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2008年04月10日更新

<3月号特集>顧客を感動させる2

坂井モーター 静岡県浜松市
相手の立場で常に考え続け
終わりなきサービスを追求



坂井モーターが経営する車検のフランチャイズチェーンの1つ、「コバック浜北アピタ通り店」(浜松市浜北区)

自動車整備会社の坂井モーター(静岡県浜松市)を坂井光蔵社長が引き継いだ1988年は、まさに古きよき時代。国内の自動車販売台数が増え続け、整備の需要も右肩上がりだったからだ。「いつまでも殿様商売は続かない」。サービス精神に欠ける社内体質に疑問を感じた坂井光蔵社長は、顧客第一主義に向けて改革に乗り出した。

社内改革の第1弾は明るく元気なあいさつ

「きめ細かい対応に、次もお願いする気持ちになりました。費用も納得できました」、「メーカーと連絡を取り合って処理してくれました。感心しました」、「早朝にもかかわらず社員の対応がとてもさわやかでうれしかった」坂井モーターに毎月30通ほど届く顧客アンケートハガキに書かれた感動の言葉を見るたびに、坂井社長は胸が熱くなる。同時に、顧客をもっと感動させたいと気を引き締める。

かつて自動車整備業界には、技術面以外での顧客サービス精神はあまり根付いていなかった。整備を頼まれた自動車を引き取り、工場で点検・修理して引き渡す。特に愛想を振りまく必要はない。それで経営が成り立っていた。坂井モーターも、増え続ける自動車の膨大な需要の上にあぐらをかき、殿様商売の体質があった。「だから、顧客に頭を下げて感謝の心を伝えることから始めたのです」と坂井社長は振り返る。

1988年の社長就任と同時に、あいさつの徹底を促す。従業員同士はもちろん、顧客に対しても大きな声で明るくあいさつをするように指導した。

「常に自分がサービスを受ける側に立って顧客に対応しなければならない。そこから、顧客に感動を与えるサービスが生まれる」。坂井社長はそう考えた。整備技術がどんなに優れていても、顧客が来てくれなければ腕の振るいようがない。自動車整備もサービス業の1つであることについて、社内で周知徹底を図った。

同社は93年に車検のフランチャイズチェーンを全国展開するコバック(愛知県豊田市)の加盟会社となったことを機に、トラック中心から乗用車中心へと営業基盤の比重が移っていく。それに伴い、女性客が増えて言葉づかいや身だしなみにも注意をする必要が高まり、接客サービスの質的向上がますます求められるようになった。


従業員の接客態度の良さや整備内容の的確な説明など、アンケートには、感謝の言葉がいっぱい書かれている。

分かりやすく説明して理解と信頼を勝ち取る

「お客様が感動するサービスとは、接客態度、ていねいな説明、明朗な料金。この3つです」。こう言い切る坂井社長は、サービス力強化の第2弾として「説明責任」に取り組んだ。自動車整備業界は従来、顧客に点検内容を詳しく説明してこなかった。顧客側も点検後に自動車が問題なく動けば満足であり、機械的なことを聞かされてもほとんど分からないというのが実情だった。しかし、今はただ整備して引き渡せば終わりというわけにもいかない。

「顧客が求めるサービスは時代とともに変わります。現代の新しいサービスは情報公開です」こう考えた坂井社長は、「車検の見える化」を図った。車検作業の様子をデジタルカメラで撮影してA4サイズに印刷した写真を、納車の時に顧客に見せながら説明する。どのような点検をしたか、どの部品を交換したか、それらに要する料金はいくらか。さらに、どの部品をいつ頃までに交換すべきかなどについても顧客に知らせておく。

「摩耗したブレーキパッドの交換など、法律で定められた必要な整備はもちろんきっちり行ないますが、それ以外はお客様に十分に説明し、あくまでもお客様の判断に従って行ないます」(坂井社長)

顧客は写真を見ながら説明を受けるため、部品交換や修理・修繕の必要性が非常に分かりやすい。また、料金も納得したうえで支払うことができる。

坂井社長が顧客への説明サービスを思いついたのは、最近の医療習慣がヒントだ。医療業界では、手術などに際して医師が病状や治療方針を分かりやすく説明して患者の同意を得るインフォームドコンセントが一般化している。坂井社長は、人間ドックで胃カメラの写真を見せられながら医師の説明を受けた経験をもとに、「車検の見える化」の構想を固め、デジタルカメラやプリンターを使ってサービスを実現した。


(右)客が駐車場に入ってきたら、従業員がすかさず迎えに行って、あいさつを交わす。(左)整備の状況はデジタルカメラで撮影していく。

雨の日は2本の傘で迎え顧客の遠慮心を取り払う

坂井社長が社員に求めているのは、常に自分の頭で考えること。会社にいる時はサービスを提供する側だが、日常生活ではサービスを受ける側になる。だから、どのようなサービスを受けると感動するかを考えるように繰り返し促している。

「あのレストラン従業員の接客はいまひとつ、このタクシー運転手は無愛想だなどと感じた時などに、自分も仕事で同じような行動をとればお客様に不快な思いを抱かせてしまうと自らを戒める姿勢を持つことが大切です。そうすることで、顧客に感動を与えるサービス力が身につくと思います」(坂井社長)

あいさつをしっかりすることから始まった社内改革によって、顧客サービスは着実に進化を遂げた。顧客の自動車が工場の駐車場に入ってくると、必ず従業員が駆けつけて誘導し、ドアを開けて出てくる顧客にあいさつをする。雨の日は、傘を顧客に差し出す。その際は必ず2本の傘を用意する。1本しかない傘を顧客が使えば、従業員は雨に濡れ
てしまうことになり、顧客がかえって恐縮するからだ。

たとえ高品質なサービスでも、同じことの繰り返しでは顧客の感動はだんだんしぼんでいく。だから顧客の様子を見て、何が求められているかを即座に判断し、的確にサービス内容を変えていくことが大切だと坂井社長は強調する。「車検の様子を写真に撮って説明する。傘を差し出す。これらは教えれば誰でもできることです。しかし、それを実行するだけでは不十分です。自分の頭で次のサービスを常に考えて行動することが、顧客に感動を与え続けることになります」坂井モーターのサービスに完成はない。常に発展途上にある。

会社概要Company Data
坂井モーター

【所在地】〒435-0016 静岡県浜松
市和田町632
【創業】1948年4月
【TEL】053-463-5355
【資本金】3500万円
【売上高】10億3000万円(07年4月期)
【従業員】50人
【事業内容】車検、新車および中古車の販売、自動車修理、板金、保険の販売
【URL】http://www.sakai-motor.co.jp/

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