ウェブ ベンチャー・リンク
WEB VENTURE LINK

経営情報誌「月刊ベンチャー・リンク」の週刊ウェブマガジンです
自ら人生を、ビジネスを、明日を切り拓こうという人を応援します

2008年01月24日更新

<小さな巨人>東京都文京区発 新光電子

音叉の技術を利用して精密に重さを量る

電子天びん、はかりのメーカー

代表取締役社長 岡崎稔氏【プロフィール】
代表取締役社長
岡崎稔(おかざき・みのる)氏
1943年岡山県生まれ。同志社大学法学部卒。66年石田衡器製作所(現・イシダ)入社。88年新光電子へ転籍。取締役関西事業所所長、常務取締役営業本部長を経て、93年より現職。日本計量振興協会理事など兼任。趣味は水泳、ゴルフ
独自の音叉式電子天びんで全国シェア3割を誇る

社員100人ほどの規模ながら、電子天びん業界で島津製作所などの大手に次ぎ約3割の全国シェアを持つ新光電子。特に防爆型電子はかりの分野ではおよそ5割のシェアを誇る。その強さの秘密は、独自に開発した「音叉式電子天びん」にある。

音叉式分析天びん「HTR-220」分析天びんの常識を破った音叉式分析天びん「HTR-220」。粉薬などを量る際、風で飛ばされないためのカバーも備えている。






1963年創業の同社は、83年に世界で初めて音叉式電子天びんを開発。企業や研究機関からの注文に対応し、各種の計測装置や設備を作ってきた。だが、80年代後半から90年代前半にバブル経済が終わりを迎えると注文が激減。建て直しのため、93年に岡崎稔氏が社長に就任した。

岡崎社長は、それまでの事業方針を転換。受注生産をやめて音叉式電子天びんに事業を絞り、自社ブランド「ViBRA(ビブラ)」として販売した。
「一時、経常損益がマイナスになったこともありましたが、01年以降は順調に売り上げを伸ばし、06年度は売上高28億円を計上できました」岡崎社長)

新光電子の音叉式電子天びんは現在、医薬品メーカーや調剤薬局、貴金属店、各種研究所、企業の品質管理・検査部門など広く使われている。

従来品の模倣はせず世界初の技術で勝負

電子天びんで使われる力センサー(力の大きさを計測する機器)はもともと、アメリカで開発された「ロードセル(電気抵抗線)式」と、欧州生まれの「電磁式」に大別されていた。
ロードセル式は、体重計や食料品店のはかりに用いられる最も一般的な重量センサーだ。構造が簡単で価格も安く抑えられるが、精度に限界がある。
電磁式は、精度が高く、100万分の1gレベルで重量を測定できる。微量の分析などに使う電子天びんの主流方式だが、消費電力が大きく、構造が複雑なため大型なものしか作れず、価格も高いという難点がある。

国産メーカーはこれらの技術を日本流に改良して製品化しているが、新光電子は違う。音叉を使った新しい方式「音叉式」を生み出したのだ。

音叉式の精度は電磁式に近く、1万分の1gまで正確に量れるうえに小型化も可能。ロードセル式ほどではないものの、電磁式よりは価格も安く作れる。また、簡素な構造で消費電力が少なく、電磁波などのノイズにも強いという。

その特性が最も生きるのは、爆発性ガスが発生する工場などだ。省電力で放出エネルギーが少ないために発火源となりえず、ほかの方式では危険とされる場所でも使える「本質安全防爆型電子はかり」を作ることができた。

音叉式電子天びんに実装される「音叉センサー」は、その名の通り、音叉の技術を利用している。金属音叉の振動数は極めて安定かつ正確だ。この振動特性をさらに引き出しやすくするため、2つの音叉を上下に組み合わせたものが「金属音叉振動子」である。

音叉振動子は、はかり機構部に組み込まれ、電源を入れると音叉振動子に取り付けられた圧電素子に電圧が加わり、あらかじめ一定の周波数で振動する。
計量皿に荷重が加わると、伝達機構を伝わって音叉振動子を引っ張り、周波数が変化する。その変化を圧電素子によって読み取り、CPU(中央演算処理装置)で重量信号に変換して重さを測定するという仕組みだ。小さな荷重でも大きく振動周波数が変化するので、高精度が得られる。

音叉式センサーの基本技術の特許はすでに切れている。だが、岡崎社長は「匠の世界の高度な技術がないと作れない」と自信を示す。実際、この方式を模倣できる企業はまだ出ていない。

世界最大の望遠鏡「すばる」の主要技術として採用される

130億光年の宇宙の彼方を観測するために、国立天文台が10年の歳月と400億円の巨費を投じて完成させた望遠鏡「すばる」。その主鏡は直径8m、厚さ20cm、重さ23tもあり、東京都庁から100km離れた富士山頂にあるテニスボールを識別できる能力をもつ。

世界最大の光学式赤外望遠鏡「すばる」国立天文台により、標高4200mのハワイ島マウケアナ山頂に造られた世界最大の光学式赤外望遠鏡「すばる」。



この精度を維持するためには、主鏡の歪みを10億分の1m単位で調整しなければならず、主鏡の裏側に261本の駆動装置を埋め込み、0.1秒ごとに歪みを監視する力センサーが必要とされた。

直径8mの巨大な「すばる」の主鏡直径8mの巨大な「すばる」の主鏡は、新光電子の音叉式センサーによって微調整されている(写真提供:国立天文台)。


「1本当たり最大150kgの荷重を受け、1g刻みで重さを感知するという厳しい条件を提示されました」(岡崎社長)。
だが、それを唯一クリアできたのが、新光電子の音叉式センサーだった。新光電子は今秋、日本初の「JIS認証電子式はかり」を発表。音叉式でありながら電磁式と同等の性能を持つ製品として、業界の注目を集めている。

10年には50億円の売上高を目指す新光電子。世界唯一の音叉式天びんメーカーは、さらなる技術向上と新たなビジネスモデルの創出で目標達成に邁進している。

アクチュエーター(駆動装置)機構部音叉センサーが組み込まれた「すばる」のアクチュエーター(駆動装置)機構部。センサー部分には匠の技が詰まっている。




【会社クレジット】
新光電子

【所在地】〒113-0034 東京都文京区湯島3-9-11
【TEL】03-3835-4577
【設立】1963年6月
【資本金】5000万円
【売上高】28億3000万円(07年3月期)
【従業員数】120人
【事業内容】分析用電子天びん、高精度電子天びん・はかり、汎用電子天びん・はかり、本質安全防爆型はかりなどの製造販売。はかり・分銅のJCSS校正サービス
【URL】http://www.vibra.co.jp/


文・百瀬崇



関連記事

このページのTopへ

月刊ベンチャー・リンクとは?

定期購読のご案内