2008年02月14日更新
<小さな巨人>神奈川県大和市発 シコー技研
独自の思考で携帯電話機のバイブ機能を実現
超小型モーターの世界トップメーカー
【プロフィール】
社長 白木学(しらき・まなぶ)
1947年岐阜県生まれ。幼少時から精密機械の仕組みに興味を持つ。72年東京理科大学卒。同年、指導教授が設立したセコー技研に入社。76年有限会社シコー技研を設立し、85年に株式会社化。
超小型モーターの世界トップメーカー
【プロフィール】社長 白木学(しらき・まなぶ)
1947年岐阜県生まれ。幼少時から精密機械の仕組みに興味を持つ。72年東京理科大学卒。同年、指導教授が設立したセコー技研に入社。76年有限会社シコー技研を設立し、85年に株式会社化。

携帯電話機のバイブレーション機能を司る小型振動モーター。全長2.8mmの製品は、現時点で世界最小だ。
振動モーターの小型化でケータイのバイブ機能実現
ブルブル、ブルブル。ポケットにしまった携帯電話機が振動する。
この呼び出し音を鳴らさずに着信を知らせるバイブレーション機能は、今や世界で年間10億台も製造される携帯電話機のほとんどの機種に装備されている。
バイブ機能は、携帯電話機の内部に搭載された「小型振動モーター」が小刻みに震えることによって駆動する。この小型振動モーターを作り、携帯電話機にバイブ機能をもたせたのは、神奈川県大和市に本社を置くシコー技研。1994年に米大手携帯電話機メーカーのモトローラに初めて採用されて以来、世界中の携帯電話機に搭載されるようになった。類似品が出回った現在でも、シコー技研は世界シェア約20%を誇っている。
同社の白木学社長は「現在、月間2000万個を生産し、世界中の携帯電話機メーカーに出荷しています。類似品が出回っていますが、性能は今でもナンバーワンです」と胸を張る。白木社長が他社を寄せ付けない自信を持つのには理由がある。モーターだけでなく、それを製造する機械も自社で開発・製造しているからだ。他社の追随を許さぬシコー技研の技術力は、研究・開発に並々ならぬ力を注入することで生まれている。
予期せぬ海外からの発注2つの製品で世界企業に
白木社長がシコー技研を創業したのは76年。当初から独自製品の開発に注力していた。まず、日の目を見たのが「コアレスモーター」。通常の小型モーターは鉄芯にコードを巻き付ける方式なのに対し、コアレスモーターは巻くところがない空芯にコードを巻く「コアレスコイル」を応用した。以来、同社はコアレスモーターを核に事業を広げている。

(右)小型ファンモーターは現在、主にカーナビゲーションやプラズマテレビ、液晶プロジェクターなどに搭載されている。(左)シコー技研の主力製品になりつつあるオートフォーカスモーターは、監視カメラにも活用できる。
コアレスモーターをさらに応用して作ったのが「小型ファンモーター」だ。発熱する機器を冷却する機能をもつものの、国内の電気・情報機器メーカーには見向きもされなかった。
ところが94年のある日、この小型ファンモーターの性能の高さに目をつけた米大手半導体メーカーのインテルの技術担当幹部が突然訪れ、ノート用パソコンに搭載するCPU(中央演算処理装置)の冷却装置として採用することを約束してくれた。
突如として大量の注文が舞い込んだのだ。「日本国内では、製品よりも先に会社の規模を見られて不採用と判断されていました。ところが海外の企業は企業規模にかかわらず、いい製品を正当に評価してくれたのです」(白木社長)
シコー技研が小型振動モーターと小型ファンモーターの次に世に送り出したのは、携帯電話機向け小型カメラのオートフォーカスレンズ駆動用に開発した「オートフォーカスモーター」。レンズの四隅に配置して瞬時にレンズを駆動させ、ピントを自動的に合わせることができる優れものだ。
03年に幸先よく国内携帯電話機メーカーに採用されたため、その後の展開をにらんで先行投資した。だが、予想に反して受注数は思ったほど増えない。消費者に「ケータイのカメラにオートフォーカスのような高い機能はいらない」と判断されたためだ。
その後、05年までオートフォーカスモーターが脚光を浴びることはなかった。新製品に経営資源を集中したことがあだとなり、05年度の売上高は前年比46%ダウンの41億9100万円に落ち込んだ。
だが、オートフォーカスモーターは決して失敗ではなかった。06年の下期からカメラにオートフォーカス機能を搭載した携帯電話機が増え、受注数が一気に増えたのだ。
現在は月間数百万個を製造し、小型振動モーターと同程度の売り上げを誇るヒット商品に変貌した。先行して開発した優位性もあり、世界シェアの約50%を占めている。シコー技研の作り出した独創的な製品に、時代のニーズが追いついたわけだ。
開発者精神を凝縮した信条「誰もやらない。だからやる」
会社名の“シコー”は“思考”することに引っ掛けて白木社長が名付けた。社長室には「独創的に『思考』した製品を開発する」と記した企業目標が掲げられている。白木社長がこれほど独創性にこだわるのには理由がある。東京理科大学の学生だった70年代、日本のメーカーは高品質製品を生み出し、年々、輸出高を増やしていた。
ところが、主要な輸出相手国であるアメリカからは冷めた目が向けられる。「日本人は類似品を作るのはうまいが、独自の発想で製品を作り出すことはできない」。白木社長は「安保闘争の全盛期で元々アメリカに反発していたのに、そんなことを言われて憤りを感じました」と当時を振り返る。
それ以来、白木社長は今日まで独創性を重んじることを肝に銘じてきた。600以上の特許を保有するシコー技研は、研究・開発力で競合他社の類似品をまったく寄せ付けない。
04年には東証マザーズへの上場も果たした。白木社長が創業以来、唱え続けてきたのは「誰もやらない。だからやる」。この言葉を信条に思考する集団が作り上げた製品は今、世界中の人に認められている
【会社クレジット】
シコー技研
所在地 〒242-0001 神奈川県大和市下鶴間3854-1 テクノプラザ大和
TEL 046-278-3570
設立 1976年7月
資本金 14億5250万円(07年12月)
売上高 65億3900万円(06年12月期)
従業員数 80人
事業内容 小型コアレスモーター(ファンレスモーター、振動モーター、オートフォーカス・リニアモーター)などの開発・製造・販売
URL http://www.shicoh.com/
文・百瀬崇



