2007年12月20日更新
<莫邦富的視点>新・新幹線での読書時間(1)
世界と比較された時の日本
●莫 邦富(Mo Bang-Fu): 1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。
『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』などがある。
現在、朝日新聞be(土曜版)にて「mo@china」を連載中。博報堂スーパバイザ。東京経営者協会評議委員。東京メトロポリタンテレビジョン放送番組審議委員。中国山東省青島市開発区顧問。
http://www.mo-office.jp/
●莫 邦富(Mo Bang-Fu): 1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』などがある。
現在、朝日新聞be(土曜版)にて「mo@china」を連載中。博報堂スーパバイザ。東京経営者協会評議委員。東京メトロポリタンテレビジョン放送番組審議委員。中国山東省青島市開発区顧問。
http://www.mo-office.jp/
竹中氏の鋭い指摘
このコラムの前身は、ネクストワンで連載していた「新華僑作家・莫邦富の視点」だ。いつも殺人的なスケジュールに追われる私にとって、飛行機や新幹線を利用しての移動時間は貴重な休憩や学習のための時間である。そのため飛行機内や新幹線内ではたいてい2つのことしかしていない。寝るか読むかである。
特に新幹線の移動中に読むことが多い。自分で読んで感心したものをぜひ読者の皆さんにも知っていただきたいと思い、前のコラムには時々「新幹線での読書時間」と題して、私の読後感をいろいろと書いてきた。
今回のコラムにも、このサブコラムを導入したい。これまでのとの継承関係を考え、その名を「新・新幹線での読書時間」とした。
前日、京都で開催される企業の経営会議に出席するための新幹線の中で、新潮社から出ている雑誌「フォーサイト」2007年11月号を読んだ。その中でたいへん印象に残ったのが、小泉政権時代、金融相を務めた竹中平蔵氏のインタビュー「ココで改革をやめれば日本は危機に直面する」だ。
その改革堅持論はさておいて、竹中氏が指摘したいくつかの問題に私は関心をもった。
まず、格差の問題である。
格差が問題になっていることを指摘したうえで、竹中氏は「本当の問題は日本国内の格差などではない。日米の格差の拡大です。現在、日本よりも生活水準が3割高いアメリカが、3%の経済成長を続けています。日本の成長率が2%のままでは、日米の差は開いていくばかりです。中国と日本の差が収斂し、やがて中国に抜かれる心配をしますが、むしろ日米の差が極度に拡大していくことに危機感をもたなければならないのです」
次に、知価社会を迎えた日本の国際競争力に焦点を当てた。竹中氏は、「国際競争力を高めるには、大学に競争力がなければならない。東京大学の世界におけるランキングは20位、京都大学が30位、慶応義塾大学は100位です。GDP(国内総生産)世界2位の日本の大学であれば、せめてトップ5には入りたい」
金融立国にも話が及んだ。東京をアジアの金融センターにすべきだ、と竹中氏は主張する。理由は「もの作りは重要ですが、500兆円のGDPの4分の1を占めるに過ぎない。4分の3は広義のサービス産業が占めている」からだ。しかし、世界の金融都市ランキングかのトップはロンドン、次がニューヨーク、シンガポール、香港と続く。東京は9位で、20位の上海の猛追を受けている。
その指摘を読みながら、朝日新聞のコラムmo@chinaに書いた自分の、東証に対する批判を思い出した。2006年だけで、86の中国企業が香港を含む海外証券市場に上場した。ロンドンには74社、シンガポールには116社、マレーシアにも2社が上場している。しかし、そのコラムが掲載された06年5月の時点で、ニューヨーク、ロンドン、香港と並ぶ東京証券取引所に上場した外国企業は、先月上場したばかりの初の中国本土系会社アジア・メディアを含めてわずか25社しかない。「東京証券取引所が巨大なローカル証券市場に見えてしまう」と私は辛口の批評を下した。
グローバル最強企業ランキング
「フォーサイト」誌には、「ニューズウィーク日本版」10月10日号の「グローバル最強企業ランキング」2007年版の一部が引用されていた。それによると、営業利益ベースで最も稼いだ企業は、第1位がエクソンモービル(米)、第2位がゼネラル・エレクトリック(米)、第3位がロイヤル・ダッチ・シェル(オランダ)だ。上位20社を国別に分類すると、アメリカが9社、ロシア、フランスが2社、日本、ブラジル、ノルウェーが1社ずつ。GDPでは世界第2位の日本は、トヨタ自動車が12位に入っているのみである。
新幹線が東京駅に滑り込み、日帰りの小旅行が終わりを告げる。そこでその前日である2007年11月28日の朝日新聞に掲載された、カリフォルニア大学サンタバーバラ校のヘンリー・ヤン学長が、「大学の試練と挑戦」と題する東京大学・朝日新聞社共同シンポジウムにおいて、「面白いデータとして」高等教育における女性リーダーを紹介した発言の一部を引用したい。
米国の主要大学62校のうち、14人が女性学長だ。MIT(マサチューセッツ工科大)、ハーバード、プリンストンなどの大学もそうだ。一方で日本は87の国立大学のうち、トップが女性なのはお茶の水女子大の郷通子学長だけだ、という。
東京外国語大学では、つい07年8月まで女性が学長を務めていた。池端雪浦先生だ。シンポジウムがもう少し早かったら、日本はもうすこし面目を保つことができたかもしれないが、問題の深さに変わりはない。
このコラムの前身は、ネクストワンで連載していた「新華僑作家・莫邦富の視点」だ。いつも殺人的なスケジュールに追われる私にとって、飛行機や新幹線を利用しての移動時間は貴重な休憩や学習のための時間である。そのため飛行機内や新幹線内ではたいてい2つのことしかしていない。寝るか読むかである。
特に新幹線の移動中に読むことが多い。自分で読んで感心したものをぜひ読者の皆さんにも知っていただきたいと思い、前のコラムには時々「新幹線での読書時間」と題して、私の読後感をいろいろと書いてきた。
今回のコラムにも、このサブコラムを導入したい。これまでのとの継承関係を考え、その名を「新・新幹線での読書時間」とした。
前日、京都で開催される企業の経営会議に出席するための新幹線の中で、新潮社から出ている雑誌「フォーサイト」2007年11月号を読んだ。その中でたいへん印象に残ったのが、小泉政権時代、金融相を務めた竹中平蔵氏のインタビュー「ココで改革をやめれば日本は危機に直面する」だ。
その改革堅持論はさておいて、竹中氏が指摘したいくつかの問題に私は関心をもった。
まず、格差の問題である。
格差が問題になっていることを指摘したうえで、竹中氏は「本当の問題は日本国内の格差などではない。日米の格差の拡大です。現在、日本よりも生活水準が3割高いアメリカが、3%の経済成長を続けています。日本の成長率が2%のままでは、日米の差は開いていくばかりです。中国と日本の差が収斂し、やがて中国に抜かれる心配をしますが、むしろ日米の差が極度に拡大していくことに危機感をもたなければならないのです」
次に、知価社会を迎えた日本の国際競争力に焦点を当てた。竹中氏は、「国際競争力を高めるには、大学に競争力がなければならない。東京大学の世界におけるランキングは20位、京都大学が30位、慶応義塾大学は100位です。GDP(国内総生産)世界2位の日本の大学であれば、せめてトップ5には入りたい」
金融立国にも話が及んだ。東京をアジアの金融センターにすべきだ、と竹中氏は主張する。理由は「もの作りは重要ですが、500兆円のGDPの4分の1を占めるに過ぎない。4分の3は広義のサービス産業が占めている」からだ。しかし、世界の金融都市ランキングかのトップはロンドン、次がニューヨーク、シンガポール、香港と続く。東京は9位で、20位の上海の猛追を受けている。
その指摘を読みながら、朝日新聞のコラムmo@chinaに書いた自分の、東証に対する批判を思い出した。2006年だけで、86の中国企業が香港を含む海外証券市場に上場した。ロンドンには74社、シンガポールには116社、マレーシアにも2社が上場している。しかし、そのコラムが掲載された06年5月の時点で、ニューヨーク、ロンドン、香港と並ぶ東京証券取引所に上場した外国企業は、先月上場したばかりの初の中国本土系会社アジア・メディアを含めてわずか25社しかない。「東京証券取引所が巨大なローカル証券市場に見えてしまう」と私は辛口の批評を下した。
グローバル最強企業ランキング
「フォーサイト」誌には、「ニューズウィーク日本版」10月10日号の「グローバル最強企業ランキング」2007年版の一部が引用されていた。それによると、営業利益ベースで最も稼いだ企業は、第1位がエクソンモービル(米)、第2位がゼネラル・エレクトリック(米)、第3位がロイヤル・ダッチ・シェル(オランダ)だ。上位20社を国別に分類すると、アメリカが9社、ロシア、フランスが2社、日本、ブラジル、ノルウェーが1社ずつ。GDPでは世界第2位の日本は、トヨタ自動車が12位に入っているのみである。
新幹線が東京駅に滑り込み、日帰りの小旅行が終わりを告げる。そこでその前日である2007年11月28日の朝日新聞に掲載された、カリフォルニア大学サンタバーバラ校のヘンリー・ヤン学長が、「大学の試練と挑戦」と題する東京大学・朝日新聞社共同シンポジウムにおいて、「面白いデータとして」高等教育における女性リーダーを紹介した発言の一部を引用したい。
米国の主要大学62校のうち、14人が女性学長だ。MIT(マサチューセッツ工科大)、ハーバード、プリンストンなどの大学もそうだ。一方で日本は87の国立大学のうち、トップが女性なのはお茶の水女子大の郷通子学長だけだ、という。
東京外国語大学では、つい07年8月まで女性が学長を務めていた。池端雪浦先生だ。シンポジウムがもう少し早かったら、日本はもうすこし面目を保つことができたかもしれないが、問題の深さに変わりはない。



