2008年04月10日更新
<市場を読み解く>バッグ小売業
バッグ小売業・消費者動向&企業戦略編
多くのヒット業態を発掘し、日本全国に拡大してきた(株)ベンチャー・リンクの研究開発部門「リンク総研」が、豊富な消費者アンケート調査をもとに、消費者視点で市場のトレンドを読み解いていきます。今回はバッグ小売業に焦点を当て、消費者動向とそれを踏まえた個別企業の戦略について解説します。
(リンク総研主任研究員・松澤佳津美)
(リンク総研主任研究員・松澤佳津美)
バッグ小売市場全体が伸び悩むなかで、〝手の届くぜいたく.をコンセプトに掲げて若い女性の需要をつかんだブランドが躍進を遂げてきた。今回は、消費者調査の結果からバッグ購入の実態を把握するとともに、個別企業の戦略を探る。
お気に入りブランドの購入が結果的に自己満足度を高める
リンク総研では2007年11月、20代以上の女性940人を対象に「バッグ購入実態調査」を実施した。まず、いちばん最近に購入したバッグに関して、「そのバッグを購入した理由」を尋ねたところ、「店頭で欲しいと思ったから」(34%)が最も多く、「使っていたバッグが古くなったので買い替え」(21%)、「セールを行なっていたから・安くなっていたから」(16%)、「そのブランドのバッグが欲しいと思っていたから」(8%)などと続く。
「そのバッグを購入した店舗を選んだ理由」については、「ほかの買い物をしていて、たまたま目に付いたから」(38%)が最も多く、バッグを目当てに買いに行くというよりも何かの買い物のついでに買ったというケースが多いようである。
一方、「バッグ購入後の感想」を購入店舗別にみると、「思っていた通りでとても気に入っている」との回答が最も多いのは「独立した鞄専門店」(67%)だった。次いで多いのは、「独立したブランドショップやセレクトショップ」(56%)、「免税店」(56%)、「デパート内のテナント」(53%)で、これらの店舗を選んだ理由として「好きなブランドの店だから」との回答が比較的多いことから、特定のブランド品の意識的な購入が結果的に購入後の満足度の高さにつながっていることがうかがえる。


根強く幅広い人気の
「吉田カバン」販売戦略が実る「サマンサタバサ」
「好きなバッグのブランド」についてみてみると、上位は「コーチ」(26%)、「ルイ・ヴィトン」(25%)、「グッチ」(17%)と海外の有名ブランドが並び、各年代で20%前後の支持を集めた。この3ブランド以外で人気のあるブランドを年代別にみると、20代では「吉田カバン」と「サマンサタバサ」、30代では「サザビー」、40代と50代では「プラダ」と「キタムラ」、60代以上では「エルメス」と「吉田カバン」が挙がった。
老舗メーカーである吉田の「吉田カバン」は最近、若い男性の人気を集めているが、女性を対象とした本調査結果でも20代と60代以上で上位に食い込むなど、老若男女を問わず幅広い層から支持されていることが分かる。また、「吉田カバン」を好きな人の特徴として、「日頃のバッグの使い方」について「気に入ったバッグを使い続ける傾向にある」との回答が全体平均やほかの上位ブランドと比較して高く、支持の根強さがうかがえる。
「吉田カバン」とともに20代女性の人気が高かったのが「サマンサタバサ」(サマンサタバサジャパンリミテッド)である。このブランドを好きな人の特徴としては、購入の際には「値段」(59%)や「使いやすさ・機能」(53%)よりも「デザイン(色・形を含む)」(66%)を重視し、「自分の持っている服などに合うか」(47%)も気にする傾向がほかの上位ブランドと比較して強い。
前回のリポートでは「サマンサタバサ」のブランド戦略について、若い女性向けにファッション性の高いバッグを投入し、洋服を着替えるようにバッグも使い分けることを提案していることを紹介した。これが市場に浸透していることがアンケート結果に表われているといえよう。

吉田カバンとサマンサタバサは生産・宣伝方針に共通点がある
吉田は1935年(昭和10年)創業の老舗バッグメーカーであり、サマンサタバサジャパンリミテッドは94年設立の新興企業であるが、両社の戦略には共通点がみられる。吉田は、アンケート結果にもみられたように長く愛用してもらえるバッグづくりを目指しており、創業以来、「一針入魂」を社是に掲げ、素材選びからデザイン、縫製まで全工程において手を抜かず、それを実現するために国内製造にこだわっている。こうしたていねいなものづくりから、もともとは中高年男性に支持されていたが、80年代に米軍で使用される丈夫なナイロン生地でポケットやファスナーなど細部の作りにこだわった新製品を発売し、若い世代の人気を集めた。
その後、国内外の著名デザイナーやセレクトショップの「BEAMS」などとの共同企画製品の投入によってブランドの浸透を図っていった結果、品質、機能性、ファッション性を兼ね備えたブランドとして日本のみならず海外でも評価され、さらに有名芸能人にも愛用者が多いことが知られるようになって、老若男女を問わず幅広い層に支持されるブランドとしての地位を確立したといえる。
一方のサマンサタバサジャパンリミテッドは、創業時から「世界ブランドを作る」ことを目指し、ブランドを成長させるための4つの要素として「良い場所(店舗開発)」「良い人(人材育成)」「良い商品(商品づくり)」「良い宣伝(プロモーション活動)」を掲げて実践している。
例えば「良い商品(商品づくり)」については、同社のバッグはファッション性が高いもののデザインだけでなく品質にもこだわっており、企画からデザイン、製造、販売までを一貫して行なうSPA(製造小売)型経営を採用している。業務提携メーカーには単に製造を委託するだけでなく自社の方針や事業計画も共有し、メーカーとともに顧客志向の商品づくりを実現する協業体制を確立してきた。
また「良い宣伝(プロモーション活動)」については、人気モデルや海外のセレブリティー(著名人)を起用したプロモーションを展開している。これは、単なる話題づくりのためではなく、顧客にブランドを通じて「喜び」「新鮮な驚き」「ワクワク感」を提供することが狙いだ。
このように両社の戦略は、ブランドの根底を築く「品質への飽くなきこだわり」と消費者の感性に響く「巧みなプロモーション」が共通しており、これがモノにあふれた現代において若い世代の心をつかみ、欧米の有名ブランドと肩を並べて支持される理由であるといえよう。

このリポートに関する問い合わせは下記へ
株式会社ベンチャー・リンクネットワーク事業本部リンク総研
(担当)早乙女、斉藤、堀場
〒111-8608 東京都台東区寿2-1-13 偕楽ビル7F
Tel:03-3843-5461
Fax:03-5827-7371
お気に入りブランドの購入が結果的に自己満足度を高める
リンク総研では2007年11月、20代以上の女性940人を対象に「バッグ購入実態調査」を実施した。まず、いちばん最近に購入したバッグに関して、「そのバッグを購入した理由」を尋ねたところ、「店頭で欲しいと思ったから」(34%)が最も多く、「使っていたバッグが古くなったので買い替え」(21%)、「セールを行なっていたから・安くなっていたから」(16%)、「そのブランドのバッグが欲しいと思っていたから」(8%)などと続く。
「そのバッグを購入した店舗を選んだ理由」については、「ほかの買い物をしていて、たまたま目に付いたから」(38%)が最も多く、バッグを目当てに買いに行くというよりも何かの買い物のついでに買ったというケースが多いようである。
一方、「バッグ購入後の感想」を購入店舗別にみると、「思っていた通りでとても気に入っている」との回答が最も多いのは「独立した鞄専門店」(67%)だった。次いで多いのは、「独立したブランドショップやセレクトショップ」(56%)、「免税店」(56%)、「デパート内のテナント」(53%)で、これらの店舗を選んだ理由として「好きなブランドの店だから」との回答が比較的多いことから、特定のブランド品の意識的な購入が結果的に購入後の満足度の高さにつながっていることがうかがえる。


根強く幅広い人気の
「吉田カバン」販売戦略が実る「サマンサタバサ」
「好きなバッグのブランド」についてみてみると、上位は「コーチ」(26%)、「ルイ・ヴィトン」(25%)、「グッチ」(17%)と海外の有名ブランドが並び、各年代で20%前後の支持を集めた。この3ブランド以外で人気のあるブランドを年代別にみると、20代では「吉田カバン」と「サマンサタバサ」、30代では「サザビー」、40代と50代では「プラダ」と「キタムラ」、60代以上では「エルメス」と「吉田カバン」が挙がった。
老舗メーカーである吉田の「吉田カバン」は最近、若い男性の人気を集めているが、女性を対象とした本調査結果でも20代と60代以上で上位に食い込むなど、老若男女を問わず幅広い層から支持されていることが分かる。また、「吉田カバン」を好きな人の特徴として、「日頃のバッグの使い方」について「気に入ったバッグを使い続ける傾向にある」との回答が全体平均やほかの上位ブランドと比較して高く、支持の根強さがうかがえる。
「吉田カバン」とともに20代女性の人気が高かったのが「サマンサタバサ」(サマンサタバサジャパンリミテッド)である。このブランドを好きな人の特徴としては、購入の際には「値段」(59%)や「使いやすさ・機能」(53%)よりも「デザイン(色・形を含む)」(66%)を重視し、「自分の持っている服などに合うか」(47%)も気にする傾向がほかの上位ブランドと比較して強い。
前回のリポートでは「サマンサタバサ」のブランド戦略について、若い女性向けにファッション性の高いバッグを投入し、洋服を着替えるようにバッグも使い分けることを提案していることを紹介した。これが市場に浸透していることがアンケート結果に表われているといえよう。

吉田カバンとサマンサタバサは生産・宣伝方針に共通点がある
吉田は1935年(昭和10年)創業の老舗バッグメーカーであり、サマンサタバサジャパンリミテッドは94年設立の新興企業であるが、両社の戦略には共通点がみられる。吉田は、アンケート結果にもみられたように長く愛用してもらえるバッグづくりを目指しており、創業以来、「一針入魂」を社是に掲げ、素材選びからデザイン、縫製まで全工程において手を抜かず、それを実現するために国内製造にこだわっている。こうしたていねいなものづくりから、もともとは中高年男性に支持されていたが、80年代に米軍で使用される丈夫なナイロン生地でポケットやファスナーなど細部の作りにこだわった新製品を発売し、若い世代の人気を集めた。
その後、国内外の著名デザイナーやセレクトショップの「BEAMS」などとの共同企画製品の投入によってブランドの浸透を図っていった結果、品質、機能性、ファッション性を兼ね備えたブランドとして日本のみならず海外でも評価され、さらに有名芸能人にも愛用者が多いことが知られるようになって、老若男女を問わず幅広い層に支持されるブランドとしての地位を確立したといえる。
一方のサマンサタバサジャパンリミテッドは、創業時から「世界ブランドを作る」ことを目指し、ブランドを成長させるための4つの要素として「良い場所(店舗開発)」「良い人(人材育成)」「良い商品(商品づくり)」「良い宣伝(プロモーション活動)」を掲げて実践している。
例えば「良い商品(商品づくり)」については、同社のバッグはファッション性が高いもののデザインだけでなく品質にもこだわっており、企画からデザイン、製造、販売までを一貫して行なうSPA(製造小売)型経営を採用している。業務提携メーカーには単に製造を委託するだけでなく自社の方針や事業計画も共有し、メーカーとともに顧客志向の商品づくりを実現する協業体制を確立してきた。
また「良い宣伝(プロモーション活動)」については、人気モデルや海外のセレブリティー(著名人)を起用したプロモーションを展開している。これは、単なる話題づくりのためではなく、顧客にブランドを通じて「喜び」「新鮮な驚き」「ワクワク感」を提供することが狙いだ。
このように両社の戦略は、ブランドの根底を築く「品質への飽くなきこだわり」と消費者の感性に響く「巧みなプロモーション」が共通しており、これがモノにあふれた現代において若い世代の心をつかみ、欧米の有名ブランドと肩を並べて支持される理由であるといえよう。

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