2007年10月25日更新
<8月号特集>ルミカ 福岡県古賀市
暗闇に浮かび上がる化学の光で爆発的なヒット
極小の化学発光体を商品化したルミカは、世界を舞台に躍進するベンチャー企業だ。事実上の国際標準となった高い技術力で常に業界をリードしてきた。モノ作りにこだわり、どんなに小さな技術でも徹底して磨きをかける姿勢がユーザーの心をがっちりつかんでいる。
夜釣りで効果抜群の光るウキで一大旋風
1980年代、釣具業界に一大旋風を巻き起こした商品がある。夜釣りの際、水面に浮かぶウキに取り付ける発光体「ケミホタル」だ。光に魚が寄ってくる効果もあり、釣果がアップする。化学反応を起こすことで光を発する化学発光体を使用しており、電球や電池が不要で、数時間も光が持続するという便利さが受けて大ヒットとなった。
脱サラして起業した原田社長。「モノ作りはベンチャービジネスの大切な選択肢。技術を深めることが肝心」と語る。
このケミホタルを開発したのがルミカ(福岡県古賀市)である。ケミホタルは、プラスチック製の外筒とガラス製の内筒の2重構造で、外筒を満たす蛍光物質を含む液の中に、活性化剤を封じ込めた内筒が浮かんでいる。筒を軽く折り曲げるとパチッと音がしてガラス製の内筒が割れ、2つの溶液が混ざり、化学反応で発光する仕組みだ。単純な構造だが、ケミホタルの直径は数mmしかなく、その中に収めるガラス筒は当然それより小さい。ガラス筒の厚みはわずか60ミクロン(10分の6mm)ほどで、非常にもろい。これに0.01ccの液体を注入する技術は世界的にも非常に難しく、商品開発から30年を経た今でも世界一の技術といえる。
化学発光の光を演出に使った新商品。幻想的な光が結婚式などで注目を集めている。
ケミホタルの母体となったのは、70年に米サイアナミッド社が開発した化学発光体「サイリューム」だ。
原田士郎社長は15cmほどの大きさだったサイリュームが小型化できれば、新しい化学発光体の市場が開拓できると考えた。通常の発光現象には多少なりとも発熱が伴うが、サイリュームが発する光は、まるで蛍のように熱をまったく発生しない。その製造技術は門外不出だった。
ケミホタルは2時間から最長7時間まで光を放ち続ける。さまざまな派生商品を生んだ主力商品だ。
原田社長は商品開発にあたり、サイリュームを分解して外筒と内筒に入った2つの薬液を取り出し、小さな容器に詰め直すという、至って単純ながら根気のいる作業を続けて試行錯誤を繰り返した。原田社長は「まずはやってみないとどうしようもない。アイデアだけでは商品は生まれないと思った」と振り返る。
当時、1本250円のサイリュームを1万本も分解したという。実験を続けた結果、発光体の超小型化に成功しケミホタルを完成させた。他社の製品を分解し製品化するという型破りな手法は、サイリュームの特許をもつサイアナミッド社をも驚かせた。その後、3年をかけて同社と交渉を重ね、世界唯一の独占的製造販売契約にこぎつけた。その後、特許の所有権の移動などがあり、特許使用の権利が揺らいだこともあった。そのたびに使用権を死守できたことも、商品を作り続けることができた要因のひとつである
量産機械も自社開発し他社の追随を許さない
製造工程を機械化するにあたって、ケミホタルの外筒や内筒に薬剤を詰める手の動きをエアシリンダーで再現すること、耐熱性と耐薬品性に優れたテフロン板を使って外筒を加工する技術を開発できたことが製品の量産につながった。「エアシリンダーの直線運動がカムを使った回転運動に変わったくらいで、30年前の技術を現在も使っています」(原田社長)
本社研究所で原液の調合を行なうスタッフ。ここでは成分分析や各種実験、輝度調査、商品開発などを行なっている。
極小のガラス筒の製造機や薬剤封入機など、量産機械を当初からすべて自社で開発している点も、オンリーワン企業に成長したポイントといえるだろう。型破りな発想と製造機械の自社開発によって誕生したケミホタルは釣具業界で空前の大ヒットとなった。「釣具市場は小さいが、釣り人は新技術や新素材に対する好奇心が強く、良い物はクチコミで一気に広がる。我々のようなベンチャー企業にとってはヒット商品を出しやすい業界でした」と原田社長は指摘する。
ケミホタルのヒット後、コンサートやイベントなどでペンライトの代わりとして使われる「ライトスティック」のほか、「光るブレスレット」など次々に商品を開発した。既存の製品にとらわれず、例えば化学発光原液のやわらかな光を使った「光の演出」ができる婚礼演出用の商品や残留洗剤の発光検出キットなど新たな商品も開発。さらに、主力のケミホタルも大きさや形、用途などに合わせて商品群を増やし、現在では100種類以上の化学発光体商品を世に送り出している。
生産拠点は中国・大連研究開発拠点は国内本社
ルミカは01年から生産拠点を中国・大連に移したものの、「中国は生産コストが安く、大量受注に応じられるから。しかし、モノ作りの基本である研究開発はあくまでも本社で行なっています」と原田社長。
01年に設立した中国・大連の生産拠点。06年には第2工場を増設した。生産のほとんどは海外にシフトしている。
販売拡大のためアメリカやヨーロッパなどにも拠点を設け、地球規模で事業を展開している。品質や性能で他社に負けないものを世に送り出すことに執念を燃やす原田社長は、「私がいつまでも開発の中心にいてはいけないと思うが、発想すること、考案すること、モノを作ることはやめられない。失敗作もたくさんありますが」と笑う。
化学発光体の製造技術を応用することで、液体だけでなく、気体や固体もガラスアンプルに封入できる。この技術は芳香剤や医療、農薬の分野でも応用可能だ。これまでに蓄積した技術を元に、新規市場の開拓にも余念がない。
文・山川泰仁
ルミカ
【所在地】〒811-3136 福岡県古賀市糸ヶ浦65青柳工業団地内
【TEL】092-942-3211
【創業】1979年
【資本金】1億4536万円
【売上高】23億1400万円(連結)
【従業員数】90人
【事業内容】化学発光体の製造・販売、電気・物理発光体の製造・販売、各種イベント関係の発光装置の企画・販売、玩具の企画・製造・販売ほか
【URL】http://www.lumica.co.jp
1980年代、釣具業界に一大旋風を巻き起こした商品がある。夜釣りの際、水面に浮かぶウキに取り付ける発光体「ケミホタル」だ。光に魚が寄ってくる効果もあり、釣果がアップする。化学反応を起こすことで光を発する化学発光体を使用しており、電球や電池が不要で、数時間も光が持続するという便利さが受けて大ヒットとなった。
脱サラして起業した原田社長。「モノ作りはベンチャービジネスの大切な選択肢。技術を深めることが肝心」と語る。このケミホタルを開発したのがルミカ(福岡県古賀市)である。ケミホタルは、プラスチック製の外筒とガラス製の内筒の2重構造で、外筒を満たす蛍光物質を含む液の中に、活性化剤を封じ込めた内筒が浮かんでいる。筒を軽く折り曲げるとパチッと音がしてガラス製の内筒が割れ、2つの溶液が混ざり、化学反応で発光する仕組みだ。単純な構造だが、ケミホタルの直径は数mmしかなく、その中に収めるガラス筒は当然それより小さい。ガラス筒の厚みはわずか60ミクロン(10分の6mm)ほどで、非常にもろい。これに0.01ccの液体を注入する技術は世界的にも非常に難しく、商品開発から30年を経た今でも世界一の技術といえる。
化学発光の光を演出に使った新商品。幻想的な光が結婚式などで注目を集めている。ケミホタルの母体となったのは、70年に米サイアナミッド社が開発した化学発光体「サイリューム」だ。
原田士郎社長は15cmほどの大きさだったサイリュームが小型化できれば、新しい化学発光体の市場が開拓できると考えた。通常の発光現象には多少なりとも発熱が伴うが、サイリュームが発する光は、まるで蛍のように熱をまったく発生しない。その製造技術は門外不出だった。
ケミホタルは2時間から最長7時間まで光を放ち続ける。さまざまな派生商品を生んだ主力商品だ。原田社長は商品開発にあたり、サイリュームを分解して外筒と内筒に入った2つの薬液を取り出し、小さな容器に詰め直すという、至って単純ながら根気のいる作業を続けて試行錯誤を繰り返した。原田社長は「まずはやってみないとどうしようもない。アイデアだけでは商品は生まれないと思った」と振り返る。
当時、1本250円のサイリュームを1万本も分解したという。実験を続けた結果、発光体の超小型化に成功しケミホタルを完成させた。他社の製品を分解し製品化するという型破りな手法は、サイリュームの特許をもつサイアナミッド社をも驚かせた。その後、3年をかけて同社と交渉を重ね、世界唯一の独占的製造販売契約にこぎつけた。その後、特許の所有権の移動などがあり、特許使用の権利が揺らいだこともあった。そのたびに使用権を死守できたことも、商品を作り続けることができた要因のひとつである
量産機械も自社開発し他社の追随を許さない
製造工程を機械化するにあたって、ケミホタルの外筒や内筒に薬剤を詰める手の動きをエアシリンダーで再現すること、耐熱性と耐薬品性に優れたテフロン板を使って外筒を加工する技術を開発できたことが製品の量産につながった。「エアシリンダーの直線運動がカムを使った回転運動に変わったくらいで、30年前の技術を現在も使っています」(原田社長)
本社研究所で原液の調合を行なうスタッフ。ここでは成分分析や各種実験、輝度調査、商品開発などを行なっている。極小のガラス筒の製造機や薬剤封入機など、量産機械を当初からすべて自社で開発している点も、オンリーワン企業に成長したポイントといえるだろう。型破りな発想と製造機械の自社開発によって誕生したケミホタルは釣具業界で空前の大ヒットとなった。「釣具市場は小さいが、釣り人は新技術や新素材に対する好奇心が強く、良い物はクチコミで一気に広がる。我々のようなベンチャー企業にとってはヒット商品を出しやすい業界でした」と原田社長は指摘する。
ケミホタルのヒット後、コンサートやイベントなどでペンライトの代わりとして使われる「ライトスティック」のほか、「光るブレスレット」など次々に商品を開発した。既存の製品にとらわれず、例えば化学発光原液のやわらかな光を使った「光の演出」ができる婚礼演出用の商品や残留洗剤の発光検出キットなど新たな商品も開発。さらに、主力のケミホタルも大きさや形、用途などに合わせて商品群を増やし、現在では100種類以上の化学発光体商品を世に送り出している。
生産拠点は中国・大連研究開発拠点は国内本社
ルミカは01年から生産拠点を中国・大連に移したものの、「中国は生産コストが安く、大量受注に応じられるから。しかし、モノ作りの基本である研究開発はあくまでも本社で行なっています」と原田社長。
01年に設立した中国・大連の生産拠点。06年には第2工場を増設した。生産のほとんどは海外にシフトしている。販売拡大のためアメリカやヨーロッパなどにも拠点を設け、地球規模で事業を展開している。品質や性能で他社に負けないものを世に送り出すことに執念を燃やす原田社長は、「私がいつまでも開発の中心にいてはいけないと思うが、発想すること、考案すること、モノを作ることはやめられない。失敗作もたくさんありますが」と笑う。
化学発光体の製造技術を応用することで、液体だけでなく、気体や固体もガラスアンプルに封入できる。この技術は芳香剤や医療、農薬の分野でも応用可能だ。これまでに蓄積した技術を元に、新規市場の開拓にも余念がない。
文・山川泰仁
ルミカ
【所在地】〒811-3136 福岡県古賀市糸ヶ浦65青柳工業団地内
【TEL】092-942-3211
【創業】1979年
【資本金】1億4536万円
【売上高】23億1400万円(連結)
【従業員数】90人
【事業内容】化学発光体の製造・販売、電気・物理発光体の製造・販売、各種イベント関係の発光装置の企画・販売、玩具の企画・製造・販売ほか
【URL】http://www.lumica.co.jp



