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2008年02月28日更新

<ベンチャースピリッツ>SBSホールディングス社長 鎌田正彦

M&Aで1+1を3にも4にもする

【プロフィール】
SBSホールディングス社長 鎌田正彦

1959年宮崎県延岡市生まれ。県立延岡高校在学中に様々なアルバイトを経験、一時期休学もする。79年佐川急便入社。
子会社立ち上げにもかかわり年収は1000万円を突破。87年に佐川急便を退社し関東即配(SBSホールディングスの前身)を設立。1都3県の即日配送から始め、メーリングサービス、人材提供事業などで業務を拡大する。03年ジャスダック上場。翌年、雪印物流を買収、05年には東急ロジスティックをグループに迎え入れる。物流を軸にM&Aで規模を拡大し、マーケティングから金融、不動産まであらゆるニーズに対応する企業グループを作り上げている。

創業20年で売上高1500億円に迫る勢いのSBSホールディングス。M&A(合併・買収)で規模を拡大し、競争力をつける経営戦略は、物流業界で異彩を放つ。「絶対につぶれない会社を作る」という信念のもと、物流からマーケティング、人材、情報、金融、環境まで事業領域を広げ、顧客企業が必要とする業務を総合的に請け負う企業グループへと成長した。

大手企業の物流子会社を買収して規模を拡大業界再編の先鞭をつける

2004年5月、物流業界を揺るがすニュースが流れた。雪印乳業の子会社で低温物流の大手である雪印物流(現フーズレック)を、SBSホールディングスが買収したのだ。
SBSは前年にジャスダック上場を果たしたとはいえ、当時は売上高193億円程度の規模。大手が圧倒的に有利といわれる物流業界にあって、単体で売上高400億円の雪印物流を傘下に収める買収劇に業界関係者は驚嘆した。

千葉・舞浜物流センター。2万5000種類以上もの商品を自動的に仕分けできる最新物流拠点だ。






鎌田正彦が「雪印乳業が雪印物流を手放す」という情報を耳にしたのは03年5月。SBSが手がけていない低温物流分野を補うためにも、鎌田は「絶対に手に入れなければならない」と決意した。このM&A成功には、鎌田の「買収先の社員を大切にする」という信条が相手先に評価されたことが大きく影響している。多くの企業がマネーパワーで買収を仕掛けるのに対して、鎌田はSBSが目指す方向を明示し、それを実現するため共に成長する仲間として迎え入れる方針を訴える。

鎌田はSBSの前身となる関東即配を87年に設立し、即日配送システムを構築して以来、猛然と業務の拡大に取り組んできた。株式上場を機に力を入れたのがM&A戦略である。雪印物流の買収により、冷凍品や冷蔵品を扱う低温物流への進出を果たした後、05年には東急ロジスティック(現ティーエルロジコム)を子会社化。同社は当時、東証2部上場を果たし東急グループの中核物流企業として売上高332億円を計上していた。この雪印物流に次ぐ大型M&Aによって、SBSは05年12月期の連結売上高が893億1900万円と、前年の2倍に拡大した。こうして、SBSは物流業界再編の台風の目となる。

「大手企業のほとんどは物流子会社を持っていますが、コスト削減を第一とする事業再編を考えた場合、物流機能を他社に委託するアウトソーシングに移行した方が効率的です。だから、物流子会社を手放す企業が増えると私は見込んでいました。様々な企業の物流子会社がグループに加われば、親会社の貨物を引き受けられるのはもちろん、経営力の強化が図れます」

雪印物流を買収した当時、国内で物流会社のM&Aはほとんど見られなかった。だが以降は、ハマキョウレックスが近鉄物流を子会社化し、日立物流がクラリオンの物流部門を譲り受けるなど動きが出てきた。鎌田がM&Aによる物流業界再編の先鞭をつけたといっても過言ではない。

「物流は規制に守られ、それほど順位に変動のない業界ですが、他業種に目を転じると、銀行や流通業界などは再編のただなかにありました。物流業界も含めて日本の経営環境は大きく変わっていくという確信がありましたね」



右/07年9月に竣工したばかりの埼玉・川越物流センター。物流システムも完備した最新型のサポートセンターだ。左/SBSホールディングスの10tトラック。即日配達、食品物流などの足として活躍する。


M&Aにより専門性の高い企業を傘下におさめ総合的なサービスを提供

SBSは現在、物流を中心とした総合アウトソーシング受託グループへと成長している。企業が費用削減のために業務の一部をまとめて外注するアウトソーシングの流れは進む一方だ。鎌田は顧客企業の潜在的なニーズをつかみ、80年代から3PLサービス事業を開していた。3PLとは「サード・パーティ・ロジスティクス」の略で、第三者である企業が、顧客である荷主企業の物流機能を一貫して請け負い、顧客単独ではできない効率的な管理を可能とする。

鎌田は物流サービス拡充のため倉庫業にも進出、90年代には倉庫の作業人員を確保する人材事業や、顧客ニーズにきめ細かく応えるためのシステム開発事業にも着手した。今や、物流を核にマーケティング、人材、情報、金融、環境の6事業を手がける。顧客企業が必要とするサービスを総合的に提供できると同時に、グループ内の各企業の専門性が高いことを強みとしている。

各事業で専門特化した企業を集約することも、M&A戦略の大きな狙いだ。物流を中心に倉庫、人材供給、コンサルティングといった専門性を持つ会社を傘下に置くことで経営の幹を太くしている。

「1つの事業には限界があります。たとえ今、うまくいっている事業も、5年後、10年後に同じ市場で勝負できるとは限りませんからね。その点、異なる強みを持つ会社を集めることで、多角的に可能性を追求することができます」

さらに、グループ企業として規模を拡大することは、物流業界で生き残るために欠かせない取り組みであるという。

「物流は市場が大きいけれども、6万社以上の企業がひしめき、競争を繰り広げています。しかも市場の大部分を大手数社が占め、資本力がなければ新たな仕事はなかなか取れない。規模を拡大し、倉庫や設備を充実させなければ生き残れません。例えば投資額が1000億円と3000億円では、人数も倉庫の規模も違う。大型設備を作ればそれだけ仕事をこなせ、ビジネスチャンスが広がります。SBSにとって急速な規模拡大は、大手企業に対抗するための手段です」

ジャスダック上場を目指したのも同じ理由からだ。上場前年の02年の売上高は183億円。社内にはこの程度の会社が上場しても仕方ないという声もあったが、鎌田の決意は固かった。

「会社を大きくするには、上場してシェアを伸ばしていくしかない」
強い信念がその後の急成長を可能にした。

物流が変わるという予感が
「つぶれない会社を作る」という目標に結びついた


鎌田と物流とのかかわりは79年の佐川急便入社に始まる。当初は留学資金を貯めることが目的だった。しかし日本経済の急成長を支える物流業のおもしろさに夢中になり、子会社の経営にも携わった。

28歳の時に退社して関東即配を設立。1都3県を主要エリアに即日配送業務を開始して事業を拡大し、その後もカタログやダイレクトメールなどを格安で届けるメーリングサービスを始めるなど、市場のすきまを開拓していった。

「佐川急便にいた頃、『トラックを1台出してほしい』とか『ウチの事業が軌道に乗るように物流面のアドバイスが欲しい』というような相談を顧客企業から受けることがあり、指定された区間で荷物を運ぶだけでは満たされないニーズがあることを肌で感じていました。関東即配を立ち上げた時、社員は3人。即日配送サービスが軌道に乗るまではぎりぎりの生活でしたが、物流は大きく変化していくという予感がありました」

鎌田はその予感を自ら現実のものとしていった。3PLサービスに着手し、総合物流企業、総合アウトソーシング受託グループへと飛躍させることに成功。現在、SBSのグループ企業は30社を超える。さらに今後、100社まで増やしたいと意欲を燃やしている。
この拡大戦略の根底を支えるのは「絶対につぶれない会社を作る」という鎌田の強い信念だ。

これには子供時代の強烈な経験が影響している。材木問屋を営む家に生まれ、比較的裕福な環境で育ったものの、鎌田が小学校2年生の時に会社が倒産。家財道具まで裁判所に差し押さえられた。倒産によって生活は一変した。幼い鎌田の心には、倒産というものが諸悪の根源なのだと刻みこまれた。同時に、「将来は絶対につぶれない会社を作る」という目標が芽生え、それが現在にまでつながっている。




急速な拡大はリスクを伴う
内部統制をしてひと息つく踊り場も必要


近年では敵対的買収が世間を騒がせるなどして、M&Aに好ましくない印象を持つ人も少なくないが、鎌田は買収当事者の双方に恩恵をもたらしてこそM&Aの意義があると強調する。

「連結売上高をかさ上げしたいというようなよこしまな動機ではうまくいきません。M&Aを成功させるポイントは目的。私たちの目的は、3PLの分野でお客さまの手助けをすることです。同じ志を持つ企業にグループに入ってもらえば、1+1が2ではなく、3にも4にもなります」

雪印物流、東急ロジスティックを買収した時も、鎌田はまず「同じ方向を目指す仲間として迎え入れる」ことを親会社に約束した。雪印乳業が外資系投資ファンドや名の知れた大手企業よりもSBSを売却先に選んだのは、鎌田の熱意と社員を大切にする思いが通じたからだ。

「親会社はお荷物を整理したいから売却するのではなく、物流を専門とする会社に預けた方が社員のためになるという気持ちで打診してきました。大切な会社を引き継ぐのだから、一緒に成長していくことこそが、売ってくれた会社への恩返しになると考えています」

鎌田の生い立ちや起業に対する思いをまとめたマンガ。現在2巻まで完成しており、社員に配られている。






グループとしての結束を固めるためにも、同じ目標を持てるように従業員へ常に働きかけているという。「もともと根っこが違うのだから、いきなり家族になろうとするのは無理」と考え、「みんなが同じ目標を持つ」ための環境づくりとして、東京・錦糸町の本社では約1060坪(1757㎡×2)のスペースにグループ各社が机を並べている。さらに鎌田は、拡大の速度を調整することもM&Aを成功させる秘訣と指摘する。

「ベンチャー企業は、一気に大きくなりすぎると予想外のリスクに弱くなる。手が回らなくなるほど一直線に成長させてはだめ。ひと息つく踊り場も必要です。当社の場合、03年に193億円だった売上高が3年で7倍の規模に拡大し、それに伴って人も増えています。仕組みを見直し、社員に語りかけるといった内部統制の期間が重要で、これが踊り場。人心を掌握できているか、リスク管理ができているかと、いつも社内を見渡しています」

連結売上高を06年12月期の1426億4300万円から、設立30周年を迎える2017年には5000億円に引き上げ、物流業界5位以内を目指すという。そのための拠点づくりにも着手した。目下の課題としているのが物流倉庫の開発だ。現在、オフィスビルなどの賃料が上昇しており、今後は周辺の商業施設や物流施設への投資が始まるのではないかと見ている。数年後には物流倉庫の賃料が高騰すると予想し、今のうちに開発しておこうと物流不動産に資金を投入する計画だ。

物流のアウトソーシング、M&Aによる規模拡大と鎌田の読みはことごとく当たってきただけに、物流不動産への投資も注目が集まる。これまで30年近く物流の世界に携わってきた鎌田は、絶対になくならない業界で勝負できるところが仕事の醍醐味だと強調する。

「なくなるかもしれない業界で勝負してもつまらない。この業界に入った頃は、ちょうど日本経済が急成長し、お世話になった佐川急便も右肩上がりで、物流が経済を支えている印象がありました。その後、3PL事業が隆盛となるなど物流業界も大きく変わりましたが、社会基盤がいくら発達しても絶対になくならないビジネスだと思っています。例えばインターネットが普及して今はネット通販が盛んですが、それに伴ってモノを運ぶ事業は必要ですから」

07年10月には郵政民営化により巨大物流企業が誕生し、加えて排ガス規制、駐車規制、ガソリン価格高騰など、物流企業をとりまく環境は厳しくなっている。鎌田はその大きな渦の中で大胆に勝負してきた。鎌田の次なる一手が、物流業界の新たな幕開けとなるかもしれない。
(敬称略)

【会社クレジット】
SBSホールディングス

【本社所在地】〒130-0012
東京都墨田区太平4-1-3オリナスタワー11F
【創 業】1987年12月
【T E L】03-3829-2222
【資本金】38億3393万円(06年12月末)
【売上高】1426億4300万円(06年12月期連結)
【従業員】4183人(グループ全体、06年12月末)
【事業内容】物流事業。物流にかかわるマーケティング、人材、情報、金融、環境事業
【URL】http://www.sbs-group.co.jp/


文・上田里恵


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