂れ込めていた台湾海峡両岸の緊張がようやく緩和したかと胸を撫で下ろしていたら、今度はチベット問題が発生した。次は新疆ウイグル自治区と内蒙古自治区の独立派、さらに法輪功、民主化運動による抗議行動が起きるだろう。北京オリンピックを迎える中国はさまざまな問題を抱え、こうしたハードルをひとつひとつ跳び越えなければならない。

しかし、そうは言っても、急速に「世界の工場」から「世紀の市場」へとその位置づけを変えていく中国の存在感は、日本国内で実感するものより遥かに大きくなっている。いや、よく観察すれば、日本でも中国の存在感が日に日に大きくなっていくことに容易に気づく。

先日、用事で銀座に行ったとき、たまたま打ち合わせ時間よりちょっと早めに着いてしまったので、暇つぶしに銀座松坂屋を覗いてみた。1階の化粧品フロアに、中国人観光客が買い求めやすいようプレゼント用の化粧品のパッケージが用意されている。値段も手ごろで、それなりの見栄えもある。これなら確かに買い求めやすいなあ、と私も思わず感心した。

これらの商品を展示するコーナーの横には、必ずと言っていいほど「銀聯カードのご使用も可能」と親切に書いてある。銀聯カードとは中国のクレジットカード会社だ。VISA、JCBの中国版と考えればいい。

銀聯(ぎんれん)カードについては、創立から歴史が短く、日本を含む海外ではそれほど積極的にビジネス舞台を切り開くための営業活動をしていないと私は思っているが、実際は日本市場への浸透ぶりには目を見張るものがある。電気街の秋葉原をはじめ、東京の主要デパートでもどこも銀聯カードの使用を歓迎するといった表示をしている。中国人の消費力がいよいよ海外市場にも浸透してきたと肌で感じさせられる瞬間だ。

中国パワー生活者を知ろう

しかし、日本のメディアに取り上げられ、書籍に描かれる中国は、貧困、格差、環境破壊などなど、いまにも崩壊しそうだ。日本のデパートでショッピングを楽しむ中国人観光客の後ろ姿を目の当たりにしながら、普段日本で報じられている中国との乖離を否応なく思い知らされる。

こうした中国をいったいどう捉えればいいのか、中国人の消費力はいったいどれぐらいあるのか。誰もが自然とこうした疑問をもつだろう。ここで一冊の本を推薦したい。博報堂中国マーケティング研究プロジェクトの大橋直子さんと小山諭さんが書いた『中国で成功するマーケティング』(日本経済新聞社)だ。

日本や欧米が30~40年かけて体験してきたような社会変動が一気に押し寄せている中国は、国が広いうえに、変動も激しい。さらに、その生活水準の地域差や文化、習慣、言語なども「省が違えば、国が違うほど大きい」といわれるほどである。こうした中国を市場として攻略することは困難を極める。

このように把握しにくい中国市場で、誰をターゲットにし、どのようにマーケティング活動を行なえばいいのか。こうした問題に対して、『中国で成功するマーケティング』は答えを出そうと試みている。

博報堂はこの5年あまり中国市場に対して、独自の定量調査や定性調査(家庭訪問によるインタビューなど)を継続して行なってきた。こうして蓄積してきた膨大な調査データを分析しながら、世帯月収6000元以上(約8万8000円)の「パワー生活者」を中心に市場のターゲットを絞っている。

こうした調査・研究の結果を踏まえて、大橋さんと小山さんを含めた博報堂の関係者たちは、大激戦市場である中国攻略のカギを握る富裕層の知らされざる消費行動を豊富なデータを駆使して徹底解明を図った。『中国で成功するマーケティング』はその報告である。

中国市場に魅力を覚え、ビジネスチャンスを狙っている日本のビジネスマンにとって、参考にする価値のある一冊である。著者たちから帯に載せる推薦の言葉を頼まれたとき、私は躊躇せずこうしたためた。

「世界企業の激戦地、21世紀の大市場となる中国。この本を読まずに、中国パワー生活者を知らずに、あなたは中国に切り込む勇気がありますか?」


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