2007年12月06日更新
<教育業界>商店街による修学旅行生向けの体験学習
“100円の重さを教えたい”
商店街が修学旅行生向けに体験学習
商店街が修学旅行生向けに体験学習
“キタ”と並び大阪を代表する繁華街、“ミナミ”。その一角にある千日前道具屋筋商店街は、食器から調理器具、ディスプレイ用グッズまで、飲食店経営に必要なさまざまな商品を扱う約40店が軒を連ねる。この商店街では、修学旅行生を対象にした体験学習を実施しており、毎年、申し込みを断わらなければならないほどの人気を博している。
集客から青少年健全育成へ方針転換
千日前道具屋筋商店街が修学旅行生向けの体験学習を始めたのは、2000年。もともとは、集客のための取り組みだった。
「商店街の取引先である旅館やホテルは、少子化や景気低迷などの影響を受けて元気がなかった。そこで、こうした取引先の顧客である修学旅行生を大阪に呼ぼうと、修学旅行生を対象にした体験学習を企画した」(千日前道具屋筋商店街振興組合:千田忠司理事長)のがはじまりだ。
ところが、修学旅行生を受け入れてみて、千田理事長は愕然とした。
「子どもたちは、元気はないし、ものは知らない。これは、真剣に青少年健全育成をせなあかん」(千田理事長)と、翌年から教育を主眼においた活動内容に転換した。
千日前道具屋筋商店街の体験学習は大変好評で、一度参加した学校は、翌年以降も参加するようになるという
教育を目的に新たに開発したプログラムは、大阪の「笑い」「食」「商い」という3つの文化を教えるというもので、「芸人体験」「粉文化体験」「あきんど体験」「実演販売と製作体験」の4部から構成される。
まず、「芸人体験」では、商店街近くにある大阪府の上方演芸資料館「ワッハ上方」を借り、プロの落語家よる上方落語の解説や芸人体験を通じ、「コミュニケーションの楽しさ、重要さ」を学ぶ。次の「粉文化体験」では、老舗のお好み焼き店でお好み焼きを食べながら、店の経営者による粉文化の歴史や夢をもつことの大切さについての講義を受ける。
「あきんど体験」では、商店街の各店舗に分かれ、じっさいに商品を売る体験をする
「あきんど体験」では、商店街の各店舗で実際に店員となって商売を体験、「単にモノを売るのではなく、文化を売ることを学ぶ」(千田理事長)
そして最後の「実演販売と製作体験」では、大阪名物のたこ焼きやいか焼きの実演販売や、食品サンプル作り、提灯の絵付けなどを体験する。また、修学旅行生の地元から運んできた地元の特産品の販売も行なう。ここでは、「仕入れから販売までをすべて自分たちで行なうことで、“100円の重み”を感じてもらう」(千田理事長)のが目的だ。
ちなみに、この「実演販売」の売り上げは、記念として参加した中高生にプレゼントしているという。
学びの多い体験。予想外の効果も
体験学習は、1日7時間のコースのみ。
7時間の中で「芸人体験」から「実演販売」まですべてをこなさなければならないうえ、はじめて取り組むことばかりなので、参加する中高生にとって決して楽ではない。にもかかわらず、体験学習を終えた子どもたちの感想は、「楽しかった」「またやりたい」「優しい人たちに会えてうれしかった」「お金の大切さがわかった」などポジティブな声が多く、子どもたちが、短い時間の中でも多くのことを学び、充実感を得ているようすが伺える。
「“不登校だった子どもが学校に行くようになった”という手紙をくれる保護者もある」(千田理事長)など、当初予測していた以上の効果も生んでいるようだ。
「実演販売」では、仕入れから製造、販売まですべてを体験することで、「100円稼ぐことの大変さ」を学ぶ
学校関係者の間でも好評で、一度参加した学校は毎年参加するようになるという。新たな申し込みも多く、「毎年、1回につき120名まで、年間20校程度を受け入れているが、それでも申し込みを断わらなければならない状態」(千田理事長)だ。そのため、千田理事長は、大阪観光コンベンション協会を通じほかの商店街にも修学旅行生の受け入れを要請。現在では、福島区の福島聖天通商店街など、多くの商店街にこの活動が広がっている。
商店街の知名度向上、連帯感も強化
このように大人気の体験学習だが、それだけに商店街の負担は大きい。
たとえば、体験学習の費用。昼食代を含め5000円という料金設定にしているが、「お土産用のエプロンなど、諸経費を入れるととてもいただく料金だけではまかなえないため、商店街が200万円ほど、毎年負担している」(千田理事長)。
また、学校はじめ関係者との打ち合わせから、土産の手配、当日の対応にいたるまで、この活動にかける手間や労力もばかにならない。
にもかかわらず活動を続けているのは、そのメリットも大きいからだ。
「商いで一番重要なのは、信用。この活動は商店街の信用を高めるのに一役買っている」(千田理事長)
知名度の向上にも貢献している。この活動を始めて依頼、テレビや新聞などのメディアに採り上げられるようになり、その数は100を超えており、宣伝効果は計り知れない。
「商店街にとって大切なものは、信用。修学旅行生向けの体験学習を通じて、子どもたちの成長に寄与するとともに商店街の信用も高めていきたい」と語る千日前道具屋筋商店街振興組合の千田忠司理事長
商店街としての連帯感が強まったことも大きい。
それまで、同商店街では、これといったイベントはやっていなかったが、この活動をキッカケに、商店街のメンバーによるよさこいソーラン踊りのチームが結成されるなど、新たな活動も生まれ、さまざまなことに前向きに取り組む雰囲気も出てきたという。
一方、改善すべき点もある。
体験学習に参加しているのは、20店舗程度と、全商店の半数程度に留まっている。また、参加している店舗の間でも取り組み姿勢には温度差がある。こうした点をどう改善していくかが、今後の課題と言えそうだ。
●運営組織概要
組織名 「千日前道具屋筋商店街振興組合」
所在地 大阪市中央区難波千日前5-19河原センタービル5-C
電 話 06-6633-1423
URL http://www.douguyasuji.or.jp/
千日前道具屋筋商店街が修学旅行生向けの体験学習を始めたのは、2000年。もともとは、集客のための取り組みだった。
「商店街の取引先である旅館やホテルは、少子化や景気低迷などの影響を受けて元気がなかった。そこで、こうした取引先の顧客である修学旅行生を大阪に呼ぼうと、修学旅行生を対象にした体験学習を企画した」(千日前道具屋筋商店街振興組合:千田忠司理事長)のがはじまりだ。
ところが、修学旅行生を受け入れてみて、千田理事長は愕然とした。
「子どもたちは、元気はないし、ものは知らない。これは、真剣に青少年健全育成をせなあかん」(千田理事長)と、翌年から教育を主眼においた活動内容に転換した。
千日前道具屋筋商店街の体験学習は大変好評で、一度参加した学校は、翌年以降も参加するようになるという教育を目的に新たに開発したプログラムは、大阪の「笑い」「食」「商い」という3つの文化を教えるというもので、「芸人体験」「粉文化体験」「あきんど体験」「実演販売と製作体験」の4部から構成される。
まず、「芸人体験」では、商店街近くにある大阪府の上方演芸資料館「ワッハ上方」を借り、プロの落語家よる上方落語の解説や芸人体験を通じ、「コミュニケーションの楽しさ、重要さ」を学ぶ。次の「粉文化体験」では、老舗のお好み焼き店でお好み焼きを食べながら、店の経営者による粉文化の歴史や夢をもつことの大切さについての講義を受ける。
「あきんど体験」では、商店街の各店舗に分かれ、じっさいに商品を売る体験をする「あきんど体験」では、商店街の各店舗で実際に店員となって商売を体験、「単にモノを売るのではなく、文化を売ることを学ぶ」(千田理事長)
そして最後の「実演販売と製作体験」では、大阪名物のたこ焼きやいか焼きの実演販売や、食品サンプル作り、提灯の絵付けなどを体験する。また、修学旅行生の地元から運んできた地元の特産品の販売も行なう。ここでは、「仕入れから販売までをすべて自分たちで行なうことで、“100円の重み”を感じてもらう」(千田理事長)のが目的だ。
ちなみに、この「実演販売」の売り上げは、記念として参加した中高生にプレゼントしているという。
学びの多い体験。予想外の効果も
体験学習は、1日7時間のコースのみ。
7時間の中で「芸人体験」から「実演販売」まですべてをこなさなければならないうえ、はじめて取り組むことばかりなので、参加する中高生にとって決して楽ではない。にもかかわらず、体験学習を終えた子どもたちの感想は、「楽しかった」「またやりたい」「優しい人たちに会えてうれしかった」「お金の大切さがわかった」などポジティブな声が多く、子どもたちが、短い時間の中でも多くのことを学び、充実感を得ているようすが伺える。
「“不登校だった子どもが学校に行くようになった”という手紙をくれる保護者もある」(千田理事長)など、当初予測していた以上の効果も生んでいるようだ。
「実演販売」では、仕入れから製造、販売まですべてを体験することで、「100円稼ぐことの大変さ」を学ぶ 学校関係者の間でも好評で、一度参加した学校は毎年参加するようになるという。新たな申し込みも多く、「毎年、1回につき120名まで、年間20校程度を受け入れているが、それでも申し込みを断わらなければならない状態」(千田理事長)だ。そのため、千田理事長は、大阪観光コンベンション協会を通じほかの商店街にも修学旅行生の受け入れを要請。現在では、福島区の福島聖天通商店街など、多くの商店街にこの活動が広がっている。
商店街の知名度向上、連帯感も強化
このように大人気の体験学習だが、それだけに商店街の負担は大きい。
たとえば、体験学習の費用。昼食代を含め5000円という料金設定にしているが、「お土産用のエプロンなど、諸経費を入れるととてもいただく料金だけではまかなえないため、商店街が200万円ほど、毎年負担している」(千田理事長)。
また、学校はじめ関係者との打ち合わせから、土産の手配、当日の対応にいたるまで、この活動にかける手間や労力もばかにならない。
にもかかわらず活動を続けているのは、そのメリットも大きいからだ。
「商いで一番重要なのは、信用。この活動は商店街の信用を高めるのに一役買っている」(千田理事長)
知名度の向上にも貢献している。この活動を始めて依頼、テレビや新聞などのメディアに採り上げられるようになり、その数は100を超えており、宣伝効果は計り知れない。
「商店街にとって大切なものは、信用。修学旅行生向けの体験学習を通じて、子どもたちの成長に寄与するとともに商店街の信用も高めていきたい」と語る千日前道具屋筋商店街振興組合の千田忠司理事長商店街としての連帯感が強まったことも大きい。
それまで、同商店街では、これといったイベントはやっていなかったが、この活動をキッカケに、商店街のメンバーによるよさこいソーラン踊りのチームが結成されるなど、新たな活動も生まれ、さまざまなことに前向きに取り組む雰囲気も出てきたという。
一方、改善すべき点もある。
体験学習に参加しているのは、20店舗程度と、全商店の半数程度に留まっている。また、参加している店舗の間でも取り組み姿勢には温度差がある。こうした点をどう改善していくかが、今後の課題と言えそうだ。
●運営組織概要
組織名 「千日前道具屋筋商店街振興組合」
所在地 大阪市中央区難波千日前5-19河原センタービル5-C
電 話 06-6633-1423
URL http://www.douguyasuji.or.jp/



