2007年11月22日更新
<10月号特集>進出時の注意点7 カ条
中国進出するにあたり、事前に調べておくべきことや、警戒すべきことは何か。進出の経験があり、現在では日本貿易振興機構(ジェトロ)で中国ビジネスの相談を受け付けている上妻(こうづま)真次氏が実体験に基づいてアドバイスする。
上妻真次Profile
日本貿易振興機構(ジェトロ)東京本部にて、貿易投資相談センターの貿易・投資アドバイザーとして企業や業界団体からの中国ビジネスに関する相談に対応。かつて中国で問屋業を操業していた経験を生かし、中国に進出する際の実務的な相談に応じたり、進出前の心構えをアドバイスをするなどしている。1 市場を見極めて戦略を練り勝機がある場合のみ進出する
日本企業が中国から撤退する理由で最も多いのが、拙速な投資や事業経営の行き詰まりだ。市場開拓が可能なビジネスモデルがないまま周囲のムードに流されて中国に進出し、撤退に至るケースが多い。中国投資のブームに乗りたいと思う群集心理が引き起こした失敗だ。未開拓の市場に夢を抱き、身の丈を超えた事業を始めてしまう中小企業も少なくない。
巨大市場という魅力だけに目を奪われていると、必ず足元をすくわれる。事前調査を十分に行ない、徹底的に戦略を練ってビジネスの仕組みを構築すれば、成功できるというものでもないが、少なくとも「みんなが中国に行っているから」という群集心理に流されず、自分自身の経営判断に基づいて行動すべきではないだろうか。
現実には、中国に進出してから市場がなかったと後悔する事例も後を絶たない。市場があるものと楽観視して進出する経営者が少なくないのだ。卸売業などの場合、日本では取り引き関係が維持される場合でも、中国ではしばらくすると卸売りを介さない工場直接の購入に切り換えられることがある。日本と同じような感覚で、「取り引きを重ねて情を深め、信頼を構築しよう」と考えても通用しないので注意が必要だ。
日本企業が中国から撤退する理由で最も多いのが、拙速な投資や事業経営の行き詰まりだ。市場開拓が可能なビジネスモデルがないまま周囲のムードに流されて中国に進出し、撤退に至るケースが多い。中国投資のブームに乗りたいと思う群集心理が引き起こした失敗だ。未開拓の市場に夢を抱き、身の丈を超えた事業を始めてしまう中小企業も少なくない。
巨大市場という魅力だけに目を奪われていると、必ず足元をすくわれる。事前調査を十分に行ない、徹底的に戦略を練ってビジネスの仕組みを構築すれば、成功できるというものでもないが、少なくとも「みんなが中国に行っているから」という群集心理に流されず、自分自身の経営判断に基づいて行動すべきではないだろうか。
現実には、中国に進出してから市場がなかったと後悔する事例も後を絶たない。市場があるものと楽観視して進出する経営者が少なくないのだ。卸売業などの場合、日本では取り引き関係が維持される場合でも、中国ではしばらくすると卸売りを介さない工場直接の購入に切り換えられることがある。日本と同じような感覚で、「取り引きを重ねて情を深め、信頼を構築しよう」と考えても通用しないので注意が必要だ。
2 進出先の実態は先発の日本企業に聞く
開発区政府が“おいしい条件”を提示して企業誘致を行ない、招へいしておきながら、進出したとたん無関心になり、操業に必要な支援をしなくなったり、条件が変わったりといったトラブルが数多く発生している。
釣った魚にエサはやらないといった具合だ。電気、水道などの産業基盤をすべて中国側の手の内に握られ、水道料などのコストが当初の10倍にまで膨れ上がったという話も聞く。身動きが取れなくなり、現地にお金を落とすだけ落とした末に、撤退を余儀なくされる企業もある。こうした事態を回避するためには、現地にすでに進出している日本企業に足を運び、その地域を管轄する政府や役人の対応と人柄、進出にどのようなトラブルがあったかなどを詳しく聞き取り調査することだ。誘致の際、中国側の誘い文句だけを鵜呑うのみにしないよう気をつけたい。
開発区政府が“おいしい条件”を提示して企業誘致を行ない、招へいしておきながら、進出したとたん無関心になり、操業に必要な支援をしなくなったり、条件が変わったりといったトラブルが数多く発生している。
釣った魚にエサはやらないといった具合だ。電気、水道などの産業基盤をすべて中国側の手の内に握られ、水道料などのコストが当初の10倍にまで膨れ上がったという話も聞く。身動きが取れなくなり、現地にお金を落とすだけ落とした末に、撤退を余儀なくされる企業もある。こうした事態を回避するためには、現地にすでに進出している日本企業に足を運び、その地域を管轄する政府や役人の対応と人柄、進出にどのようなトラブルがあったかなどを詳しく聞き取り調査することだ。誘致の際、中国側の誘い文句だけを鵜呑うのみにしないよう気をつけたい。
3 合弁会社にする際は相手企業を厳しく選別
中小企業基盤整備機構が2004年10月に行なった調査によると、中国において投資先から撤退した企業の64%が、現地資本を含む合弁企業だった。合弁は元来難しい。うまくいかない場合はお互いを責め、うまくいけば利益を余計に取ろうとする。一般的に経営判断を統一するのが面倒である。さらに、資本を分離しようと思っても、中国側企業が実権を手放そうとしなければお手上げだ。そのため、最近は最初から独資で立ち上げるところが増えている。もし合弁形式で進出する際は、合弁先企業の信用調査を十分にしておくことが肝心だ。
中小企業基盤整備機構が2004年10月に行なった調査によると、中国において投資先から撤退した企業の64%が、現地資本を含む合弁企業だった。合弁は元来難しい。うまくいかない場合はお互いを責め、うまくいけば利益を余計に取ろうとする。一般的に経営判断を統一するのが面倒である。さらに、資本を分離しようと思っても、中国側企業が実権を手放そうとしなければお手上げだ。そのため、最近は最初から独資で立ち上げるところが増えている。もし合弁形式で進出する際は、合弁先企業の信用調査を十分にしておくことが肝心だ。
4 政府、役人との間に友好関係を築く
政府関係者と友好的な関係を築くことは、中国でビジネスを展開するうえで重要な意味を持つ。彼らの協力が得られれば、情報の入手や行政手続きでも広範な便宜を図ってもらえるからだ。逆に人脈作りに失敗すると、些細な問題も大問題になり、やっかいである。彼らと友好関係を築くには日頃から細かな心配りをし、相手の面子(めんつ)を立てるのがコツだ。
政府関係者と友好的な関係を築くことは、中国でビジネスを展開するうえで重要な意味を持つ。彼らの協力が得られれば、情報の入手や行政手続きでも広範な便宜を図ってもらえるからだ。逆に人脈作りに失敗すると、些細な問題も大問題になり、やっかいである。彼らと友好関係を築くには日頃から細かな心配りをし、相手の面子(めんつ)を立てるのがコツだ。
5 中国の事情を知ることで不正行為を予防毅然とした態度で臨む
商取引のあらゆる場面で、賄賂がまかり通っているのが中国の現状だ。不当な利益を黙認する土壌が、様々な不正行為を助長しているように見受けられる。二重帳簿や簿外口座の開設、出張費などの水増し粉飾決算(これは中国だけではないが)は珍しくない。ローカル企業のほとんどはやっているだろうし、中国で企業を経営していれば特に驚くことでもない。
しかし、業者から担当者への割戻しは非常に多いため、十分に警戒しなければならない。企業の利益を削り、程度がすぎると完全なる横領になるからである。不正行為による損失額が利益を上回る場合すらある。また、商習慣としての担当者への付け届けは、程度がひどくなると賄賂との区別がつきにくくなる。
ただ、最もやっかいなことは、黒と白の境が明確でないところである。地域または業界の激烈な競合が背景にあるので、日本では目をむくような高額の贈り物が許容範囲と見なされることも十分にありえる。もう1つ日本人にとってやりにくいのは、家族的な管理が甘い管理として見られ、従業員による不正行為を誘引する場合があることだ。時として毅然とした態度を見せることも必要であろう。
商取引のあらゆる場面で、賄賂がまかり通っているのが中国の現状だ。不当な利益を黙認する土壌が、様々な不正行為を助長しているように見受けられる。二重帳簿や簿外口座の開設、出張費などの水増し粉飾決算(これは中国だけではないが)は珍しくない。ローカル企業のほとんどはやっているだろうし、中国で企業を経営していれば特に驚くことでもない。
しかし、業者から担当者への割戻しは非常に多いため、十分に警戒しなければならない。企業の利益を削り、程度がすぎると完全なる横領になるからである。不正行為による損失額が利益を上回る場合すらある。また、商習慣としての担当者への付け届けは、程度がひどくなると賄賂との区別がつきにくくなる。
ただ、最もやっかいなことは、黒と白の境が明確でないところである。地域または業界の激烈な競合が背景にあるので、日本では目をむくような高額の贈り物が許容範囲と見なされることも十分にありえる。もう1つ日本人にとってやりにくいのは、家族的な管理が甘い管理として見られ、従業員による不正行為を誘引する場合があることだ。時として毅然とした態度を見せることも必要であろう。
6 他人まかせにせず管理をきちんと行なう
中国人マネージャーに現地の運営をすべてまかせる方法は、楽で合理的なようだが、トラブルに発展するおそれがある。いつの間にか実質的な権限を握られ、会社を乗っ取られてしまったというケースも少なくない。
目と鼻の先に同じような社名の別会社を設立され、顧客も取引先もすべて引き抜かれた事例もある。最初に信頼できると思ったからといって、まかせきりにしていると、足元をすくわれる。現地の司法当局は自国民の味方をするから、乗っ取られたあとで会社を取り戻すのは非常に難しい。
中国では、法的に保護された肩書きだけでは実質的な支配権に抗しきれないことがあり、しかもそれが非常に多い。技術流出についてはよく知られているので繰り返すことはしないが、一般的にあまり認識されていないことを2点挙げたい。
1つは、質の高い模倣品の問題だ。市場の末端の一部でグレードの低い模倣品が出ることは、防ぐことが難しいものの恐れることはない。しかし、怖いのは闇工場で少年少女によって作られる商品の品質がどんどんよくなり、近代的な工場で製造される本物とそれほど変わらなくなってくることである。放置するとブランド全体の価値が崩壊する。
もう1つは、技術流出が日本人によっても行なわれることである。得意先の日本人が値段を下げたいため、一方(日本企業)が提案した工夫やアイデアを他方の廉価が強みの競合相手へ意図的に教えることがある。ここには知的財産など存在しない。自分も同じような目にあったが、今でも不快な記憶として残っている。
中国人マネージャーに現地の運営をすべてまかせる方法は、楽で合理的なようだが、トラブルに発展するおそれがある。いつの間にか実質的な権限を握られ、会社を乗っ取られてしまったというケースも少なくない。
目と鼻の先に同じような社名の別会社を設立され、顧客も取引先もすべて引き抜かれた事例もある。最初に信頼できると思ったからといって、まかせきりにしていると、足元をすくわれる。現地の司法当局は自国民の味方をするから、乗っ取られたあとで会社を取り戻すのは非常に難しい。
中国では、法的に保護された肩書きだけでは実質的な支配権に抗しきれないことがあり、しかもそれが非常に多い。技術流出についてはよく知られているので繰り返すことはしないが、一般的にあまり認識されていないことを2点挙げたい。
1つは、質の高い模倣品の問題だ。市場の末端の一部でグレードの低い模倣品が出ることは、防ぐことが難しいものの恐れることはない。しかし、怖いのは闇工場で少年少女によって作られる商品の品質がどんどんよくなり、近代的な工場で製造される本物とそれほど変わらなくなってくることである。放置するとブランド全体の価値が崩壊する。
もう1つは、技術流出が日本人によっても行なわれることである。得意先の日本人が値段を下げたいため、一方(日本企業)が提案した工夫やアイデアを他方の廉価が強みの競合相手へ意図的に教えることがある。ここには知的財産など存在しない。自分も同じような目にあったが、今でも不快な記憶として残っている。
7 専門機関で事前調査とアドバイスを受ける
国内各地に設けられたジェトロの貿易情報センターでは、企業などからの輸出・輸入・海外投資に関する質問を受け付けている。また、東京と大阪には専門の「中国ビジネス相談デスク」(連絡先は左記)を設け、ビジネス展開へのアドバイスを行なっている。
● ジェトロ本部(東京)
貿易投資相談センター 貿易投資相談課
03-3582-5171
● ジェトロ大阪本部 貿易投資相談センター
06-6447-2307
http://www.jetro.go.jp/services/advice/
国内各地に設けられたジェトロの貿易情報センターでは、企業などからの輸出・輸入・海外投資に関する質問を受け付けている。また、東京と大阪には専門の「中国ビジネス相談デスク」(連絡先は左記)を設け、ビジネス展開へのアドバイスを行なっている。
● ジェトロ本部(東京)
貿易投資相談センター 貿易投資相談課
03-3582-5171
● ジェトロ大阪本部 貿易投資相談センター
06-6447-2307
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構成・横山博之



