2008年01月31日更新
<1月号特集>改革に必要な組織づくりと経営術
旭山動物園をひとつの会社と考えれば、経営面で中小企業の参考となる要素が随所に見られる。どのような組織を作り上げ、どんな経営手法で立て直しを図ったのか。〝株式会社旭山動物園社長.ともいうべき小菅園長の経営ノウハウに迫る。スター選手の養成より負けない組織づくりを
「組織づくりで大切なのは、スター選手を養成することではないんです。全員が、自分の持ち味を発揮できる組織づくりが大切だと思っています」こう強調する小菅園長は、長く柔道で鍛錬を重ねてきた。その時の経験を、組織づくりにも生かしている。
小菅園長は、かつて北海道大学柔道部で主将として活躍していた。小菅氏が主将になるまでは、旧帝国7大学が戦う「国立7大学柔道優勝大会」で常に負け組、ビリの成績だった。それまでの練習は、いかに強くなるか、いかにスター選手を作るかばかり考えて訓練していた。
主将になった小菅氏は考えた。「チームにスター選手がいると、その人に頼ってしまうあまりに、スター選手がこけるとチームもこけるのではないか」。そこで、全員が負けないチームづくりを目指した。「ある人が私に教えてくれました。1匹の虎を作るよりも、10匹の狼を作れと。狼が10匹も集まれば、虎でさえも倒すことができる。それが理想のチームではないかと思ったのです。そして、主将として参加した大会では優勝こそ逃したものの準優勝できました」(小菅園長)
思い起こせば、入園者減少にあえいでいた旭山動物園と連戦連敗を繰り返していた北海道大学柔道部の様子はよく似ている。どちらも逆境を跳ね返せた理由は、負けない組織づくりにあったと小菅園長は確信している。
やりたいことをやらせてあげる
動物園での組織づくりでいえば、飼育係をはじめ、それぞれの分野の人たちが自分の持ち味を発揮できるような組織が理想的だと小菅園長は思っている。そして、「能力があっても、その能力を伸ばそうとしない人」と「能力はないけれど、何とか頑張ろうと努力をしている人」がいれば、小菅園長は、後者を支持すると言う。
「
でも、少しでも手を抜くとダメです。『ここまで頑張ればいいや』と思った時点で停滞してしまいますから。次の目標をしっかり持って、実現に向けて努力をしている人を評価したいんです」(同)
そして、アイデアを出しても実行に移さない人に対しては怒るという。失敗を恐れてはいけない、成功は失敗を積み重ねた末に得るものだから、やる前におじけづいてしまう人には強く当たる。
「やりたいことをやらせてあげる」というのが小菅園長の方針だ。他の動物園は管理型の組織になっていることが多く、若い人の意見は、なかなか取り入れられない。旭山動物園もかつてはそんな傾向があったが、小菅園長は飼育係長になった時から改革に乗り出した。
例えば、当時はベテランの飼育係がずっと同じ動物の飼育を担当するため、若い飼育係は自分が望む動物をなかなか担当することができなかった。そこで、参議院のように3年ごとに半数ずつ担当する動物を交替するシステムを作りあげた。今では、飼育係の数が増えたのでこの方式が実践されていないが、担当が固定化した時には、また、このシステムを取り入れたいという
無駄な光熱費を削減し歳出は極力カットする
全国の公立動物園は、入園料収入は支出の約3割といわれ、多くは一般会計の中で運営されているが、旭山動物園は特別会計となっている。動物園の収入(入園料などの事業収入や繰入金)の中から、人件費、事業費、借金の返済等の経費をまかなっていかなければならない。施設改修が始まった96年から06年までに行った施設整備事業での借入金残額は約28億円。その返済原資も自分たちでまかなわなければならないのだ。
入園料は、市が政策として、大人が580円、中学生以下は無料。その他、障害者や要介護者、生活保護受給者と、旭川在住の70歳以上などが無料になっている。昨年度の無料入園者は約62万人に達した。それを補てんする意味で一般会計からの繰入があるが、昨年度は、繰入金なしで運営した。
「年間200万人が入園しても、完全黒字化は難しいですね。それは、無料入園者が20%以上に達していることや入園料が民間と比べて安いことが原因に挙げられます」(小菅園長)
一般会計予算に計上されている公立動物園ならいざ知らず、特別会計の動物園なので入園料を少し高くしたいというのが本音だろう。「僕は、収入不足になって、繰入金を追加して出してもらうのは、とても残念なことだと思っています。だから、収支のことが頭から離れたことがありません。
職員には徹底的に無駄をなくすことを言い続けています」(同) 施設の建設も次々と計画している。08年には、「オオカミの森」が登場する。北海道に実在していたオオカミの姿を再現する施設だ。どの計画も実現するには、資金調達が大きな課題となるため、「今後も改革の手をゆるめるわけにはいかない」と小菅園長は気を引き締める。
<1月号特集TOP>旭山動物園に学ぶ経営革新(下)はこちら
「組織づくりで大切なのは、スター選手を養成することではないんです。全員が、自分の持ち味を発揮できる組織づくりが大切だと思っています」こう強調する小菅園長は、長く柔道で鍛錬を重ねてきた。その時の経験を、組織づくりにも生かしている。
小菅園長は、かつて北海道大学柔道部で主将として活躍していた。小菅氏が主将になるまでは、旧帝国7大学が戦う「国立7大学柔道優勝大会」で常に負け組、ビリの成績だった。それまでの練習は、いかに強くなるか、いかにスター選手を作るかばかり考えて訓練していた。
主将になった小菅氏は考えた。「チームにスター選手がいると、その人に頼ってしまうあまりに、スター選手がこけるとチームもこけるのではないか」。そこで、全員が負けないチームづくりを目指した。「ある人が私に教えてくれました。1匹の虎を作るよりも、10匹の狼を作れと。狼が10匹も集まれば、虎でさえも倒すことができる。それが理想のチームではないかと思ったのです。そして、主将として参加した大会では優勝こそ逃したものの準優勝できました」(小菅園長)
思い起こせば、入園者減少にあえいでいた旭山動物園と連戦連敗を繰り返していた北海道大学柔道部の様子はよく似ている。どちらも逆境を跳ね返せた理由は、負けない組織づくりにあったと小菅園長は確信している。
やりたいことをやらせてあげる
動物園での組織づくりでいえば、飼育係をはじめ、それぞれの分野の人たちが自分の持ち味を発揮できるような組織が理想的だと小菅園長は思っている。そして、「能力があっても、その能力を伸ばそうとしない人」と「能力はないけれど、何とか頑張ろうと努力をしている人」がいれば、小菅園長は、後者を支持すると言う。
「
でも、少しでも手を抜くとダメです。『ここまで頑張ればいいや』と思った時点で停滞してしまいますから。次の目標をしっかり持って、実現に向けて努力をしている人を評価したいんです」(同)
そして、アイデアを出しても実行に移さない人に対しては怒るという。失敗を恐れてはいけない、成功は失敗を積み重ねた末に得るものだから、やる前におじけづいてしまう人には強く当たる。
「やりたいことをやらせてあげる」というのが小菅園長の方針だ。他の動物園は管理型の組織になっていることが多く、若い人の意見は、なかなか取り入れられない。旭山動物園もかつてはそんな傾向があったが、小菅園長は飼育係長になった時から改革に乗り出した。
例えば、当時はベテランの飼育係がずっと同じ動物の飼育を担当するため、若い飼育係は自分が望む動物をなかなか担当することができなかった。そこで、参議院のように3年ごとに半数ずつ担当する動物を交替するシステムを作りあげた。今では、飼育係の数が増えたのでこの方式が実践されていないが、担当が固定化した時には、また、このシステムを取り入れたいという
無駄な光熱費を削減し歳出は極力カットする
全国の公立動物園は、入園料収入は支出の約3割といわれ、多くは一般会計の中で運営されているが、旭山動物園は特別会計となっている。動物園の収入(入園料などの事業収入や繰入金)の中から、人件費、事業費、借金の返済等の経費をまかなっていかなければならない。施設改修が始まった96年から06年までに行った施設整備事業での借入金残額は約28億円。その返済原資も自分たちでまかなわなければならないのだ。
入園料は、市が政策として、大人が580円、中学生以下は無料。その他、障害者や要介護者、生活保護受給者と、旭川在住の70歳以上などが無料になっている。昨年度の無料入園者は約62万人に達した。それを補てんする意味で一般会計からの繰入があるが、昨年度は、繰入金なしで運営した。
「年間200万人が入園しても、完全黒字化は難しいですね。それは、無料入園者が20%以上に達していることや入園料が民間と比べて安いことが原因に挙げられます」(小菅園長)
一般会計予算に計上されている公立動物園ならいざ知らず、特別会計の動物園なので入園料を少し高くしたいというのが本音だろう。「僕は、収入不足になって、繰入金を追加して出してもらうのは、とても残念なことだと思っています。だから、収支のことが頭から離れたことがありません。
職員には徹底的に無駄をなくすことを言い続けています」(同) 施設の建設も次々と計画している。08年には、「オオカミの森」が登場する。北海道に実在していたオオカミの姿を再現する施設だ。どの計画も実現するには、資金調達が大きな課題となるため、「今後も改革の手をゆるめるわけにはいかない」と小菅園長は気を引き締める。
<1月号特集TOP>旭山動物園に学ぶ経営革新(下)はこちら



