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2007年11月22日更新

莫邦富的視点~キャリーケースと日系企業

キャリーケースと日系企業の進出先の変化

写真:莫邦富氏●莫 邦富(Mo Bang-Fu): 1953年中国・上海生まれ。上海外国語大学卒業後、同大学講師を経て、85年に来日。知日派ジャーナリストとして、政治経済から文化にいたるまで幅広い分野で発言を続け、「新華僑」や「蛇頭(スネークヘッド)」といった新語を日本に定着させた。
『蛇頭』『中国全省を読む地図』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーとなり、話題作には『日本企業がなぜ中国に敗れるのか』『これは私が愛した日本なのか』『新華僑』などがある。
現在、朝日新聞be(土曜版)にて「mo@china」を連載中。博報堂スーパバイザ。東京経営者協会評議委員。東京メトロポリタンテレビジョン放送番組審議委員。中国山東省青島市開発区顧問。
http://www.mo-office.jp/
使いやすいスワニーのキャリーケース

毎年少なくとも20回は海外出張に行く私は、1年の3分の1くらいは海外で過ごしている。しかもどこか一カ所に滞在するような出張ではなく、多くの土地を訪ねることが多い。その分、海外での移動も激しい。パスポートはあっという間に空白のページがなくなり、また新しいものを申請する。

パスポートの更新と同じ頻度、いやそれ以上の頻度で旅行用のスーツケースやキャリーケースを消耗している。これまで使ってきたスーツケースやキャリーケースは大抵1、2年で壊れてしまい、新しいものを買わざるを得なかった。スーツケースやキャリーケースとはそういうものだと私も諦めていた。

2005年の夏、江西省を旅行した時、私が使っていたキャリーケース(しかもブランドもの)は壊れかかっていた。その旅行に同行していたある中国人女子留学生が日本に戻ってから、旅行に誘ってくれた御礼として、スワニーという会社が製造したキャリーケースをプレゼントしてくれた。しかも「使いやすいですよ」と薦めてくれた。

デザインはさほど目を奪うものではなく、色も普通の黒だ。ところが、使ってみたら、その使い勝手は彼女が薦めた通り、たいへんよかった。4つのキャスターは軽やかに各方向に回転し、軽いタッチで押すことができる。それ以降、私は海外出張にはなるべくこのキャリーケースを持っていくようにしている。

安徽省に新天地を求める日系企業

そこで、私はそのメーカーであるスワニーに関心をもった。じつはこの会社については、90年代半ばから知っていた。

当時、同社の中国進出をめぐるNHKスペシャル『突然の撤退勧告』は、事実と異なる報道をしたために批判を受けた。のちに、NHK側が全面的な謝罪をした。この事件を注意深く観察していた私は、その時点でスワニーの社名を覚えた。

香川県に本社を構えるスワニーは、1984年に中国に進出している。手袋やラゲッジ(鞄類)の生産販売および輸出入事業をする普通の会社だが、海外進出はたいへん早かった。中国に進出する前は韓国に進出していたという。韓国の人件費などの高騰を受けて、80年代に新天地を求めるために中国に進出したのだ。最初の進出先は上海から車で1時間もかからない江蘇省昆山市である。当時、昆山ないし江蘇省に進出した最初の外資企業だと言われた。

社名の中国語ネーミング「蘇旺*(ルビ:スーワンニー/*には、称の<のぎへん>を<にんべん>に変えた漢字が入る)」にも、江蘇省のことを強調し、期待を寄せる意味が入っている。その3文字の中国語の意味は、「江蘇省があなたに隆盛をもたらす」というものだ。

しかし、中国に進出して20年以上経った2005年、安徽省青陽県に会社を設立した。人件費の高騰によって、労働集約型の企業であるスワニーは昆山で労働者を集められなくなり、その労働者を求めて安徽省に進出したのである。しかし、中国紙の報道によれば、その安徽省でも労働者を集めるのがたいへん困難になったという。

スワニー製のキャリーケースを押して来週、講演のため上海に行く予定だ。近いうちにスワニーの生産現場を見てみたい。そして、その新しい進出先への感想も聞きたい。スワニーの後を追って、上海や江蘇省から撤退する日系企業がこれから増えるだろうと思っているからだ。


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