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2008年01月24日更新

<莫邦富的視点>航空会社のプロモーションというサービス

10分間のサービスに求められるプロの精神

写真:莫邦富氏●莫 邦富(Mo Bang-Fu): 1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。
『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』などがある。
現在、朝日新聞be(土曜版)にて「mo@china」を連載中。博報堂スーパバイザ。東京経営者協会評議委員。東京メトロポリタンテレビジョン放送番組審議委員。中国山東省青島市開発区顧問。三菱UFJ信託銀行業務顧問。
http://www.mo-office.jp/
航空会社が空港で提供するプロモーションサービスについて

他の国の航空会社のことは知らないが、日本の航空会社では、国際便のVIP客に対して空港でプロモーションというサービスを行なっている。分かりやすく言えば、出発空港での見送りと到着空港での出迎えのサービスを提供するということだ。

チェックインしたVIPを専門の担当者が礼儀正しく空港のラウンジまでエスコートする。たまには、飛行機に乗り込むまで案内してくれる場合もあるが、たいていはラウンジまでである。

到着地でも同じだ。飛行機のドアの近くでVIP客を出迎え、空港を出るところまで案内する。実質的な問題を解決する、または便宜を図るためのサービスというよりも、重要なお客さんへの敬意を示すことで、こうしたハイエンドの乗客をしっかりとつかんでおくための営業だと理解したほうがいいかもしれない。

空港内の移動を案内するだけのサービスだから、客との接触時間は長くても10分程度だ。だがこの10分間あるかないかのサービスで、高く評価を得る担当者もいれば、まったく反対の結果になったケースもある。
私自身の体験を報告しよう。

どの分野にもプロの精神が求められる

これまで成田空港発着の日本航空の国際便を利用する際、成田空港でのプロモーション担当者は年配の人が多かった。口に出したことはなかったが、彼らの給与水準と仕事内容を考えると、「道理で日本航空は業績が悪いわけだ。こんなところに給料の高い人を投入するから利益がふっ飛んでしまうのだ。もう少し人件費の安い、若い女性にやらせたらいいのに」と内心では思っていた。

実際、上海の浦東空港でプロモーションを担当する日本航空の若い現地女性社員が健気に働いていたのを見て感心したこともあり、こうした若い女性でも十分にやれる仕事だと自分の考えには自信をもっていた。

07年に入ってから、成田空港でプロモーションを担当する若い女性が増えてきた。その時、私は自分のこれまでの考えは浅かったかもしれないと反省しはじめた。これらの女性の仕事ぶりに不満を感じたからである。
07年12月、成田から北京に移動した時の体験は、どんな仕事にもプロ精神が求められるということを教えてくれた。

成田空港で私をエスコートした女性は笑顔で迎えてくれ、中国人であることがわかるとひと言中国語で挨拶してくれた。これは点数を稼いだ。しかし、次の言葉でせっかく稼いだ点数を吹き飛ばしてしまった。
「日本語がお上手ですね」
と褒めてくれたのだ。たどたどしく日本語を話す外国人に向かって、日本人がよく口にする言葉だ。彼女の褒め言葉を聞き、私は「そうですか」と苦笑いして、それ以上は言葉が続かなかった。

その時、以前にベテランの担当者が案内してくれた時のことを思い出した。雑談のなかで、私がしばらく前に発表したエッセイやコラムのことを話題にしたので、感心した私がどこで読んだのかと確かめると、「じつは今日、はじめて莫さんを担当するので、事前にインターネットを通して莫さんのお書きになった作品を調べて、読ませていただきました」。その後は歩きながら、ラウンジに着くまで関心をもつテーマを巡って意見交換をした。エスコート以上のサービスを提供してくれた例だ。

一方、その日の夜、北京に到着した私を出迎えたのは、成田の女性担当者とそうは変わらない若い女性だった。ちょうど民主党などの政治家やアメリカの政治家、高官たちが相次いで北京入りしていた頃なので、「忙しいでしょう」と声を掛けると、「出迎える客が多い」と笑顔で答が戻ってきた。そこで会話をしながら歩くと、じつは日本で私の出演したテレビ番組を見たことがあるなどと親しみを上手に見せてくれた。さらに話を聞くと、事前にやはりインターネットを通して私のことを調べたらしい。

そこで私ははっと思いついた。ひょっとしたら、はじめて担当するお客さんについて事前に調べて予備知識を身につけることは、航空会社が求める基本作業ではなく、それぞれの現場の担当者のノウハウに過ぎないのかもしれない。いい先輩について勉強した若手社員は手際よくそのノウハウを継承しているが、運の悪い場合は自分で試行錯誤を重ねてやっていくしかない。

さらに、そこで思索が飛躍する。無形のサービスにはじつは規範という形がついている。はじめてのお客を迎える場合は、事前にその客についての基本知識を身につけたほうがいい。会社が担当者に配るVIP客の紹介資料にもその人についての簡単な紹介を記入するなどの工夫が必要かもしれない。

わずか10分間足らずのサービスにもプロの精神と顧客の満足度が求められているのだと再認識した。一を推して三を知るという中国のことわざのように、他の業界でも同じことが求められている。


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