2008年02月07日更新
<1月号特集>旭山動物園の地域経済波及効果
旭山動物園の人気は、地元・旭川市の経済に好影響を与えている。特に、ホテルやみやげ物店、JR、レンタカーなどへの波及効果が顕著だ。衰態ぎみの北海道経済のなかにあって、喜びを隠せない関連業者の生の声を聞いた。
旭川市の観光客は前年比23%増
旭山動物園の年間入園者数は、2004年が約145万人、05年が約207万人、06年が約304万人と年間100万人のペースで増えている。旭山動物園ブームの勢いに乗る形で、旭川市への観光客も06年は約698万人と前年比23%増と大きく伸びた。
“集客効果”は旭川市内にとどまらない。隣接する富良野市や美瑛町などを含む上川支庁の06
年観光客も約1981万人で同7.8%増と好調だ。これらの地域の活況により、北海道全体の観光客数も06年に2%増となった。
旭川市商工観光部の山口泰宏次長は、「北海道の観光客は、ここのところ減り続けていました。前年を上回ったのは5年ぶりです。これは、旭山動物園効果と思っております」と言う。旭川市の観光客で、近年、特に目立ってきているのが、道外の人(約48%)と外国人。外国人の場合、06年は台湾(約1万人)、香港(約9000人)、シンガポール(約3500人)、韓国(約3000人)の順に多く、特にシンガポールは前年の約3倍まで膨れ上がっている。
夏のホテル稼働率は95~100%
観光客の増加にともない、ホテルも活気付いている。旭川駅のすぐそばにある旭川ターミナルホテルの総支配人で市内8つのホテルで組織する旭川シティホテル懇話会の座長を務める音尾正明氏が興奮気味に語る。
(左)旭川ターミナルホテル総支配人・音尾正明氏。(右)旭川ターミナルホテル支配人・赤坂久雄氏
「旭川は、通過型の観光客が多く、ホテルの稼働率はとても低い状態でした。しかし、旭山動物園の人気で宿泊客が急激に増えてきています。当ホテルも夏は95%~100%の稼働率とうれしい悲鳴を上げています。以前はビジネス客が多かったのですが、最近は家族連れの方が多くなりました」
旭川駅前にある旭川ターミナルホテル。
ビジネス客を主体としていた旭川ターミナルホテルは、シングル103室、ダブル17室、ツイン37室、和室4室という構成だった。旭山ブームを機に、ファミリー用に広めのシングルをダブルにしたり、和室をキッズルームがあるファミリールームに改造したりして、家族向けに工夫している。さらに新たなサービスも開始した。
「バスを1台購入して、旭山動物園までの無料送迎を行なうようにしたところ、大変ご好評をいただいております。
また、旭川動物園のホテルオリジナル切手も販売しています。動物園の許可を得て私が撮影した動物の写真を印刷した切手です。この切手を使って、旭川から友人に手紙を出している人も多いですよ」(旭川ターミナルホテル支配人・赤坂久雄氏)
来春オープン予定の東横イン。
6月から9月頃まで、旭川のホテルは満杯状態。今後も客足が伸びると予想して、新しいホテルの建設も始まっている。すでに旭川に進出している東横インが旭川駅前に2軒目のホテルを08年春にオープンさせる。ほかにも、3件のホテル建設計画が進められている。
また、旭川ターミナルホテルでは昨年4月に旭山動物園内でオープンしたレストラン「モグモグテラス」も経営。170席(うちテラス席54席)という規模ながら、初年度は2億2000万円を売り上げた。夏の間は連日、長い行列ができるほどの盛況ぶりだ。

07年は、持ち帰りメニューを増やすなどして7~8月に1日平均130万円の売り上げを記録、ソフトクリームも1日700個を販売するなど、さらに伸びて、年間売上高は前年比30%増が見込まれる。
「旭山動物園へのレストラン出店は、他社との競争の末に当ホテルが一番の交渉相手に選ばれました。最初のうちは『あんなのすぐにダメになる』と冷めた目で見る人もいましたが、ふたをあければビックリですね。今は、お客様が並ばなくてもいいようにするにはどうすればいいのかで悩んでいるほどです」(赤坂支配人)
旭山動物園の名がついたおみやげも売り上げを順調に伸ばしている。市立動物園のため、以前は「旭山動物園」の名を使う商品づくりを認めていなかったが、05年から旭川市内の事業者に限って使用を認めている。
地域経済活性化を目的にしているため、基本的に要綱に合致すれば許可されている。要綱で認められないケースは、「旭川市および旭山動物園の品位等を損なうおそれのあるもの」「消費者に誤解を与えるもの」など5項目がある。現在、400件865点の商品が認可されている(07年11月時点)。
旭川市商工観光部の鈴木毅次長は、「旭山動物園の名称を使った商品の売り上げ状況について車業者からアンケートを取っていますが、59.4%の会社が『かなりよい』『まあまあよい』と答えています。やはり旭山効果はかなり出ているようですね」
このほか、「思いがけないビジネスチャンスにつながった」「新たな販路が開拓できた」「商品開発ができた」など、評判は上々だ。旭山動物園東門にあるみやげ物店は、旭川物産協会会員など市内の16社が設立した新会社「旭川物産販売」が経営にあたり、年間5億円以上の売り上げがあるという。



旭山動物園号は子供たちに人気
JR北海道もうれしさを隠せない。札幌―旭川間の乗客が増えたため、07年のゴールデンウィークから特別列車「旭山動物園号」を走らせている。基本的に土日と祝日の運行だが、夏休みや春休みの間は毎日走らせている。全席指定で176人定員のところ、連日9割以上が埋まっているという人気ぶりだ。車両のデザインは、かつて旭山動物園の飼育係だった絵本作家・あべ弘士氏が担当。車両の改造費に4000万円を投じたが、すぐに元が取れそうな勢いだ。
JR北海道旭川支社販売グループの勝又康郎グループリーダー
乗客の反応について、JR北海道旭川支社販売グループリーダーの勝又康郎氏はこう語る。
「もう大人気で、自分たちも驚いています。子供たちのなかには、旭山動物園号が気に入ってしまって、旭川駅に到着しても『降りたくない』と言ってダダをこねる子もいるくらいなんです」
旭山動物園号のほかにも、JR北海道は旭山ブームに乗り列車を走らせる。札幌―旭川間の往復特急自由席と動物園までの往復バス代、動物園の入園券がセットになった「旭山動物園きっぷ」を3年前に発売したところ、こちらも非常に人気で、毎年、前年比3割増のペースで売り上げを伸ばしているレンタカー会社も旭山ブームに沸く。トヨタレンタカーリース旭川では、「空港や駅前の営業所では、利用客数が前年比10%増の状況が続いています」(広報)と言う。
旭山での建設実績が企業の信用を高める
旭山動物園の経済波及効果は、建設業にまで及んでいる。特殊鋼構造物施工の田島工業(旭川市)は、15年前から本州の特殊鉄骨業界に進出、マイカル三田ポロロッカアトリウム(兵庫県三田市)、丸の内オアゾ(東京都千代田区)などの大型施設を手がけてきた。ドームやアトリ
ウムなど、曲線を利用した大型施設が増えてきており、特殊鋼のデザインや施工に実績を持つ田島工業は、着実に売り上げを伸ばしている。
田島工業・田島喜幸社長
「旭山動物園から依頼が来たのは、04年に完成した『おらんうーたん館』の時です。本州でいろいろな構造物を造っている当社のことを知って、声をかけていただきました。その後も鉄に関する施設はほとんど当社にご依頼いただいています」(田島喜幸社長)
田島工業が手がけた「チンパンジーの森」
予算的には厳しかったが、企画段階から参加したため、コスト低減とデザイン・施工を両立できた。建築後もメンテナンス費用がかからないような工夫をしている。最も新しい施設は、06年夏にオープンした「チンパンジーの森」。
ジャングルをイメージして曲線を多用した施設だ。田島工業では、長年、遊具も手がけており、その技術が生かされた。「旭山動物園の知名度は絶大だと感心しています。どこに行っても、旭山の施設を手がけていると言えば信用されます」(同)
旭山動物園では、敷地内に併設していた遊園地を撤去し、新しい施設を作って、行動展示をさらに強化拡充していくことを発表している。田島工業をはじめ、地元の企業への経済波及効果がますます期待されているのである。
次へ>>旭山動物園ミニコラム
旭山動物園の年間入園者数は、2004年が約145万人、05年が約207万人、06年が約304万人と年間100万人のペースで増えている。旭山動物園ブームの勢いに乗る形で、旭川市への観光客も06年は約698万人と前年比23%増と大きく伸びた。
“集客効果”は旭川市内にとどまらない。隣接する富良野市や美瑛町などを含む上川支庁の06
年観光客も約1981万人で同7.8%増と好調だ。これらの地域の活況により、北海道全体の観光客数も06年に2%増となった。
旭川市商工観光部の山口泰宏次長は、「北海道の観光客は、ここのところ減り続けていました。前年を上回ったのは5年ぶりです。これは、旭山動物園効果と思っております」と言う。旭川市の観光客で、近年、特に目立ってきているのが、道外の人(約48%)と外国人。外国人の場合、06年は台湾(約1万人)、香港(約9000人)、シンガポール(約3500人)、韓国(約3000人)の順に多く、特にシンガポールは前年の約3倍まで膨れ上がっている。
夏のホテル稼働率は95~100%
観光客の増加にともない、ホテルも活気付いている。旭川駅のすぐそばにある旭川ターミナルホテルの総支配人で市内8つのホテルで組織する旭川シティホテル懇話会の座長を務める音尾正明氏が興奮気味に語る。
(左)旭川ターミナルホテル総支配人・音尾正明氏。(右)旭川ターミナルホテル支配人・赤坂久雄氏「旭川は、通過型の観光客が多く、ホテルの稼働率はとても低い状態でした。しかし、旭山動物園の人気で宿泊客が急激に増えてきています。当ホテルも夏は95%~100%の稼働率とうれしい悲鳴を上げています。以前はビジネス客が多かったのですが、最近は家族連れの方が多くなりました」
旭川駅前にある旭川ターミナルホテル。ビジネス客を主体としていた旭川ターミナルホテルは、シングル103室、ダブル17室、ツイン37室、和室4室という構成だった。旭山ブームを機に、ファミリー用に広めのシングルをダブルにしたり、和室をキッズルームがあるファミリールームに改造したりして、家族向けに工夫している。さらに新たなサービスも開始した。
「バスを1台購入して、旭山動物園までの無料送迎を行なうようにしたところ、大変ご好評をいただいております。
また、旭川動物園のホテルオリジナル切手も販売しています。動物園の許可を得て私が撮影した動物の写真を印刷した切手です。この切手を使って、旭川から友人に手紙を出している人も多いですよ」(旭川ターミナルホテル支配人・赤坂久雄氏)
来春オープン予定の東横イン。6月から9月頃まで、旭川のホテルは満杯状態。今後も客足が伸びると予想して、新しいホテルの建設も始まっている。すでに旭川に進出している東横インが旭川駅前に2軒目のホテルを08年春にオープンさせる。ほかにも、3件のホテル建設計画が進められている。
また、旭川ターミナルホテルでは昨年4月に旭山動物園内でオープンしたレストラン「モグモグテラス」も経営。170席(うちテラス席54席)という規模ながら、初年度は2億2000万円を売り上げた。夏の間は連日、長い行列ができるほどの盛況ぶりだ。

07年は、持ち帰りメニューを増やすなどして7~8月に1日平均130万円の売り上げを記録、ソフトクリームも1日700個を販売するなど、さらに伸びて、年間売上高は前年比30%増が見込まれる。
「旭山動物園へのレストラン出店は、他社との競争の末に当ホテルが一番の交渉相手に選ばれました。最初のうちは『あんなのすぐにダメになる』と冷めた目で見る人もいましたが、ふたをあければビックリですね。今は、お客様が並ばなくてもいいようにするにはどうすればいいのかで悩んでいるほどです」(赤坂支配人)
旭山動物園の名がついたおみやげも売り上げを順調に伸ばしている。市立動物園のため、以前は「旭山動物園」の名を使う商品づくりを認めていなかったが、05年から旭川市内の事業者に限って使用を認めている。
地域経済活性化を目的にしているため、基本的に要綱に合致すれば許可されている。要綱で認められないケースは、「旭川市および旭山動物園の品位等を損なうおそれのあるもの」「消費者に誤解を与えるもの」など5項目がある。現在、400件865点の商品が認可されている(07年11月時点)。
旭川市商工観光部の鈴木毅次長は、「旭山動物園の名称を使った商品の売り上げ状況について車業者からアンケートを取っていますが、59.4%の会社が『かなりよい』『まあまあよい』と答えています。やはり旭山効果はかなり出ているようですね」
このほか、「思いがけないビジネスチャンスにつながった」「新たな販路が開拓できた」「商品開発ができた」など、評判は上々だ。旭山動物園東門にあるみやげ物店は、旭川物産協会会員など市内の16社が設立した新会社「旭川物産販売」が経営にあたり、年間5億円以上の売り上げがあるという。



旭山動物園号は子供たちに人気
JR北海道もうれしさを隠せない。札幌―旭川間の乗客が増えたため、07年のゴールデンウィークから特別列車「旭山動物園号」を走らせている。基本的に土日と祝日の運行だが、夏休みや春休みの間は毎日走らせている。全席指定で176人定員のところ、連日9割以上が埋まっているという人気ぶりだ。車両のデザインは、かつて旭山動物園の飼育係だった絵本作家・あべ弘士氏が担当。車両の改造費に4000万円を投じたが、すぐに元が取れそうな勢いだ。
JR北海道旭川支社販売グループの勝又康郎グループリーダー乗客の反応について、JR北海道旭川支社販売グループリーダーの勝又康郎氏はこう語る。
「もう大人気で、自分たちも驚いています。子供たちのなかには、旭山動物園号が気に入ってしまって、旭川駅に到着しても『降りたくない』と言ってダダをこねる子もいるくらいなんです」
旭山動物園号のほかにも、JR北海道は旭山ブームに乗り列車を走らせる。札幌―旭川間の往復特急自由席と動物園までの往復バス代、動物園の入園券がセットになった「旭山動物園きっぷ」を3年前に発売したところ、こちらも非常に人気で、毎年、前年比3割増のペースで売り上げを伸ばしているレンタカー会社も旭山ブームに沸く。トヨタレンタカーリース旭川では、「空港や駅前の営業所では、利用客数が前年比10%増の状況が続いています」(広報)と言う。
旭山での建設実績が企業の信用を高める
旭山動物園の経済波及効果は、建設業にまで及んでいる。特殊鋼構造物施工の田島工業(旭川市)は、15年前から本州の特殊鉄骨業界に進出、マイカル三田ポロロッカアトリウム(兵庫県三田市)、丸の内オアゾ(東京都千代田区)などの大型施設を手がけてきた。ドームやアトリ
ウムなど、曲線を利用した大型施設が増えてきており、特殊鋼のデザインや施工に実績を持つ田島工業は、着実に売り上げを伸ばしている。
田島工業・田島喜幸社長「旭山動物園から依頼が来たのは、04年に完成した『おらんうーたん館』の時です。本州でいろいろな構造物を造っている当社のことを知って、声をかけていただきました。その後も鉄に関する施設はほとんど当社にご依頼いただいています」(田島喜幸社長)
田島工業が手がけた「チンパンジーの森」予算的には厳しかったが、企画段階から参加したため、コスト低減とデザイン・施工を両立できた。建築後もメンテナンス費用がかからないような工夫をしている。最も新しい施設は、06年夏にオープンした「チンパンジーの森」。
ジャングルをイメージして曲線を多用した施設だ。田島工業では、長年、遊具も手がけており、その技術が生かされた。「旭山動物園の知名度は絶大だと感心しています。どこに行っても、旭山の施設を手がけていると言えば信用されます」(同)
旭山動物園では、敷地内に併設していた遊園地を撤去し、新しい施設を作って、行動展示をさらに強化拡充していくことを発表している。田島工業をはじめ、地元の企業への経済波及効果がますます期待されているのである。
次へ>>旭山動物園ミニコラム



