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2008年03月06日更新

<森永卓郎の経済探偵録>マンション市場に何が起きているか

発売戸数は下落、価格は上昇
マンション市場に何が起きているか


森永卓郎氏顔写真●三菱UFJリサーチ&コンサルティング客員研究員
 獨協大学特任教授
 森永卓郎






「マンション市場はいま凍りついていますよ」。ある不動産業者は森永氏にそう語った。首都圏のマンション市場では、新築マンションの発売戸数が下落する一方で価格は上昇している。マンション市場で何が起きているのだろうか。
2年連続で下落した新築マンション販売戸数

「マンション市場はいま凍りついていますよ」。ある不動産業者は私にそういった。景気の失速で、新しいマンションを作っても、簡単にさばけるような状態ではなくなったというのだ。その話を聞いて、私はすぐに思い出したことがあった。私の事務所は、東京の八丁堀にあるのだが、近隣の中古マンション販売のチラシがたくさん入ってくる。

今年1月、銀座の中古マンションが2980万円というチラシが入ってきたのだ。かなり古い物件だが、2000万円台で銀座のマンションの売り物がでるのをみたのは、5年ぶりくらいだ。やはりマンションの需給が相当悪化して、値段も相当下がっているのだろう。そう思っていた。

ところが、統計はまったく別の姿を描き出していた。不動産経済研究所が発表した07年の全国の新築分譲マンションの平均価格は、3813万円と前年を7.1%も上回っていたのだ。昨年は、まだ景気がよかったからではない。不動産経済研究所が発表した1月の「首都圏マンション市場動向」によると、1戸あたりの平均価格は4210万円で、前年同月比で9.2%上昇した。価格は13カ月連続で前年同月を上回っているのだ。

ただ、マンション価格や一戸建住宅の価格はどんどん上がっているのだが、それが、不動産市場が活況を呈するなかで生じているのではない。それを示しているのが、マンションの発売戸数だ。07年の新築マンション発売戸数は、前年比14.2%減の13万3670戸で、2年連続減少となった。過去最多だった1994年と比べると29.0%も減少していることになる。ただ、その減少の半分近くが昨年起こったわけだから、いかに昨年の発売戸数の落ち込みが大きかったかがわかる。

マンション市場全体でみると、マンションの発売総額は5兆966億円で、前年の5兆5488億円と比べて8.1%の減少となっている。価格上昇による増収効果よりも、発売戸数減少による減収効果が上回ったということになる。マンションが売れていない証拠は契約率にも表われている。今年1月の首都圏のマンションの契約率は52.7%と、バブル崩壊直後の1991年8月(49.7%)以来の低水準にとどまっているのだ。

昨年の東京都区部マンション価格の上昇率は19.7%

不動産市場の低迷が原因で、年明け以降大手不動産会社の株価が急落するという事態が生じたり、2月18日には横浜市の中堅マンション分譲業者の「アジャクス」が横浜地裁に自己破産を申請する方針を固めたことが報じられている。やはり、明らかに不動産市場は悪化しているのだ。

それでは、なぜマンションの価格が大きく上昇しているのだろうか。ひとつの可能性はマンションが広くなったということだ。しかし、実際のデータをみると、その可能性は否定される。全国の新築マンション価格は、昨年は3813万円と、前年の3560万円から7.1%上昇したが、平均面積は77.4平米から76.6平米へと、1.1%狭くなっている。一方、平米当たりの単価は46.0万円から49.8万円へと8.3%も上昇している。つまり、マンションは純粋に値上がりしているのだ。

そこで、地域別に価格動向をみると、昨年のマンション価格の上昇率は、近畿圏が4.7%に対して、首都圏は10.6%と2倍以上も上昇している。さらに首都圏の内訳をみると、都下8.9%、千葉9.0%、埼玉9.3%、神奈川9.8%、そして東京都区部19.7%と圧倒的に都心の上昇率が高くなっている。ちなみに平米当たりの単価をみると、近畿圏が47.0万円、首都圏が61.0万円、東京都区部が85.6万円となっているから、もともと高いところの価格上昇が大きく、さらに高くなっているのだ。

最近のマンションの人気の中心は、築浅の都心のタワー棟だといわれている。いわゆる「勝ち組の館」が人気を集めていて、値段も上がっているのだ。こうした状況がなぜ起こっているのかといえば、考えられる原因はひとつしかない。所得格差の拡大だ。

都心のマンションは高騰、郊外のマンションは値下がり傾向

実際、昨年発表された国税庁の「民間給与の実態」によれば、06年には、年収200万円以下の給与所得者の数が前年よりも42万人多い1023万人と、21年ぶりに1000万人の大台に乗せる一方で、年収1000万円以上の給与所得者も前年の215万人から224万人へと9万人増えている。直近のデータでも、厚生労働省が1月31日に発表した07年の「毎月勤労統計調査」によると、ボーナスなどの「特別に支払われた給与」が3.0%の減少となる一方で、日本経団連が大手268社を集計した07年冬の賞与は、加重平均で前年比1.91%も増えているのだ。

さらに、最近5年間で企業が支払う配当金の額は3倍に増えているし、資本金10億円以上の大企業の役員報酬は2倍に増えている。サラリーマンの世界以外を含めると、所得格差の拡大は一層鮮明になるのだ。

こうして考えると、なぜマンションの発売戸数が減少しているのかがみえてくる。所得格差の拡大によって、中低所得層は、マンションが買いたくても買えなくなっている。毎年、年収が減っていくような世の中では、恐ろしくて住宅ローンが組めない。庶民向けのマンションは売れないから、新規供給はおのずと細ってくる。

一方、格差拡大で生まれている高額所得者は、都心の高層タワーマンションを購入するが、そもそもそうした「勝ち組」は絶対数が多くないうえに、バブル崩壊後に生まれた都心未利用地の活用が、このところのマンションブームのなかで着実に進んだために、好立地の土地の取得が難しくなっている。だから、高い値段で売れる都心の高層タワーマンションは、作りたくてもなかなか作れないのだ。

所得の二極化というトレンドは、とりあえず今年も変わりそうもない。また、都心に新規の大規模な土地供給がある見込みもない。ということは、今年も都心のマンション高騰は続き、ますます庶民の手に届かないものになる一方で、都心から離れた郊外型のマンションは、立地条件によっては、値下がりが目立つようになるだろう。じつは、すでに昨年、和歌山県のマンションは坪単価が下がっているし、奈良県はマンション価格が下落に転じているのだ。



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