2008年01月17日更新
<ビジネスワイド>株式会社みやじ豚
かっこよくて、感動があって、稼げる!
農業を新3K産業へと変革する
農業を新3K産業へと変革する
ともすれば日本の農業は「きつい、きたない、かっこ悪い、くさい、稼げない、結婚できない」6K産業といわれているのが現状。株式会社みやじ豚の宮治勇輔社長は、今年30歳。神奈川県藤沢市で養豚農家の2代目として、暗いイメージがつきまといがちな農業を変革していこう挑戦を開始している。
農家と消費者が切り離されていることが問題
宮治社長の父親は、大規模な養豚場の共同経営をしながら、自らの豚舎でみやじ豚を育てる生粋の養豚農家。ただ長男でありながら、宮治社長自身は実家を継ぐ気がなく、大学卒業とともに大手人材派遣会社へ就職をする。
農業を「かっこよくて・感動があって・稼げる」3K産業にしたいと考える宮治勇輔社長
「できれば自らの手により起業したい」との夢をもっていた宮治社長は、毎朝早く起き、ビジネスをはじめさまざまな勉強を重ねていった。そこであらためて知ったのが、「農業をはじめとした一次産業の現状」だった。
たとえば、産物の価格の決定。それは味ではなく規格と相場によって決まる。農家をはじめ生産者がどんなに精魂こめて野菜を作り、豚を育てても、規格外であるならば価格はつかず、さらには時の相場によって価格の高低が決まってしまう。
農家自体は生産のみに関わっているだけで、一切消費者の顔、声を見聞きすることはないこともわかった。じつは宮治社長にも、同様の体験があった。大学在学時に、友人を自宅に招いて開催したバーベキューで、みやじ豚をふるまう。
「こんなにうまい豚は食べたことがない!」 という言葉に感動する一方で「この豚肉はどこに行けば買えるの?」という素朴な問いに答えられず、自分の豚肉が卸会社に渡してから、どう流通して誰が食べているのかわからないことにショックを受けた。
「その友人とのバーベキューは、いまとなって自分の大きな原点になっています。だから、毎朝の勉強で第一次産業を知るにつけ、まず生産から、消費者が口にするまでの流れを、農家が一貫してプロデュースする仕組みづくりが必要だと思いましたし、価格の設定や消費者の声を直接聞いていくことが、現在抱える問題の解決策だということが実感できました」
現在、日本の農業従事者人口は年に7万人も減少しているという。大きな要因である高齢化と後継者不足は、農業自体に魅力がない証左であり、その問題の根本は農家と消費者が完全に切り離されていることにある。
そう確信した宮治社長は、実家の養豚業を何とかしたいと2005年6月に勤務していた会社を退職した。同じくして、大手外食企業に勤めていた弟も退職し生産を担当。宮治社長は当初の思い通りに、生産から消費者の口に入るまでを一貫してプロデュースすることに挑みはじめた。06年9月には法人化し、株式会社みやじ豚を設立。代表取締役に就任し、現在に至っている。
ストレスのない育て方が味の決め手
みやじ豚は、くさみがまったくなく、やわらかくてジューシー。かむほどにうまみと甘みが口の中に広がるという。それは父親の代から力を入れてきた、ストレスのない育て方によるものだという。
兄弟が同じ部屋で飼われるためストレスが極めて少ない。「腹飼い」と呼ばれるめずらしい飼育法だ
「豚というのは、たとえば20頭を一緒に飼うと必ず1から20までの序列ができます。序列ができるまで、諍いがおこる。それは豚にとってはすごいストレスなのですね」
みやじ豚では、全頭数650頭と国内における平均規模の半数以下の頭数で育てている。一般的な農場では、30頭前後を同じ部屋で一緒に飼うのが普通というが、みやじ豚は10頭前後の兄弟だけを同じ部屋で育てる。「腹飼い」という他ではあまり見られない飼育法だ。また成長とともに豚舎を変えていくのだが、普通は生まれてから出荷するまでに4~5回。しかしみやじ豚は、ほとんど豚舎を変えない。
「豚舎を変えるたびに、新しい豚が同じ部屋になり、そのたびに序列のための諍いがはじまる。豚はつねにストレスにさらされているわけです」
豚舎が変わらず、変えたとしてもつねに兄弟とともに飼育されるみやじ豚は、ストレスがなくのびのびと育つ。どちらの肉が上質かはおのずとわかってくるというものだ。
バーベキューからコミュニティ作りを
みやじ豚に自信をもつ宮治社長が、最初に取り組んだのは、メールマガジンの発行とバーベキューの継続的な開催だった。とくにバーベキューについては、近所の観光農園を借りて、現在まで月に1度開催してきた。それは小さな単位であるが、自らが肉の価格を決め、場の演出し、食した消費者の生の声が聞けるという宮治社長の理想形があった。「これはおいしい」と参加者が肉を求め、クチコミでみやじ豚の知名度は広がっていった。
「バーベキューで直接会った方を中心に、ひとつのコミュニティを作り上げてきました」というとおりに宅配を使った直接販売が主力。直販率が高い分、利益率はあがるのだが、宮治社長の夢はそれだけではない。さらに販売チャネルを広げようと奮闘中だ。
たとえば「肉単品の宅配では料金も高くつく」ことから、肉だけではなく野菜も、牛乳も一緒にできないかと、生協などの大手直販業者を研究し、同様のコミュニティ作りをめざす意向だ。そのうえで、東京にアンテナショップとしてレストランを出店し、みやじ豚だけではない湘南地域の食材によるメニューを開発し、大いにPRしていきたいと考える。
農業をつうじて地域の活性を図る
一方で農家の活性化を図るためには、地域の活性も必要だ。そう感じる宮治社長は、地元のNPO法人「湘南スタイル」と共同し、湘南地域のポータルサイトを運営している。湘南地域において頑張る農家を訪ね、コンテンツとしてまとめているのだ。
1頭の母親から生まれる頭数はおよそ10頭前後だが、時として4頭になることも。生産者にとってはリスクとなるが、それでも兄弟だけの飼育はやめないという
「たしかに湘南という名にはブランド力があります。だけど、じゃ湘南の有名な物産といったらなんだと聞かれたら答えられる人はあまりいないと思います。逆に湘南という名前に乗っかって、自分たちのブランドを作ってこなかったのではと感じています」
宮治社長が考えるブランド力とは、「名指しで買われる商品」だという。どこの肉でもない。みやじ豚の肉が食べたいといわれることだ。それがみやじ豚だけではなく、湘南地域に名指しで買われる商品があふれたとき、在住農家はもちろんのこと湘南全体の活性が図られているはずと考えているのだ。
農業をはじめとする第一次産業を、息子が父親の職業を胸を張っていえる「かっこよくて・感動があって・稼げる」3K産業にしたい。宮治社長の思いは少しずつではあるが実を結びはじめている。
株式会社みやじ豚
所在地 神奈川県藤沢市打戻539
連絡先 0466-48-2331
設立 2006年9月1日
代表 宮治勇輔・湘南バーベキュー文化創造事業
宮治社長の父親は、大規模な養豚場の共同経営をしながら、自らの豚舎でみやじ豚を育てる生粋の養豚農家。ただ長男でありながら、宮治社長自身は実家を継ぐ気がなく、大学卒業とともに大手人材派遣会社へ就職をする。
農業を「かっこよくて・感動があって・稼げる」3K産業にしたいと考える宮治勇輔社長「できれば自らの手により起業したい」との夢をもっていた宮治社長は、毎朝早く起き、ビジネスをはじめさまざまな勉強を重ねていった。そこであらためて知ったのが、「農業をはじめとした一次産業の現状」だった。
たとえば、産物の価格の決定。それは味ではなく規格と相場によって決まる。農家をはじめ生産者がどんなに精魂こめて野菜を作り、豚を育てても、規格外であるならば価格はつかず、さらには時の相場によって価格の高低が決まってしまう。
農家自体は生産のみに関わっているだけで、一切消費者の顔、声を見聞きすることはないこともわかった。じつは宮治社長にも、同様の体験があった。大学在学時に、友人を自宅に招いて開催したバーベキューで、みやじ豚をふるまう。
「こんなにうまい豚は食べたことがない!」 という言葉に感動する一方で「この豚肉はどこに行けば買えるの?」という素朴な問いに答えられず、自分の豚肉が卸会社に渡してから、どう流通して誰が食べているのかわからないことにショックを受けた。
「その友人とのバーベキューは、いまとなって自分の大きな原点になっています。だから、毎朝の勉強で第一次産業を知るにつけ、まず生産から、消費者が口にするまでの流れを、農家が一貫してプロデュースする仕組みづくりが必要だと思いましたし、価格の設定や消費者の声を直接聞いていくことが、現在抱える問題の解決策だということが実感できました」
現在、日本の農業従事者人口は年に7万人も減少しているという。大きな要因である高齢化と後継者不足は、農業自体に魅力がない証左であり、その問題の根本は農家と消費者が完全に切り離されていることにある。
そう確信した宮治社長は、実家の養豚業を何とかしたいと2005年6月に勤務していた会社を退職した。同じくして、大手外食企業に勤めていた弟も退職し生産を担当。宮治社長は当初の思い通りに、生産から消費者の口に入るまでを一貫してプロデュースすることに挑みはじめた。06年9月には法人化し、株式会社みやじ豚を設立。代表取締役に就任し、現在に至っている。
ストレスのない育て方が味の決め手
みやじ豚は、くさみがまったくなく、やわらかくてジューシー。かむほどにうまみと甘みが口の中に広がるという。それは父親の代から力を入れてきた、ストレスのない育て方によるものだという。
兄弟が同じ部屋で飼われるためストレスが極めて少ない。「腹飼い」と呼ばれるめずらしい飼育法だ「豚というのは、たとえば20頭を一緒に飼うと必ず1から20までの序列ができます。序列ができるまで、諍いがおこる。それは豚にとってはすごいストレスなのですね」
みやじ豚では、全頭数650頭と国内における平均規模の半数以下の頭数で育てている。一般的な農場では、30頭前後を同じ部屋で一緒に飼うのが普通というが、みやじ豚は10頭前後の兄弟だけを同じ部屋で育てる。「腹飼い」という他ではあまり見られない飼育法だ。また成長とともに豚舎を変えていくのだが、普通は生まれてから出荷するまでに4~5回。しかしみやじ豚は、ほとんど豚舎を変えない。
「豚舎を変えるたびに、新しい豚が同じ部屋になり、そのたびに序列のための諍いがはじまる。豚はつねにストレスにさらされているわけです」
豚舎が変わらず、変えたとしてもつねに兄弟とともに飼育されるみやじ豚は、ストレスがなくのびのびと育つ。どちらの肉が上質かはおのずとわかってくるというものだ。
バーベキューからコミュニティ作りを
みやじ豚に自信をもつ宮治社長が、最初に取り組んだのは、メールマガジンの発行とバーベキューの継続的な開催だった。とくにバーベキューについては、近所の観光農園を借りて、現在まで月に1度開催してきた。それは小さな単位であるが、自らが肉の価格を決め、場の演出し、食した消費者の生の声が聞けるという宮治社長の理想形があった。「これはおいしい」と参加者が肉を求め、クチコミでみやじ豚の知名度は広がっていった。
「バーベキューで直接会った方を中心に、ひとつのコミュニティを作り上げてきました」というとおりに宅配を使った直接販売が主力。直販率が高い分、利益率はあがるのだが、宮治社長の夢はそれだけではない。さらに販売チャネルを広げようと奮闘中だ。
たとえば「肉単品の宅配では料金も高くつく」ことから、肉だけではなく野菜も、牛乳も一緒にできないかと、生協などの大手直販業者を研究し、同様のコミュニティ作りをめざす意向だ。そのうえで、東京にアンテナショップとしてレストランを出店し、みやじ豚だけではない湘南地域の食材によるメニューを開発し、大いにPRしていきたいと考える。
農業をつうじて地域の活性を図る
一方で農家の活性化を図るためには、地域の活性も必要だ。そう感じる宮治社長は、地元のNPO法人「湘南スタイル」と共同し、湘南地域のポータルサイトを運営している。湘南地域において頑張る農家を訪ね、コンテンツとしてまとめているのだ。
1頭の母親から生まれる頭数はおよそ10頭前後だが、時として4頭になることも。生産者にとってはリスクとなるが、それでも兄弟だけの飼育はやめないという「たしかに湘南という名にはブランド力があります。だけど、じゃ湘南の有名な物産といったらなんだと聞かれたら答えられる人はあまりいないと思います。逆に湘南という名前に乗っかって、自分たちのブランドを作ってこなかったのではと感じています」
宮治社長が考えるブランド力とは、「名指しで買われる商品」だという。どこの肉でもない。みやじ豚の肉が食べたいといわれることだ。それがみやじ豚だけではなく、湘南地域に名指しで買われる商品があふれたとき、在住農家はもちろんのこと湘南全体の活性が図られているはずと考えているのだ。
農業をはじめとする第一次産業を、息子が父親の職業を胸を張っていえる「かっこよくて・感動があって・稼げる」3K産業にしたい。宮治社長の思いは少しずつではあるが実を結びはじめている。
株式会社みやじ豚
所在地 神奈川県藤沢市打戻539
連絡先 0466-48-2331
設立 2006年9月1日
代表 宮治勇輔・湘南バーベキュー文化創造事業



