ウェブ ベンチャー・リンク
WEB VENTURE LINK

経営情報誌「月刊ベンチャー・リンク」の週刊ウェブマガジンです
自ら人生を、ビジネスを、明日を切り拓こうという人を応援します

2008年01月31日更新

<ビジネスワイド>コンプライアンス経営のメリット

コンプライアンス経営で引き合い増加!

その年を表わす漢字に「偽」が選ばれたように、2007年は、“偽装”に明け暮れた1年だった。
コンプライアンス経営が叫ばれて久しいが、依然、中小企業の経営者には、“大企業だけが取り組むべきこと”と考える人が少なくない。コンプライアンス経営に取り組む中小企業の事例を紹介し、中小企業にとってのコンプライアンス経営の意義を考える。
ISO14001の認証取得を機に、環境報告書を作成

兵庫県西宮市の産業廃棄物処理業「大栄サービス」は、従業員44名という小さな会社だが、積極的にコンプライアンス経営に取り組んでいる。

本社写真西宮市の埋め立て地にある大栄サービス。1960年代から産業廃棄物処理に取り組む歴史ある企業だが、社員の平均年齢は、33.9歳と、若い社員が活躍する活気ある企業だ


そのひとつが、ISO14001の認証取得だ。同社は、2000年に認証を取得したが、単なる認証取得に留まらず、毎月、環境会議を開催し、制度に則って業務を遂行しているかを確認している。また、02年からは、こうした取り組みを取りまとめた「環境報告書」を発行している。ちなみに、この「環境報告書」は、06年には、社会貢献活動の報告を加えた「環境・社会報告書」へ、07年には、財務状況の報告も加えた「CSR報告書」へと内容を充実させている。

さらに、05年からは、環境省の「優良性評価制度*」に則り、産廃情報ネットに情報を開示しているほか、06年からは、廃棄物処理工場内にライブを設置し、誰でも同社のホームページから廃棄物の処理の様子が見られるようにするなど、情報開示にも積極的だ。

コンプライアンス経営を徹底するためには、それを組織全体に浸透させることが重要だ。同社では、従業員の経営への参画意識を高めることで、これを実現している。上述の環境会議に加え、毎月、業績報告会を開催、「売上高や利益などの数字を示し、従業員の経営に対する理解を深めると同時に、経営への参画意識も高めている」(赤澤社長)

赤澤健一社長母親の跡を継ぎ、2004年に社長に就任した赤澤健一社長。「コンプライアンス経営を徹底し、信頼性を高めることで、企業のブランド力を高めたい」と語る


さらに、経営者意識を育てるため、06年には、外部のビジネススクールと提携し、経営戦略の策定やマーケティングなどを学ぶための社内ビジネススクールも開講、グループ会社も含め、26名が受講した。
*優良性評価制度:産業廃棄物の適正処理と処理業者の優良化を目的に、環境省が環境省令に基づいて創設し、2005年4月1日から施行されている制度。評価基準は、遵法性、情報公開性、環境保全へのとりくみの3要素から構成されている。

ウェブカメラも環境報告書も、ブランド化に向けた必要な投資

こうした一連の取り組みにかかる費用は小さくない。環境報告書の作成やウェブカメラの設置などは、直接利益には結びつかないため、一見、ムダな投資とみなされがちだ。しかし、赤澤社長は、こられを「“ブランド戦略”のための必要な投資」と考える。

環境報告書2002年から作成しはじめた「環境報告書」は、2007年には、社会貢献活動や財務状況の報告なども含めた「CSR報告書」に発展した。同社の情報開示に積極的な姿勢が顧客の信頼を取り付けている





「今後、環境関連規制は、強化されても緩和されることはない。そうしたなか、お客様が廃棄物処理業者を選ぶ基準は、“安心して任せることができるかどうか”になる。しっかりとした処理体制を整えるとともに、その活動を公開していくことで、信頼できる廃棄物処理業としてのブランド力が高まる」(赤澤社長)と判断したのだ。

とはいえ、最初から赤澤社長の思いが社内に伝わっていたわけではなかった。
「環境報告書も、当初は、作成部門以外の社員は、“あんなもの作っているな”程度の認識しかなかった。そこで04年にすべての取引先に送付するように指示した。すると、取引先から“すばらしい取り組みだ”といった声が寄せられるようになり、それがキッカケで、社員も自分たちがやっていることの意義を認識するようになった」(赤澤社長)

信頼性アップでビジネスチャンスも拡大

顧客から評価の声が寄せられるようになったと同時に、引き合いも増えた。
「環境報告書を見て、当社に決めたといってくれる顧客が増え、ナショナルブランドとの取り引きも拡大した」(赤澤社長)
また、信頼性で選ばれるようになったことで、不当な値下げ要求が少なくなったという。 さらに、06年に設備の増設をした際にも、銀行の融資がすんなり受けられたほか、地元の反対運動もまったくなかったという。

「第10回環境コミュニケーション大賞」表彰状環境省・(財)地球・人間環境フォーラム主催の「第10回環境コミュニケーション大賞」で環境報告書部門の奨励賞を受賞するなど、「環境報告書」の発行により、同社の社会的な評価も高まっている

「廃棄物処理場の建設というと、決まって反対運動が起きるが、当社の場合、報告書に加え、地域の学校での環境教育や付近の清掃活動など、社会貢献活動に取り組んでいたこともあり、住民の理解が得やすかった。地元の自治会長さんは、“こうしたことをやっている大栄サービスさんだから信用しましょう”といってくれた」(赤澤社長)

このほか、07年には、環境省・(財)地球・人間環境フォーラム主催の「環境コミュニケーション大賞」の奨励賞を受賞するなど、社会的な評価も高まった。

直接売り上げに結びつかない投資が必要になるなど、コンプライアンス経営は、短期的には負担もあるが、ブランドの構築という長期的な視点に立てば強みになる。とくに、地域に根ざした事業を展開する中小企業にとって、地域での信用力強化のもつ意味は大きい。「コンプライアンス経営は、余裕のある大企業のもの」と考える中小企業の経営者は、今一度、考え直す必要があるだろう。

【会社概要】
社 名 大栄サービス株式会社
設 立 1974年3月
社 長 赤澤健一
資本金 7000万円
売上高 11億300万円(2006年度)
従業員数 44名
所在地 兵庫県西宮市鳴尾浜2-1-16
電 話 0798-47-7626
URL http://daieiservice.co.jp/



関連記事

このページのTopへ

月刊ベンチャー・リンクとは?

定期購読のご案内

メールマガジン

毎週、記事が更新されると、目次とアウトラインをメールでお知らせします。

Mail Magazine

好評!連載記事