ウェブ ベンチャー・リンク
WEB VENTURE LINK

経営情報誌「月刊ベンチャー・リンク」の週刊ウェブマガジンです
自ら人生を、ビジネスを、明日を切り拓こうという人を応援します

2007年11月15日更新

<10月号特集>中国とのつき合い方

2003年から10%台の経済成長を維持し、05年にはGDP総額が世界4位となった中国は今後、世界経済のなかでますます重要な地位を占めると目されている。「世界の工場」から「世界の市場」となった中国のビジネスの現状とともに、中小企業が進出する際の注意点などを紹介する。

中国経済の今を読み解く

国の経済成長は勢いを増すばかり。国内総生産(GDP)は2007年に5年連続の2ケタ増を達成する見通しだ。安くて豊富な労働力を背景に「世界の工場」として発展し、13億人の巨大市場としても注目を浴びる中国の経済は今、どのような状況にあるのか。最新動向を専門家に聞いた。
取材協力/日中経済協会、日本商工会議所、日本貿易振興機構(ジェトロ)

経済概況
貿易黒字と投資に支えられGDPは4年連続2ケタ成長

中国の06年の国内総生産(GDP)は21兆871億人民元で実質成長率は11.1%となり、03年から4年連続の2ケタ成長を遂げている。07年4・6月期のGDPは前年同期比11.9%の成長と発表され、07年の成長率は06年を上回るのが確実だ。

中国経済の驚異的な伸びを支えているのは投資と輸出。世界中の企業がこぞって中国に生産拠点を設けており、直接投資の契約件数は06年にも4万147件と高水準を保っている。世界が注視する成長の背景を、日本貿易振興機構(ジェトロ)海外調査部中国北アジア課の島田英樹氏が解説する。

「中国は海外から技術や資金を受け入れて国内の雇用を促進し、外貨を増やすとともに輸出を急速に拡大させてきました。さらに国内市場を拡大させ、海外からの再投資も増やすという好循環を生み出しています」

機械・電機、自動車の輸出は好調を維持している

輸出額は02年から前年比20.30%の伸びを続けており、06年は9691億ドルで前年比27.2%増となった。05年と06年は輸出が輸入の伸びを上回り、貿易黒字が拡大。品目別に見ると、機械・電機が輸出入ともにシェア40%を超えて稼ぎ頭だ。

グラフ:GDPと成長率の推移自動車関連の輸出も伸びている。05年の輸出額は167億7028万ドルで同35%増。世界貿易機関(WTO)に加盟した01年当時に比べると、実に約6倍の伸びだ。日中経済協会企画調査部の高見澤学課長は「自動車産業には部品、化学、ゴム、ガラスなど周辺産業も付随するので、特に高付加価値製品を中心に裾野が広い。現在の輸出拡大傾向はしばらく続く見通し」と分析する。

今後の中国経済については、「成長の鈍化はあるものの高止まり」という見方が大勢だが、インフレ懸念や貿易黒字に対する外圧もある。08年の北京オリンピック、10年の上海万博が終わった以降も成長を維持するか、中国経済の底力が問われる。

金融、為替、関税
過熱抑制に向けて金融引き締め続いて人民元の変動幅の調整も

飛躍的な経済成長に大きく寄与したのが01年のWTO加盟だ。これにより、関税がそれまでの3分の1程度に引き下げられ、貿易額が増加し投資も加速した。経済成長を下支えする貿易黒字と投資だが、半面、危うさも持ち合わせている。日本商工会議所国際部(中国・ASEAN担当)の安生(あんじょう)隆行氏はこう解説する。

「流入したドルを吸収するため、中国政府は自国通貨の元を売ってドル買いを続けています。その結果、元の過剰流動性が発生し、市場にあふれた元は不動産や株投資に流れ込んでいるのです」

グラフ:固定資産投資額と伸び率(都市部)この動きは不動産や工場など固定資産への投資額を見ても明らかだ。中国国家統計局がまとめた07年上半期の固定資産投資額は、前年同期比25.9%増の5兆4168億元(1元は約15.78円)。都市部だけを見ても同26.7%増の4兆6078億元に上る。また、上海株式市場の上海総合株価指数は過去半年で2倍、2年間で約4倍に膨らんだ。

「不動産・株式バブルが懸念されるため、中国政府は金融引き締め策をとっています。例えば中国人民銀行の為替手形を発行し、市場にあふれている人民元を回収しようという施策。銀行の貸し出しを抑制するため預金準備率の引き上げを実施し、利上げも断行しています」(日本商工会議所・安生氏)

今年8月には預金準備率が12%に引き上げられた。引き上げは07年に入ってから6回目だ。にもかかわらず、「景気拡大スピードが速すぎて金融引き締め策が奏功していない」(ジェトロ・島田氏)。

かといって、急激な景気冷却策はとりづらいのが現状だ。市場にあふれた元を金融引き締め策で吸い上げる一方、増大する外貨を海外に流す動きも活発になってきた。中国政府外貨運用会社が、アメリカの大手投資会社ブラックストーンに出資を決定したことは記憶に新しい。

中国の外貨準備高は06年2月に日本を抜いて世界最大となり、07年6月末で1兆3326億ドル。今後も年2000億ドルのペースで増加すると見られており、保有リスク軽減への中国政府の舵取りが注目される。

人民元切り上げ後初の変動幅調整に踏み切る

為替は、管理変動相場制で政府がコントロールしているが、07年5月に人民元為替取引の変動幅を前日比0.5%までに広げた。これは05年7月の人民元切り上げから初めての調整。

表:外貨準備高と為替レートの推移貿易黒字や膨大な外貨準備高に対する諸外国からの圧力を緩和するのが目的とされるが、現地日本企業にとっては中国国内での原材料費の上昇、人件費増加といった影響も考えられる。中国で組み立て日本へ輸出する構図から、コスト削減のため中国国内での販売を視野に入れた対策も必要になりそうだ。

日中関係
貿易額が初めて2000億ドルを突破中国は日本の最重要相手国に

06年度の貿易統計速報によると、中国(香港を除く)との貿易額は2112億9551万ドル(ジェトロによるドル建て換算)で、貿易総額に占める中国のシェアは17.2%となった。品目別では、日本からの輸出は電気機器が輸出額全体の27.1%を占めて最大、次いで一般機械、化学製品と続く。家電製品や自動車などの組み立てに必要な部材が流れているという図式が分かる。一方、輸入では機械機器がシェア40.8%を占め、繊維製品、食料品が続く。

「歓迎」から「選別」へ経営力に優れた外資を優先

日本から部品を輸出し、中国で組み立てた製品を輸入するという構図は今後も変わらないと見られるが、中国における対外資政策の変化によって、中国内での位置づけが変わってきそうだ。中国は外資企業について「量から質」への転換を図っており、これまでの歓迎ムードから選別の時期へと移行しつつある。

グラフ:日中貿易の推移「国内企業との競合もあり、業種による選別が進み、技術力、投資額、先端的なマネジメント力などに優れた外資を優先的に呼び込もうとしている」(日本商工会議所・安生氏)

06年1~11月の日本の対中投資額を見ても前年同期比31.6%減となっている。中国の労働力を求める製造業への投資は一段落した感がある。今後は「工場のエネルギー効率を高めるなど、高付加価値が必要になる」(日中経済協会・高見澤課長)というのが大方の見方だ。

地域格差
経済活動による繁栄の度合いは中国内で大きな開きがある

中国の経済発展スピードの差は広がる一方で、その端的な例が東部沿海部と内陸部の地域格差だ。上海市、江蘇(こうそ)省、浙江(せっこう)省を中心とする沿海部は長江デルタ経済圏と呼ばれ、最も繁栄している地域で、外資系企業のほとんどがここに拠点を置いている。

中国政府にとっても沿海部と内陸部の格差是正は最大の課題で、各種の開発プロジェクトを進めている。「03年からの東北振興政策は、黒龍江(こくりゅうこう)省、吉林(きつりん)省などの復興に610億元(9000億円)を投資する一大プロジェクト。山西(さんせい)省、安徽(あんき)省などを含む中部振興政策もスタートしています」(日中経済協会・高見澤課長)

これによって労働集約型企業を内陸部へ誘導し、さらに外国企業の投資を奨励するため、税制、関税面での優遇政策も併せて実施している。しかし「外資系企業にとっては、中国からの製品輸出やインフラ状況を考えると沿海部の方に立地メリットがある」(ジェトロ・島田氏)のが現実。物流インフラなどが整備途中にあるなかで、「内陸部は労働コストこそ低いが沿岸部に比べるといまだ発展途上である」(日本商工会議所・安生氏)ようだ。

地域によるGDPの格差進出先の労働力にも影響

グラフ:地域別の経済格差地域別に見た繁栄の差は、経済格差を生む。1人当たりGDPを見ると、上海市と福建省では約3倍の開きがある。消費力に差がつくため、国内市場を狙う外国企業は、上海や北京などの都市部に拠点を置くほうがうまみが大きい。一方、労働力という面から見ると、東部沿海部は内陸部よりも賃金が高いので、労働集約型の業種にとっては魅力に乏しい。日本企業は、進出のメリットを何に見出すのかを熟慮する必要がある。

消費動向
経済構造の変化で所得が増加し国民の消費拡大が見込める

78年に改革開放政策が始まって以来、国民の収入や消費は増加傾向にある。商品小売総額は04年から前年比10%以上の伸びを続けており、07年4月は前年同月比15.5%増。消費の堅調さがうかがえる。

日本企業の商機は、好調な自動車、今後の発展が見込める物流と流通、そしてサービス業にあると見られている。特に注目されるのは金融サービスだ。「確かに規制が多い分野ですが、現地法人を作れば中国人個人の取り扱いもできるようになりました」(日本商工会議所・安生氏)。今後さらに規制緩和が進めばチャンスも広がるだろう。

ネクストリッチ層こそが中国市場のカギを握る

中国において消費を支える層は大きく分けて4つ。その構成についてジェトロ海外調査部中国北アジア課の江田真由美さんが説明する。「頂点の富裕層は世帯年収10万元以上で都市部人口の2%程度。次が年収6万~10万元の中間層で、都市部人口の約6%。富裕層と中間層を合わせてジェトロでは新富裕層と呼んでいますが、これは1500万世帯で約1億人。

日本企業は富裕層をターゲットにするのが一般的で、新富裕層の取り込みは始まったばかりです」高品質のデジタル家電、自動車のほか、環境や安全にも関心を持ち、「省エネ表示のある家電、有機栽培の野菜類が売れている」と日中経済協会の高見澤課長とジェトロの島田氏が口をそろえる。

3つ目が年収4万~6万元のネクストリッチ層、4つ目が年収4万元以下と低所得のマス層となるが、じつは、ネクストリッチ層こそが中国市場のカギを握るという。「若者を中心にした層で、この3000万世帯が今後、新富裕層として消費を牽引する可能性が高い」(ジェトロ・江田さん)ためだ。

ジェトロの江田さんは低価格戦略で成功した例を挙げる。「高級感を訴求する日本の外食企業が多いなか、レストランチェーンのサイゼリヤは月収2000元以下の中所得者層以下をターゲットにして成功しています。価格を抑え、高校生のカップル、20~30代のOL、ビジネスマンなどに利用されています」サービス業の拡大は今後も見込める。ジェトロの島田氏は「巨大市場だからニーズがあるというわけではない。マーケティングを綿密に行なう必要がある」とアドバイスする。

グラフ:都市部の所得階層のイメージ図


表とグラフ:所得分布の変化および各世帯年収世帯数


(文・上田里恵)


関連記事

このページのTopへ

月刊ベンチャー・リンクとは?

定期購読のご案内